トップに判断業務が集中しすぎてしまう社長依存型組織の脱却方法

はじめに
今回のコラムは、経営者の方からご相談の多い組織づくりに関するテーマです。
中間管理職や専門部署を飛ばしてトップに相談が集中してしまい、必要以上に時間を取られてしまうというご相談に対して、どのような要因が考えられ、どのような対策が有効かをまとめました。
経営上のリソース(資源)として「人・モノ・金」とよく言われますが、特に人の部分は一番リソースが少ない部分です。
時間をどれだけ有効活用できるかが企業の成長を大きく左右します。
同様の問題を抱えられている経営者や管理職の方は是非ご一読ください。
では、想定される要因ごとに解説していきます。
要因1.指示命令系統のセクションごとに何をすべきかが曖昧
相談案件のテーマ事に、
現場担当者が直属上司へ相談や報告を上げないといけない案件なのか?
相談を受けた上司・専門部署の窓口がどこまで対応する必要があるのか?
経営層は何をしなければいけないのか?
それぞれのセクションごとの職務が明確になっていないケースが考えられます。
対策として、
現場担当者が上司や専門部署に上げてほしい案件とは、具体的にどのようなケースを指すのか?
上がってきた案件に対して、直属上司や専門部署が何を具体的にしないといけないのか?
経営層は何をするのか?
明文化しておくことが有効です。
以下の図は、エスカレーションフローといい、現場担当、直属上司、経営層それぞれの階層の職務を図解して流れを示した図です。
このように、チャート化するとより分かりやすくなります。

対策の効果性を高めるPoint1.
もっとも大切なことは全体への周知徹底です。
周知ができていないと、上記の基準を経営層と管理職しか知らなかったり、新人のスタッフへの伝達が出来ておらず、ルールを知らない人と知っている人が混在するといった問題が起こりがちです。
定期的にエスカレーションフローや階層ごとの職務内容の見直しを行ったり、新人教育カリキュラムの項目に追加するなどの整備が必要です。
対策の効果性を高めるPoint2.
相談を受ける上司などの管理職教育も大切です。
なぜなら、基準やルールを作っても運用の実効性を担保するのは中間に入る上司層のパフォーマンスにかかっているからです。
現場担当者から相談や報告が上がった時に上司が、
- 感情的(嫌な顔やめんどくさそうな顔をする)
- 否定的 (担当者が考えた提案をすぐ否定から入る)
- プライドが高い(分からないことを分からないと言えない)
- 先延ばしが多い(後で対応しますといってそのままにする)
このような態度の場合、現場担当は上司への相談を避けます。
すると結局「社長の方が話しやすい」ので、経営層への判断業務の集中という現象が続きます。
教育内容として特に必要なのは、
- 従業員から信頼に足る人格形成
- 担当部門の専門知識や技術・経験
- ケースに応じた判断基準や優先順位
- 傾聴等のコミュニケーション能力
- 問題を整理するための論理的思考力
などが上げられると思います。
ヒューマンスキルから実務的な専門スキルなど横断的なキャリア形成が求められます。
特に判断基準や優先順位は、実際に様々な事例を経験し、修羅場といえる問題にぶつかって乗り越えた経験から身についていくものも多いため、育成に年数がかかります。
また、管理職として適性を備えた人材の採用も重要になってきますので、早めに取り掛かることも大切です。
要因2.トップが直接相談にのりすぎている
中小企業で管理職を担える人材が不足していたり、充分に育っていない状況下では致し方ない部分もあるかと思いますが、ついつい経営者自身が現場担当者からの相談に直接乗ったり、良かれと思って「何かあったら直接言って」と従業員に伝えてしまい、管理職の機能を形骸化させる動きを取ってしまっていることが上げられます。
長期間この状態のままにしておくと、中間管理職がいつまでも育たず、社長等の経営層依存組織から脱却できません。さらに、経営層の疲弊・時間が取れない、かつ、現場や管理職が育たないといった悪循環に陥っていきます。
対策として、経営者から、企業の長期的な事業展開のヴィジョンや、それを踏まえてどのような組織にしていく必要があるのか、そのために管理職にどのような仕事や役割を担ってほしいのか要望を示すことが有効です。
必要なスキルや能力を身に着けていくための教育の機会、ポジションの業務整理と伝達、遂行する上での不安要素の抽出、評価基準や成果に応じて待遇を提示するなどの制度設計も先駆けて行っていく必要があります。
まとめ
今回取り上げた経営層への業務集中という課題は、部署が多岐に分かれており経営層と現場が物理的に離れた場所で仕事をしている大企業の場合は、指示命令系統を明確に区別せざるをえない環境となるため、起きづらい問題かもしれません。
しかし、従業員規模30人以下の中小企業では、課題に感じられているところも多いのではないかと思います。
経営者の方が「経営」を行いながら従業員の業務に直接指示を出したり、相談を受けることも多く、課題になりやすいテーマかと思います。
自社で見直す必要がないかぜひご検討ください。
今回のコラムは以上です。お読み頂き、ありがとうございました。
〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長
社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。
最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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