熊本県の労働力人口の変動とこれからの企業の採用戦略について

はじめに
「求人を出しても、以前ほど応募が来ない」
「やっと採用できても、数ヶ月で辞めてしまう」
――こうした声を、お仕事を通じて日々熊本県内の中小企業の経営者の方々からお聞きします。
多くの経営者・人事担当者の方は、そのうち「どうにかなるだろう」と楽観的に捉えられていて、そこまで危機感を持たれていない方が多いように感じています。しかし、データを見ていくと、これは一時的な現象ではなく、今後20年、30年と続いていく構造的な変化の入り口に過ぎないことが分かります。
本コラムでは、熊本県の人口動態と有効求人倍率の推移というデータをもとに、これから予想される2040年に向けた企業環境の変化のシナリオと、今から着手すべき人材戦略について解説します。
将来を楽観的にみるのではなく、現実を見据えて一早くアクションを起こすことが有効策と考えます。
ぜひお読みください。
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1.データで見る熊本の未来 ― 労働力人口はこれだけ減る
ご存知の方も多いと思いますが、熊本県から発表された、「県内人口ヴィジョン」によれば、生産年齢人口(15〜64歳)は2020年の96.0万人から2040年には77.4万人まで、約19%減少すると推計されています。
総人口も同期間で約13%減少する見込みです。

グラフ:平成27年熊本県 人口ヴィジョンより
また、注意しないといけないデータは、熊本県が全国よりも約10年早く人口減少局面に入っているという事実です。
熊本県の有効求人倍率をみると、2016年の熊本地震後は復興需要により急上昇し、2018年前後には1.6倍台まで達しました。その後、2020年のコロナ禍で一時1.2倍前後まで急落しましたが、コロナ後の回復とTSMC(JASM)進出に伴う建設・製造需要により、2022年には再び1.4倍台まで上昇しています。
全国レベルで「働き手が足りない」という危機感が広がる頃には、熊本ではすでにその状況が常態化している――そう考えるべきでしょう。
実際、2024年には熊本県の総人口が48年ぶりに170万人を割り込み、統計上の推計とほぼ同じペースで減少が進行していることが確認されています。
2040年に向けた未来予測 ― 選ばれる企業と淘汰される企業
従来の「求人票・求人広告誌を出しておけば人が応募にくる」状況は物理的に二度と訪れないと考えていた方が良いと思います。
今後は長期トレンドとして「働き手の絶対数が減り続ける市場」を前提に採用戦略を組み立てる必要があります。
絶対数が減り続ける市場を前提とした場合、従来の「待ち」の採用活動から「攻め」の採用活動へシフトチェンジしていく必要があります。

そして、今後の予想シナリオですが、おそらく2030年には、「給与」だけでなく、自社の「理念」、「ヴィジョン」、「教育環境」、「職場の仲間」、「キャリア形成の支援制度や福利厚生制度」を発信できる企業に求職者が集中し、従来型の「待ち」の企業は応募ゼロが常態化すると予想します。
2035年には、採用した人材が定着するための職場での幸福度を高める施策への投資を積極的に行った企業が定着率と高収益を実現していくことでしょう。上辺だけでなく、本気で社員の満足度や幸福度を高めることに注力した企業とそうでない企業で業績に歴然とした差がでる時期に入っていきます。
2040年には、熊本県内については人口がついに150万人へ。
既存の社員の高年齢化も相まって投資を怠った企業は事業縮小や継続不可能となり、淘汰されると予想します。

今から着手すべき人材戦略 ― 多角的な視点での仕組みや制度づくりへの「投資」
厳しい予測をお伝えしましたが、時間が早いか遅いかの前後差がある程度で将来間違いなく起こりえる「現実」だと私は捉えています。
繰り返しになりますが、真剣に求職者・在職者から魅力ある長く働きたい企業と思わせる必要があります。
一昔前だったら、もしかしたら社員の満足度や幸福度を上げるといったことは「綺麗事」と捉えられた時代だったかもしれませんが、それが経済効果性に直結する時代です。企業が提供する商品・サービスの恩恵を受ける顧客や取引先、そして従業員の幸福をトータルで実現する高質な社会にシフトしていくといっても過言ではありません。
そのためにはまず「投資」が不可欠です。
投資といってもお金を出すだけでなく、時間も人も、かなりのリソースを中長期的に割いて、企業の魅力を発信し続けること、そして中小企業では給与面だけで差別化するのは現実的に難しい側面もあり、「育成」や「福利厚生制度」、「評価制度」、「処遇制度」、「配置」「人間関係づくり」といった多角的な視点での仕組みや制度づくりが必要になってきます。
弊所でも、今後クライアント企業様の組織や職場環境の魅力を高めるサービスコンテンツや情報発信にもより注力して、お客様にご提案できるよう努めてまいります。
今回のコラムは以上です。お読み頂き、ありがとうございます。
〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長
社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。
最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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