65歳まで雇用 「義務付け」2012.8.29成立 熊本 社会保険労務士
60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける
高年齢者雇用安定法改正案が2012年8月29日成立しました。
来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるのに対応し、
定年後に年金も給料も受け取れない人が増えるのを防ぐ狙いです。
2025年度には65歳までの雇用を義務づけます。企業は継続雇用の
対象者を能力などで絞り込めなくなるため、負担増に備え対応を
急ぐ必要があります。
会社員が加入する厚生年金(報酬比例部分)は現在60歳から
受け取れますが、男性は13年度に61歳からとなり、以降3年
ごとに1歳上がって25年度には65歳開始となります。
現在、企業の82.6%(約10万9千社)は継続雇用制度を持ち、
定年後も希望者を雇用しています。ただ、その5割強は労使協定
の基準を満たす人に対象を絞っています。労働政策研究・研修機構
によると、健康状態や出勤率・勤務態度のほか、約5割の企業が
業績評価も基準に使っています。
改正法は企業が労使協定で対象者を選別することを禁じます。
ただ、企業の負担が重くなり過ぎないよう、厚生労働相の諮問機関
である労働政策審議会で指針を作り、勤務態度や心身の健康状態が
著しく悪い人は対象から外せるようにします。
継続雇用する対象者の範囲は年金の受給開始年齢の引き上げに
合わせて広げ、受給開始が65歳となる25年度には65歳まで希望者
全員の雇用を求めます。指導や助言に従わない企業名は公表する
ということです。
2011年6月の厚生労働省の調査では、過去1年に定年を迎えた
約43万人のうち10万人以上は継続雇用を希望しませんでした。
年金の受給年齢が上がると定年後もしばらく年金を受け取れ
なくなるため、来春以降は希望者は増えると考えられます。
みずほ総合研究所の試算では、継続雇用を希望しなかった人
と希望しても離職していた人が全員、継続雇用されると賃金総額
は来年度に4千億円増える見込みです。25年度には1.9兆円増え、
総人件費を約1%押し上げます。 コスト増以上に、能力の低い
従業員も雇用しなくてはならず労働生産性が下がると懸念する声
も多い。
(社労士向け情報発信サービスPSRトピック記事抜粋)