労働契約と業務委託契約の判断基準

労働契約と業務委託契約の判断基準

前回、どちらが良い?業務委託契約と労働契約というテーマで、以下の項目について説明させて頂きました。

●業務委託契約と労働契約の違い
●業務委託契約のメリット・デメリット
●どのように契約形態を使い分けていくか

今回はその続きです。業務委託契約を締結する際の注意点について解説していきたいと思います。

企業側からみた業務委託契約社員のメリットは次の通り。

●最低賃金の適用を受けない
●時間外労働に対する割増賃金を支払う必要がない
●社会保険料が適用除外されるので保険料の負担が発生しない
●人件費を業務委託費に置き換えられるので、売上高の増減に費用を連動させることが可能

 ここで注意しなければいけないのは、メリットが多いからといって 労働契約→業務委託契約へ安易に切替えられるものではないということです。契約の実態が業務委託契約として認められる必要があるのです。

その判断基準が、1985年に公表された、「労働基準法研究会報告」に提示されています。
この「報告書」では労働契約か業務委託契約か?は、「使用従属性」の有無で判断されると記されてあります。

具体的には次の項目に該当すると、「使用従属性」がないとして、業務委託契約として認められることになります。

●仕事の依頼や業務従事の指示を断ることができる
●仕事を進める上で、具体的な内容や方法の指示が出ていない
●一定の進捗状況の報告義務や勤務時間の管理がない
●代わりの者に業務を行わせることができる
●報酬が時間・日・月を単位として支払われるのではなく、業務の成果に対して支払われている

 

上記の項目で判断されるのですが、判断がつかないような事例の場合はさらに次の項目で判断されることになります。

●会社が業務を遂行する為の機械、器具の負担をしていない
●報酬は機械等を負担する為、他の一般社員よりも高い
●報酬に生活給的な要素はない
●他の会社の業務を行ってよい 

 実際には、個別事案を上記の項目をもとに個別に勘酌していき、使用従属性の有無を総合的に判断します。

 ここで業務委託契約か労働契約か争われた判例で、業務委託契約と認められた判例を参考までに一つご紹介致します。

パピルス事件(東京地判5・7・23)
コンピューターマニュアルの企画制作業務等を営む会社との間で、コンピューターシステムのマニュアル作成の営業活動を行う契約内容を締結。

●月額20万円の報酬に加えて、受注額に応じた報酬支払約束があったこと
●時間管理の拘束や具体的な指示命令を受けていなかったこと
●会社以外の他の業務に従事することを認めていたこと
●給与から健康・厚生年金、雇用保険の社会保険料や地方税の控除がされていないこと。
●所得税の源泉徴収についても主たる給与ではない乙欄が適用され、会社が主たる就業先ではない取扱いがされていたこと。 

という理由から労働契約ではなく、業務委託契約であると判示されたケースです。先にふれた、判断基準の項目を概ね満たしていることが分かるかと思います。

もしこのメールマガジンをお読みの経営者の方で業務委託社員がいる、もしくは今後採用を検討されている方がいらっしゃれば、ご紹介した項目の取り扱いを定めた契約書は作成されていらっしゃいますか?

契約内容について「いった、いわない」「あいまい」が無用なトラブルの基です。

 

当事務所では、企業オリジナルの業務委託契約書作成代行も行っております。ぜひお気軽にご相談頂ければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。