
2026年4月、「女性活躍推進法」の改正が施行されます。
今回の改正は、単なる制度変更にとどまらず、企業の人材戦略や組織づくりに大きな影響を与える内容となっています。
本コラムでは、改正のポイントと企業が対応すべきことについて整理します。
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企業が成長を続け、優秀な人材を確保するためには、性別にかかわらず誰もがその能力を最大限に発揮できる環境が不可欠です。
しかし、育児や介護の負担が女性に偏る傾向があり、キャリア形成に制約が生じやすい状況が続いてきました。
一方で、少子高齢化による労働力人口の減少が進む中、企業にとっては多様な人材の活用が不可欠となっています。
こうした背景から、2016年に女性活躍推進法が施行され、女性が能力を十分に発揮できる環境整備が進められてきました。
また、女性活躍推進法は、時限立法(一時的な事態に対応するため、有効期間を限定して定められた法令)として、有効期限が2026年3月31日までとされていました。しかし、未だその役割を終えたといえる状況にはなく、更なる取り組みの推進を図る必要があることなどから、有効期限がさらに10年間延長され、2036年3月31日までとなりました。

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を適切に実施し、一定の目標を達成した企業は、女性活躍推進法に基づく認定制度である「えるぼし認定」「プラチナえるぼし認定」を申請することができます。
これらは、女性が働きやすい職場環境づくりを行い、従業員を大事にする企業であると厚生労働大臣より認定を受けた証です。
認定の取得により、企業イメージの向上や優秀な人材の確保といったメリットが期待されます。
女性の活躍推進の取り組み状況が優良であるなど、一定の要件を満たした企業が取得できます。
5つの評価項目のうち基準をクリアした数によって3段階で認定されます。
えるぼし認定を受けた後、⼥性の活躍推進に関する取組の実施状況が特に優良な事業主は、さらに水準の高い「プラチナえるぼし」を取得できます。
出典|厚生労働省『女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!』
えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の詳細については、以下の厚生労働省のパンフレットを参考にしてください。
参考|厚生労働省『女性活躍推進法に基づくえるぼし認定プラチナえるぼし認定のご案内』
「男女の賃金の差異」の公表義務の対象が従業員数101人以上の企業に拡大されるとともに、「女性管理職比率」が公表の必須項目に追加されます。
企業の実態がより“見える化”され、社会からの評価が直接的に問われることになります。

男女の賃金の差異の計算方法
(1)平均年間賃金の算出
→ 男性と女性それぞれの平均年間賃金を算出
(2)男女の差異の算出
→ 上記(1)で算出した平均年間賃金をもとに男女の差異を計算
「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分で公表が必要になります。
女性管理職比率の計算方法
女性活躍に積極的な企業を評価する「えるぼし認定」制度も見直されます。
えるぼし認定(1段階目)の基準が見直され、改善傾向にあることを評価する新たな選択肢が追加されます。これにより、現時点で基準を満たさない項目がある企業でも、継続的な取り組みがあれば認定取得を目指しやすくなります。
2026年4月1日より新たに創設されるのが「えるぼしプラス」です。
これは、生理・PMS・更年期・不妊治療など、女性の健康課題への配慮を評価する認定制度です。 従来は個人の問題とされがちだったテーマを、企業の重要な経営課題として位置づけた点が大きな特徴です。
参考|厚生労働省『職場における女性の健康支援に取り組み 新たな認定を目指しませんか?えるぼしプラス・プラチナえるぼしプラス』
従業員数101人以上の企業は、以下の①~③の手順で、法改正の施行後に初めて公表する「男女の賃金の差異」と「女性管理職比率」の対応を行います。
自社の事業年度をもとに、以下を確認します。
対象事業年度の経過後、対象事業年度における実績値をもとに、「男女の賃金の差異」と「女性管理職比率」を算出します。

公表期限までに「男女の賃金の差異」と「女性管理職比率」を公表します。
公表方法は、現在公表している「女性の活躍に関する情報」に追加する形でかまいません。
■ 会社に求められる視点
今回の改正は、「対応する」だけでは不十分です。
といった、組織全体の改革につなげる視点が求められます。
単なる法令対応ではなく、企業価値向上の機会として捉えることが重要です。
誰もが働きやすく、公正に評価される職場環境は、一部の人のためだけのものではありません。
それは、組織全体の生産性を高め、イノベーションを生み出す土壌となります。
今回の法改正により、企業の取り組みはこれまで以上に可視化され、評価される時代に入りました。
だからこそ、表面的な対応にとどまらず、一人ひとりが力を発揮できる職場づくりを着実に進めていくことが、これからの企業に求められる姿勢といえるでしょう。
〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長
社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。
最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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2026年4月から「子ども・子育て支援金制度」が始まります。
少子化と人口減少が加速するなか、政府は2023年10月にこども未来戦略「加速化プラン」を策定し、総額3.6兆円規模の子育て支援拡充を打ち出しました。本制度は、その重要な財源のひとつとして創設されるものです。
本コラムでは、制度の概要と企業の実務対応について分かりやすく整理します。
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「子ども・子育て支援金制度」は、子育て支援策の拡充に必要な費用を全ての世代や企業のみなさまから支援金を拠出いただき、子育て施策の拡充に充てるもので、こどもや子育て世帯を社会全体で支える制度です。
将来の社会保障や経済を支える世代への投資という位置づけであり、子育て世帯だけでなく、社会全体にとっての基盤づくりといえます。
支援金は、児童手当の拡充や妊婦のための支援給付など、子育て支援策を抜本的に強化するための財源として使用されます。
具体的な子育て支援の拡充内容については、以下を参考にしてください。

出典|こども家庭庁『子ども・子育て支援金制度のQ&A』Q2(一部抜粋して掲載)
名称が似ているため混同しやすいですが、次のような違いがあります。
従業員の手取り額に直接影響する点が、実務上の大きなポイントです。
健康保険に加入している従業員様の給与控除金額について解説します。
2026年度の支援金率は 0.23%(国が一律に設定)。
計算方法は以下のとおりです。
標準報酬月額 × 0.23% ÷ 2(従業員負担分)
※ 企業も同額を負担します。
例えば、標準報酬月額30万円の場合
30万円 × 0.23% = 690円
その半額の 約345円が従業員負担(月額) となります。
※国民健康保険や後期高齢者医療制度加入者は計算方法が異なるため、各保険者へ確認して下さい。
給与明細への内訳表示は法的義務ではありませんが、制度趣旨を踏まえ、表示することが望ましいとされています。
納入告知書に「支援金額」が新たに記載される予定です。

出典|こども家庭庁『子ども・子育て支援金の概要について』P3(一部抜粋して掲載)
支援金の徴収が開始されることによって、従業員の毎月の手取り額も減少します。
国の制度とはいえ、従業員に支援金徴収が始まることを事前に周知しておくことが必要です。
特に、短時間労働者を含む社会保険加入者は全員対象となるため、誤解や不信感を生まないよう、早めのアナウンスが求められます。
急速に進む少子化は、子育て世帯だけの問題ではなく、社会全体の持続性に関わる重要課題です。
子どもたちは将来、経済や社会保障を支える存在になります。
その基盤づくりを社会全体で担う仕組みとして、本制度は導入されます。
「未来への投資を支える一員である」という視点を持ちながら、丁寧な制度運用を進めていくことが重要です。
制度開始までに、準備と周知を着実に進めていきましょう。
〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長
社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。
最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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