社会保険労務士@山下謙治

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========
1. 実質賃金3.8%減 物価の高騰に賃金の伸び追いつかず(1/6)
2. 障害者の法定雇用率引上げへ(1/19)
3. 雇調金不正受給 187億円に(1/25)
4. 休校時助成金 3月末で終了(1/24)
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1. 実質賃金3.8%減 物価の高騰に賃金の伸び追いつかず(1/6)
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厚生労働省は6日、22年11月の毎月勤労統計調査(速報)を発表。労働者1人当たりの平均賃金を示す現金給与総額(名目賃金)は28万3,895円(前年同月比0.5%増)となり、11カ月連続の上昇となったが、物価変動を反映した実質賃金は同3.8%減となり、8カ月連続のマイナスとなったことがわかった。

2. 障害者の法定雇用率引上げへ(1/19)
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厚労省の障害者雇用分科会で、16日、企業に義務付けられている障害者の法定雇用率を現行の2.3%から2.7%に引き上げる改正政令案要綱が了承された。
0.4ポイントの引上げは、障害者雇用が義務化された1976年以降で最大。引上げは段階的に行われ、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%となる。
また、2026年7月以降、国や地方公共団体は3.0%、都道府県の教育委員会は2.9%となる。

3. 雇調金不正受給 187億円に(1/25)
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雇用調整助成金のコロナ下での不正受給が、昨年12月末時点で1,221件、総額187億8,000万円に達したことがわかった。前回集計した9月末時点より301件、51億9,000万円増加した。労働局が調査を強化したことで不正発覚が急増する一方、昨年12月末までにペナルティ―分も含めて厚労省が回収したのは総額の7割弱に当たる128億7,000万円となっている。

4. 休校時助成金 3月末で終了(1/24)
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厚生労働省は23日、コロナ対応で休校時に子どもの世話のために仕事を休んだ保護者向けの「小学校休業等対応助成金」を3月末で終了することを決めた。
4月以降は両立支援等助成金の特例での対応に切り替え、雇用保険被保険者を対象に1人10万円、1事業主当たり100万円を上限にする。
なお、保護者が自ら申請して給付金を受け取る仕組みも終了する。

出典:(株)日本法令 SJS Express

今回のコラムは、パートタイムで働く方が年収や年間時間数をどのくらい働くのか?考える際の目安にしていた年収「〇〇万円の壁」の壁が働く方にとってどのような影響をもたらし、かつ、人事担当者がどのようなアドバイスを行っていく必要があるのか?解説してみました。

まず、「年収〇〇万円の壁」って何?という方もいらっしゃると思うので簡単に説明すると、税法や社会保険の扶養内で働いていた方が、時給が上がることで扶養から外れてしまい、税金や社会保険料の支出が増える可能性があって年収が増えても手取り額が増えない、逆に減ってしまうような状況を生んでしまうことをいいます。そのため、扶養内に抑えたい場合には、勤務時間を減らす必要が出てきます。

例えば、時給1,000円、1ヶ月80時間働く方が時給単価が上がり、1,100円になった場合

昇給前
 時給1,000円 × 1ヶ月80時間 × 12ヶ月 = 年収96万円(課税収入)

昇給後
 時給1,100円 × 1ヶ月80時間 × 12ヶ月 = 年収105.6万円(課税収入)

となり、同じ勤務時間であったとしても年収が上がり、自身で所得税と住民税を納める必要が出てきます。理由は以下の壁を超過するからです。

【100万円の壁】

100万円の壁は住民税に関する壁です。
これは、「給与所得控除額65万円」と「住民税の非課税控除額35万円」を合計した金額です。
パートタイムの年収が100万円を超えると住民税を支払う義務が生じます。

【103万円の壁】

103万円の壁は所得税に関する壁です。
「給与所得控除額55万円」と「所得税の基礎控除額48万円」を合計した金額です。
パートタイムの年収が103万円を超えると所得税の納税義務が生じます。

【106万円の壁・130万円の壁】

106万円の壁と130万円の壁は、いずれも社会保険に関する壁です。
次の条件を満たす場合には、パートタイムの年収が106万円を超えると、社会保険料を支払うことが必要となります。

上記の条件を満たしていない場合には、パートタイムの年収が130万円を超えると社会保険料の支払い義務が発生します。
また、配偶者の勤め先企業の給与規程に、社会保険の扶養に入っている配偶者を持つ人に対して扶養手当を支給するといった規定があれば、年収が130万円超えることで扶養手当も支給されなくなることもあります。

では、このような「年収〇〇万円の壁」に対してパートタイムで働く方々に人事担当者がどのようなアドバイスをしていくかですが、次回のメールマガジンで解説したいと思います。

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

— 最近の動き(Topics)——————–
1. 雇用保険料率の引上げ決定 来年4月から1.55%に(12/21)
2. 75歳以上の医療保険料負担増 社会保障審議会が了承(12/16)
3. マイナンバーカード交付の本人確認を郵便局でも可能に(12/16)
4. 技能実習見直しへ有識者会議が初会合(12/15)
5. 就労証明書のオンライン提出を可能に(12/14)
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1. 雇用保険料率の引上げ決定 来年4月から1.55%に(12/21)
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政府は21日、現在1.35%の雇用保険料率を2023年4月から1.55%に引き上げることを正式決定した。労働者の料率を0.5%から0.6%に、事業主の料率を0.85%から0.95%に、それぞれ0.1%ずつ引上げ。 コロナ禍で雇用調整助成金の支給が増え雇用保険の財源不足が問題となっていることを踏まえ、これまで暫定的に引き下げていた料率を原則に戻す。

2. 75歳以上の医療保険料負担増 社会保障審議会が了承(12/16)
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社会保障審議会の部会は15日、出産一時金の増額や75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料引上げなどを柱とする医療保険制度改革案を了承した。増額対象は全体の約4割で、保険料は2024年度から2段階で引き上げる。来年の通常国会への関連法改正案の提出を目指す。

3. マイナンバーカード交付の本人確認を郵便局でも可能に(12/16)
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松本剛明総務相は15日、マイナンバーカードの交付に必要な本人確認を市町村が指定する郵便局でできるようにすると表明した。2023年の通常国会に関連法案を提出し、カードの普及拡大を図る方針。

4. 技能実習見直しへ有識者会議が初会合(12/15)
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14日、技能実習制度と特定技能制度の見直しを検討する有識者会議の初会合が開かれた。会合では論点案が示され、技能実習制度の存廃や再編を含め議論することが提示された。2023年春に中間報告書を、同年秋に最終報告書をまとめる予定。

5. 就労証明書のオンライン提出を可能に(12/14)
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政府は、保育所や認定こども園の入園に必要な就労証明書を全国で統一の様式とし、オンラインで提出できるようにすると発表した。来年に省令を改正し、2024年度の開始をを目指す。新たな仕組みではマイナポータルを通じ、企業と保護者がそれぞれオンラインで提出可能となる見通し。

いつもお世話になっております。プロセスコアの山下です。

今回のコラムは、リクルートの側面から見た「企業ヴィジョンの必要性」についてです。

人事・労務関係の側面からお客様企業の活動を見させて頂いていると、組織の成長スピードが早い企業様の特徴の一つとして、企業ヴィジョンが明文化され、対外的に上手に発信されているように見受けられます。

企業ヴィジョンが形成され、対外的に発信されているかどうかが、すぐに組織力に大きな差を生むわけではないのですが、ヴィジョン先行で企業ホームページやリクルート活動時に発信している企業とそうでない企業では、少しずつですが企業が求めている適性や質に見合った人材の獲得に差が生じてきて、その差が3年5年と積み重なると組織力に大きな差が生じます。

理由は、ヴィジョンが明確に示されている企業は、企業が求めている価値観や適性、能力に見合った人からの応募が増え、採用する確率が高まるので、採用後の教育に対する費用対効果も高く、離職率も下がるが、ヴィジョンが示されてない企業は、その逆で、本来企業が求めていない価値観を持った人からの応募が増え、求める適性や能力に見合っていない人が採用される確率が高いので、教育コストが必要以上にかかり、離職率も高くなるからです。

もちろん、中長期的な視点で組織力を上げるためには、企業そもそもの収益力のあるビジネスモデルが構築できているかどうかが前提かと思いますが、鶏が先か卵が先かで、収益力の高いビジネスモデルを構築する上でも、優秀な人材を獲得し、強固な組織を作ることは重要といえます。

また、最近の年代の若い求職者の動向を見ていると、就職先の選択肢が多く、かつ、物や情報に溢れた時代環境のせいもあるのか、給与や福利厚生といった条件が同業他社より良いのは当たり前、かつ、その上で自分が共感できる企業理念であったり、ヴィジョンを持った企業かどうかで仕事を選ぶ傾向が高まっています。

もし、ヴィジョンの作成や企業理念がまだなら、

「私達は企業活動を通じてどんな社会を実現したいのか?どんな課題を解決したいのか?」

「私達は、社会に対してどんな存在になりたいのか?」

「それを実現するためにどんな組織を目指し、そのためにどのような採用や教育、キャリアプランや福利厚生制度を取り入れているのか」

といったことを言語化し、ホームページや求人広告媒体に掲載されることをお勧めします。

企業ヴィジョンは、リクルートだけでなく、ステークホルダー(外部委託や投資や融資先といった外部関係者のサポートを強める働きもあります。是非、作成がまだの企業様は言語化されることをお勧めします。

今回のコラムは以上です。

お読み頂き、ありがとうございました。

○●○最近の動き(Topics)━━●○●
直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事を纏めたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい。

1. 介護保険制度見直し 議論先送り(12/9)
2. 出産一時金 50万円に増額へ(12/7)
3. 企業年金運用、企業にも責任(12/5)
4. パート・正社員の待遇差「見直ししていない」が36%(11/26)
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1. 介護保険制度見直し 議論先送り(12/9)
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厚労省は、2024年度の介護保険制度見直しについて、年内の結論とりまとめ を先送りする方針を固めた。社会保障審議会で5日に示された案はDX推進や 人材確保にとどまり、ケアプランの有料化などの法改正を要する見直しは、 2024年度からの実施を断念。65歳以上の高所得者の介護保険料負担引上げや サービス利用料2~3割負担の対象者拡大などは、来年以降も検討を続ける。

2. 出産一時金 50万円に増額へ(12/7)
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政府は、出産一時金の額を現在の原則42万円から50万円程度に増やす方向で 最終調整に入った。来年度から実施の予定。引上げは2009年以来で、 過去最大の上げ幅となる。

3. 企業年金運用、企業にも責任(12/5)
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金融庁は、企業年金の運用に企業自身も責任を負うよう、法律で 最善利益義務とよばれる規定を盛り込む方針。金融機関だけでなく 企業を含め運用の受託者としての責任を明確にし、民事上や行政上の責任を負わせ、 信託銀行などに運用を任せきりで運用戦略がないなどの問題への対処を促す。 2023年の通常国会での金融サービス提供法などの改正を目指す。

4. パート・正社員の待遇差「見直ししていない」が36%(11/26)
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厚生労働省が実施した、パートタイマーや有期雇用労働者の待遇に関する 調査結果によれば、正社員間との「不合理な待遇差の禁止」の法制化を受け、 「見直しを行った」とした企業は28.5%、「見直しは特にしていない」とした 企業が36.0%だった。「見直した」との回答の内訳は、「基本給」が45.1%で最多、 「扶養手当」(6.1%)や「退職金」(3.1%)は少なかった

いつもお世話になっております。プロセスコアの山下です。
今回のコラムは、「権限委譲の進め方」です。

上司や先輩から部下、後輩へ「仕事を任せた」と言われたものの途中での細かなチェックや指導を受けると、「任せるといってくれたのでは?」と任された人は嫌な気分になったり、やる気を削がれたりします。

逆に仕事を任せたまま放置しすぎると仕事のミスやクレームに繋がったりもして、権限を移譲すると言葉にするのは簡単でも、実際には難しさがあります。
ではどのように進めていくと良いのか?対策を整理してみました。

以下の2つが主な対策となります。

1.相手のタイプや能力を見極める

2.口を出す範囲を確認し合う

1つ目の「相手のタイプや能力を見極める」ですが、まず何よりも業務指示や指導をする立場のリーダーの方は、相手がどんなタイプでどんな任され方が良いのか把握しておくことが必要です。
他人は自分と同じような仕事の進め方や受け止め方をしないということを念頭におき、アプローチを変えていく必要があります。その上でどこまで任せてよいのか?任せてはいけないのか?判断するために普段の仕事ぶりを観察したり、評価をしておく必要があります。

そして現時点での能力やスキルを見極めて「ここまでは指示するが、ここから先は任せる」「この時点で(もしくは)この部分はチェックする」など、はっきりと言葉にして確認し合うことが必要です。

「権限移譲」の判断はケースバイケースで難しいことですが、私の所見では、任せすぎて失敗したということよりも、任せることに慎重になりすぎて、その結果として成長が遅れ、いつまで経っても指示待ちで自立できないといった例が多いように思います。多少の失敗は目をつむるぐらいの勇気や寛容さが必要のように思います。

ただ、そうはいっても具体的なやり方を教えず、効率の悪いやり方をずっと個々人が続けると顧客へのサービス低下や生産性も落ちますので、ある程度、基本的な業務の進め方を身に着けてもらう教育の機会や、「〇〇といったレベルでできるようになったら任せる」といった目標設定をおき、それができるまでは注意、指導を受けることを前もって伝えておくことも有効です。

「権限移譲」は、経営者や管理職がより難易度の高い仕事に従事する時間を増やして、全体の生産性を高めるためのもっとも必要なスキルの一つといえます。

コラムをお読み頂いて少しでも「権限委譲」がスムーズに進むきっかけになればと思います。
ご一読ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

給与計算業務や社会保険手続代行、労使間の法律問題、採用・組織づくりのご相談なら社会保険労務士法人プロセスコアへご相談ください!
社会保険労務士事務所への顧問契約を検討中の方はこちら
社会保険労務士法人プロセスコアの強み・主な提案内容を知りたい方はこちら

いつもお世話になっております。
プロセスコアの山下です。

年末に近づき、「賞与の原資をどう決めるのか?」企業経営者や人事担当者の方が検討される時期が近づいてきていると思います。

今回のコラムは「賞与原資の決め方」について解説します。

今までは、社員に毎年、月例の給与の1.5ヶ月から2ヶ月程度は、夏と冬にそれぞれ支給すると決めており、特に支払いに問題はなかったが、コロナ禍の状況で業績が安定せず原資を割ってしまって、どのくらいの原資が良いか改めて検討されている企業様もいらっしゃると思います。

そこで、今回は一般的な賞与原資の決定方法を2つご紹介したいと思います。

1つめは、付加価値ベースとして考える方法です。

付加価値(粗利益)をベースとして考える方法
  
賞与原資 = 付加価値(粗利益)× 労働分配率(%)-(月例賃金 ×12+法定福利費)

一般的に、労働分配率はオーナーの役員報酬も入れますが、賞与原資決定の際にはオーナーの役員報酬は除きます。
ですから「社員労働分配率」という言い方が適切です。
労働分配率により総人件費を算出し、その総人件費から月例賃金分を控除した額を賞与原資とします。

労働分配率は業種業態や経営者の考え方によってもかなり差がありますので、過去数年分の社員労働分配率を実際に計算して、中長期的な企業の業績など考慮しつつ、適正額を決定することがお勧めです

中小企業においては、一般的に労働分配率が33%以内であればとても優秀だと言われています。

2つめは、経常利益(営業利益)ベースの考え方です。

経常利益(営業利益)をベースとして考える方法
  
「賞与支給前経常利益」の一定割合を賞与原資とする

たとえば、利益の3分の1を賞与原資とします。
これは利益の3分の1は社員に、3分の1は税金等の支払いに、残りの3分の1は内部留保にという考え方に基づきます。
しかし、この考え方に基づくと大半の企業の賞与原資が過小になります。
高収益企業にしかあてはまらない決め方といえます。

上記2つの賞与原資の決め方のいずれにしろ、人事の視点から考えると、以下の2つのポイントを考慮しつつ、決定して頂きたいと思います。

  1. 1. 過去の支給額との増減の程度
    大幅な増減は、来年以降への過度の期待やモチベーションのダウンに繋がる危険性があるので、運用上注意が必要です。
  2. 2. 一人当たりの粗利益額や伸び率
    一人当たりの粗利益額が業界の適正水準になかったり、伸び率が低かった場合、昇給原資を確保することができず、結局賞与原資を削ることになっていきます。


賞与原資の決定は、社員のモチベーションや士気にもかかわる部分ですので、過去の推移と今後の展開を予測しつつ、慎重に決定していきたいものですね。

今回のメールマガジンは以上です。お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

給与計算業務や社会保険手続代行、労使間の法律問題、採用・組織づくりのご相談なら社会保険労務士法人プロセスコアへご相談ください!
社会保険労務士事務所への顧問契約を検討中の方はこちら
社会保険労務士法人プロセスコアの強み・主な提案内容を知りたい方はこちら

○●○最近の動き(Topics)━━●○●
直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事を纏めたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい。

1. デジタル給与払い、来年4月解禁へ 労政審が了承(10/27)
2. 65歳以上の介護保険料、応能負担を強化(10/27)
3. 雇調金特例 来年1月末終了へ(10/22)
4. 精神疾患の労災 男性「長時間労働」、女性「セクハラ」が主因(10/21)
5. 労働関係助成金の代理申請で数千万円の不正を確認 会計検査院調査(10/18)
6. 失業認定手続をオンライン化 来年4月から離島で先行導入(10/14)
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1. デジタル給与払い、来年4月解禁へ 労政審が了承(10/27) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
厚生労働省の労働政策審議会は26日、給与をデジタルマネーで支払う制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案を了承した。改正省令は11月に公布し、2023年4月に施行する。賃金の現金払いの例外として、銀行口座などへの振込みに加え決済アプリ口座なども対象とする。 企業がデジタル給与支払いをするには、労使協定の締結、労働者の同意が必要。

2. 65歳以上の介護保険料、応能負担を強化(10/27)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
厚生労働省は2024年度の介護保険制度改正で、65歳以上の介護保険料について応能負担を強化する方針を固めた。社会保障審議会介護保険部会で31日から議論を開始し、今年末までにまとめることを目指す。
なお、サービス利用時の自己負担1割は維持する方向。

3. 雇調金特例 来年1月末終了へ(10/22)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
雇用調整助成金の特例措置について、政府は来年1月末で終了する方向で調整に入った。案では、12月から来年1月は日額上限を9,000円に引き下げ、助成率は中小で9割、大企業で3分の2とし、2月以降は日額上限額を8,355円、助成率は中小で3分の2、大企業で5割とする。
一方、支給要件の一部は来年3月まで延長する。

4. 精神疾患の労災 男性「長時間労働」、女性「セクハラ」が主因(10/21)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
政府は21日、2022年版「過労死等防止対策白書」を閣議決定した。白書によると、うつ病などの精神疾患で12~19年度に労災認定された3,853件の認定理由を男女別に分析したところ、男性の最多は「恒常的な長時間労働」(32%)で、女性は「セクハラ」(22%)だった。

5. 労働関係助成金の代理申請で数千万円の不正を確認 会計検査院調査(10/18)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ャリアアップ助成金・人材開発支援助成金について、少なくとも計約20件・総額数千万円に上る不正受給が確認されたことがわかった。厚生労働省は不正に関与した代理人をリスト化しているが、会計検査院がこれら代理人がリストに載る前に関与した2017~21年度の申請のうち約50件を抽出して調べたところ、虚偽の領収書や研修時間の水増し等による不正が判明。検査院は厚労省に対し、支給済みの助成金についても不正がなかったか確認を行うよう求めている。

6. 失業認定手続をオンライン化 来年4月から離島で先行導入(10/14)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
岡田規制・行政改革相は14日、ハローワークでの失業認定手続について、オンライン化を進めると発表した。まずは2023年4月から、離島在住者等を対象として試験的にオンラインでの面談を開始。本人確認や就労意思の確認等に問題がないかを検証し、全面実施について判断するとしている。

いつもお世話になっております。プロセスコアの山下です。

今回のコラムは、時間外労働(残業)の削減の主な対策について紹介します。

残業が多い企業は、昨今の労働市場において、少子化による人手不足の影響が強く、求職者から選ばれづらくなったり、採用した人員の定着率にも悪影響が出ることが考えられます。

前向きに残業時間の削減に取り組むことは、仕事とプライベートのメリハリをつけ、社員のモチベーションや生産性の向上、人件費の削減にも繋がります。残業時間の削減に課題をお持ちの経営者様や人事担当者の方には是非お読みください。

主な対策は、以下のとおりです。

  1. 業務ごとの標準作業時間の割り出し
  2. 個人、仕事ごとで作業効率の見直し
  3. 労働時間を把握できる仕組みや会社の方針の伝達
  4. タイムカードの打刻ルールや残業の事前申請制といった制度と運用の徹底

まず、最初に取り組んで頂きたいことは業務ごとの標準作業時間の割り出しです。
この仕事はこの量だと、平均して○時間かかるという標準遂行時間を割り出しておくことで、実際に業務にかかった作業時間との比較ができ、原因が明確になっていきます。残業が多いのは一人あたりの仕事の割り当てが多いのか?そうではなく、適切な方法で行われていないから、また、能力不足や練習(経験)不足によるもの、若しくは複数の因子が合わさっているから、といった真の原因の特定する「カギ」になります。

2つ目に、個人、仕事ごとで作業効率の見直しを行っていきます。
同じ仕事でも、作業スピードの早い人と遅い人がいるなら、仕事の工程を細かく分けて、早い人の段取りや進め方や作業時間の相違点をシェアしてもらう。また、反復継続する単純な業務や、1日や1ヶ月で割く時間の多い仕事を特定して、仕事の分担の見直しや作業効率を上げるためのシステムやツールの導入を図れないか検討し、テスト的に実行するなど見直しを図ります。

3つ目は、労働時間を把握できる仕組みや会社の方針の伝達です。
今までお仕事に関わらせて頂いた経験の中での話ですが、時間外労働時間数の削減が進まない企業様ほど、労働時間管理がなされておらず、時間外労働時間数のデータが取られていなかったり、会社全体としての削減目標を社員に示すといった方針が出されていない印象があります。まずは、企業として現状を正しく把握し、企業としての今後の方針を示して行く必要があります。

4つ目は、タイムカードの打刻ルールや残業の事前申請制といった制度と運用の徹底です。
例えば、タイムカードの出勤打刻は早出残業を行わない場合、始業時刻前の15分前から始業時刻迄の間に行う。退勤打刻は、居残り残業を行わない場合、終業時刻から15分までに行うといったルールの整備、また、早出や居残り残業を行う場合、上司への事前申請を義務付けて、申請がなかった社員は、ルールに則って上司から所定の時刻までに退勤してもらうよう注意を促すことで、残るときは残るが早く帰れるときは早く帰るといった習慣づけを図ることも重要です。

以上の方法以外にも企業ごとの特徴にあった、業務効率化や残業時間の削減方法があり、自社の実情に応じた対策を導入することがもっとも効果的だと考えます。
今回のコラムが少しでも残業時間削減のお役に立てば幸いです。

お読み頂き、ありがとうございました。