社会保険労務士@山下謙治

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========
1. 生成AIの利活用を経営者・従業員必須のスキルに 指針改定(7/14)
2. 「職場トイレの使用制限は違法」最高裁が初判断(7/12)
3. 健康保険証、廃止後も1年有効とみなす経過措置(7/12)
4. 物価高に追いつかず5月の実質賃金は前年比1.2%減(7/8)
5. 今年度の最低賃金 議論開始(7/1)
6. 5月の有効求人倍率は低下、失業率は横ばい(7/1)
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1. 生成AIの利活用を経営者・従業員必須のスキルに 指針改定(7/14)
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経済産業省は、経営者や従業員が身につけるべきDXに関する知識や技術をとりまとめた「デジタルスキル標準」(指針)を8月にも改定する。生成AI(人工知能)を加え、成立ちや基盤技術を理解すること、ビジネスへの活用事例を知ること等を記載する。本指針は企業の社内研修や社会人カリキュラムなどに反映される。

2. 「職場トイレの使用制限は違法」最高裁が初判断(7/12)
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性同一性障害の経済産業省職員が職場の女性用トイレの使用を不当に制限されているとして撤廃を求めていた訴訟で、最高裁は、使用制限に問題はないとした人事院の判定を違法と判断した。性的マイノリティの職場環境をめぐる上告審判決としては初のもの。

3. 健康保険証、廃止後も1年有効とみなす経過措置(7/12)
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2024年秋にも廃止が予定されている健康保険証について、厚生労働省は11日、廃止から1年間は一律で保険証が有効となるよう対策をとる考えを示した。
2025年秋より前に有効期限が切れる国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険証について、各保険者に対応を要請する方針。

4. 物価高に追いつかず5月の実質賃金は前年比1.2%減(7/8)
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厚労省が7日に発表した5月の毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金に当たる現金給与総額は前年比2.5%増の28万3,868円だったが、物価を考慮した働き手1人当たりの実質賃金は、同1.2%減少した。減少は14カ月連続。春闘効果で賃上げ率は30年ぶりの高水準になったが、物価の伸びに追いついていない状態が続いている。

5. 今年度の最低賃金 議論開始(7/1)
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厚生労働省の中央最低賃金審議会は6月30日、今年の最低賃金の引上げ額の目安を決める議論を開始した。
今後は、7月下旬頃の同審議会による答申を踏まえて、8月頃各都道府県の地方最低賃金審議会が実際の引上げ額を決め、10月から適用される。政府が目指す初の「全国加重平均1,000円」に届くかが焦点。

6. 5月の有効求人倍率は低下、失業率は横ばい(7/1)
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厚生労働省が6月30日に発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)が1.31倍(前月比0.01ポイント減)と、2カ月ぶりに低下した。昨年12月に1.36倍まで上昇し、今年に入り下落傾向が続くが、新規求人数は前年同月比で3.8%増えていて雇用情勢が悪化しているとはみていないとする。同日の総務省発表によると、5月の完全失業率(季節調整値)は2.6%で前月から横ばいだった。

出典:(株)日本法令 SJS Express

いつもお世話になっております。プロセスコアの山下です。

今回のコラムは、主体性を持って考える力を高めてもらうために必要なOJT指導者に取り入れて頂きたい指導のポイントについて触れたいと思います。

※OJT指導者…現場の仕事を進めながら新人の教育にあたる方

というのも、指導にあたる人が新人社員に対して入社間もない時期にどのような指導の方法をするかが成長に大きく影響するからです。

指導方法を誤ると考える力が身につかず、受け身のままになってしまいます。
極端な言い方をすれば、思考が停止してしまったような社員を育ててしまう危険性もあります。

そこで、今回は指導における大切なポイントを3つに絞ってお伝えします。

  1. 1. 考え方として「育てる」のではなく、「育つ」
  2. 2. 答えをすぐ与えない
  3. 3. 参画意識をもたせる

では、一つずつ解説していきます。

1.基本の考え方として「育てる」のではなく、「育つ

・・・これはどういう意味かといいますと、指導者の「自分が育てなければ!」という思いから丁寧に1から10まで教え過ぎてしまい、社員に主体的に考える機会や失敗する機会を奪ってしまうことがあります。
指導に当たる人の役割は、1から10まで教えることではなく、どうやったら自分で考えて育っていくことができるのか?その為の「環境づくり」を考えることが大きな役割だと考えなければいけません。

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2.答えをすぐ与えない

・・・・指導にあたる人と新人社員の日常の会話の中で、どれだけ1.で触れた「育つ機会」を作れるかということが非常に重要になります。

その為には、様々なケースが考えられますが、基本の方針としては新人社員が仕事の進め方で分からない時や困っている時にすぐ答えを教えず、考えさせることです。
答えをすぐに教えてしまうと、新人社員は上司に質問すればすぐに答えを教えてもらえると認識して、また別の問題が起きたとしても自分で考えることなく、すぐ上司に答えを求めてしまいます。
また、上司に答えをもらい、その通り対応をすればもし間違っていた場合でも、自分の責任という認識が弱くなるので、失敗を自分ごととして捉えることもなく、成長の機会を奪ってしまいます

社員から質問があった時に、安易に答えを教えるのではなく、ぐっと我慢して「どうすれば良いと思う?」であったり、「〇〇さんはどう思いますか?」といった質問を投げかけて、本人の考えを聞いてから、必要なアドバイスを行うことが重要になります。
また、具体的な対策や方法といった回答を伝えることよりも、その回答にいたった考え方(判断に至った企業の価値観や背景、経緯)を伝えることも重要です。

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3.参画意識を持たせる

・・・新人社員に、入社して間もない頃からできるだけ自分自身のことだけでなく、部や課といったチームや何かのプロジェクト、会社全体の課題について改善案を求めて参画意識をもってもらうことも大切です。
どちらかというと、新人社員は経験が浅いからといった理由で、チーム全体のことを自分事として捉える機会が少なくなりがちです。

結果として、周りから必要とされているといった認識は弱くなり、組織全体の課題についての参画意識も薄く、やらされ感だけで仕事をやる状態を助長させてしまいます。

何か小さなテーマでも良いので、常に自分の仕事や自分以外の職場の課題について改善案を定期的に求める機会をつくるようにしましょう。

今回のコラムは以上です。
新人の教育指導にあたる方の指導の進め方の参考になれば幸いです。

お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========
1.  2028年度までに雇用保険対象者拡大(5/26)
2. 特定技能2号11分野に拡大(5/24)
3. 個人宅配ドライバーの半数以上が荷主から違反原因行為(5/23)
4. マイナンバー法等改正案 成立(6/2)
5. 荷待ち時間の削減、荷主の義務に(6/2)
6. 育児中の従業員に対する短時間・在宅勤務の拡充を検討(5/31) 
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1.  2028年度までに雇用保険対象者拡大(5/26)
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政府は、週所定労働時間20時間未満で働く人も失業給付や育児休業給付等を受け取れるよう、6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」に、2028年度までの雇用保険の対象者の拡大を盛り込む見通し。
まずは雇用保険法を改正し、細かい条件は労働政策審議会にて議論のうえ、周知と準備の期間をかけて進める。

2. 特定技能2号11分野に拡大(5/24)
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自民党は23日、在留期間の上限がない在留資格「特定技能2号」の対象分野を追加し、2分野から11分野に拡大する政府案を了承した。追加対象となるのはビルクリーニング、宿泊、農業、飲食料品製造業などで、いずれも現在1号の対象となっている。政府は6月にも閣議決定し、方針を定めた後、法務省令改正で対象を追加する方針。

3. 個人宅配ドライバーの半数以上が荷主から違反原因行為(5/23)
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国土交通省による軽貨物運送事業者向けの初の実態調査で、回答した772人のうち、54%に当たる414人が、荷主から法令違反の原因となる行為を受けていたことがわかった。
内訳は「長時間拘束につながる多量の荷物の依頼」285件、「適正運行では間に合わない到着時間の指定」194件、「過積載の強要」129件など。

4. マイナンバー法等改正案 成立(6/2)
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2024年秋に現行の健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードに一体化させることなどを盛り込んだマイナンバー法など関連法改正案が、2日の参議院本会議で可決・成立した。その他改正案には、年金受給者の預貯金口座とマイナンバーを紐付ける新制度や、マイナンバーを行政利用できる範囲の拡大等が盛り込まれている。

5. 荷待ち時間の削減、荷主の義務に(6/2)
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運送業における荷待ち時間について、政府は、荷主企業への規制を強化し、削減に取り組むよう義務付ける。一定以上の物流量を抱える荷主企業には、トラック運転手の負担軽減に向けた計画策定を義務付け、国への定期報告も要請するほか、物流に関する管理責任者の任命も求める。関連法の改正案を2024年の通常国会に提出する。

6. 育児中の従業員に対する短時間・在宅勤務の拡充を検討(5/31)
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厚生労働省は、31日、3歳以上の未就学児を育てる従業員が短時間勤務や在宅勤務など複数から選べる制度を創設することや、残業免除の期間を子が小学校就学まで延長することを含む報告書案を示した。3歳未満の子を持つ親については希望があればテレワークを認めることを企業の努力義務とする。子の看護休暇も、対象年齢拡大や取得事由の拡充、名称の変更を検討する。

出典:(株)日本法令 SJS Express

お世話になっております。プロセスコアの山下です。

今回のコラムでは、「チャレンジ役職制度」について触れたいと思います。
チャレンジ役職制度とは、まだ組織内での役職としての経験がない人に対して一定期間の見習い期間として役職の業務についてもらい、その仕事内容に従事することで仕事内容を理解してもらったり、能力を高めることを目的にした制度です。また役職業務への適性があるのか、本人も企業側も判断するための猶予期間としても活用される制度です。

企業経営者の方からの人事相談で、社員を役職に任命したものの、思ったような働きぶりが見られず、降格を検討しているが、本人のモチベーション低下や周りへの影響を考慮してなかなか伝えづらい、といったご相談を受けることがあります。チャレンジ役職制度は、そのような事態を未然に防ぐ効果もあります。

では、どのように運用をするかというと、以下の手順で作成していきます。

まずチャレンジ期間から正規の管理職に昇格するための要件を整理します。

以下、簡単な参考例です。

次に、管理職の昇進要件の中からいくつか(全てでも良い)選んでおき、一定期間(1~2年)以内にその要件を満たせば正規の管理職への昇進する(肩書からチャレンジが取れる)が、満たすことが出来なければ、チャレンジ管理職ではなくなる(降格ではなく、1回目のチャレンジ終了)という立て付けにします。

このような制度設計にすることで、一度だめでも再チャレンジすることが出来ます。(何回再チャレンジができるかは会社での設計次第です。)
また、企業側も思い切った人事がしやすくなり、社員としても心理的ハードルが下がり、役職業務へのチャレンジがしやすくなります。

以下、その他のチャレンジ役職制度のイメージ例です。
役職者候補の選定の際に、ぜひご参考ください。

今回のコラムは以上です。お読み頂き、ありがとうございました。

(参考図書…白潟総合研究所株式会社 代表取締役社長 白潟 敏朗 著書「中小ベンチャーを壊す!人事評価制度の17の大間違い」 

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========
1. 特定技能2号の対象拡大 11分野に(4/25)
2. 「小規模保育」の3歳以上受入れ拡大へ こども家庭庁が通知(4/22)
3. 健康保険法改正案 衆議院通過(4/14)
4. 労働市場改革の論点案を提示(4/13)
5. 政府が専門人材の採用日程ルール決定(4/11)
6. 技能実習制度の廃止を提言(4/10) 
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1. 特定技能2号の対象拡大 11分野に(4/25)
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政府は24日、外国人労働者の在留資格「特定技能2号」の対象を、現在の2分野から11分野に拡大する案を自民党に示した。特定技能2号は在留期間の更新に制限がなく、家族も帯同可能。長期的な就労を促し、人手不足の解消を図るねらい。6月にも閣議決定し、追加する9分野について今秋の試験開始を目指す。

2. 「小規模保育」の3歳以上受入れ拡大へ こども家庭庁が通知(4/22)
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こども家庭庁は21日、原則3歳未満の乳幼児を受け入れる小規模保育事業について、条件を限定せず3歳以上も受け入れられるようにする通知を発出した。
3歳になると新たな園に移るのが負担になるとの指摘があることなどから、自治体が3歳以上の受け入れを柔軟に判断できるようにする。

3. 健康保険法改正案 衆議院通過(4/14)
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健康保険法などの改正案が13日、衆議院本会議で可決され、参議院に送付された。
同改正案は、後期高齢者医療制度の保険料を所得に応じて引き上げることが柱で、今年4月から50万円に増額された出産育児一時金の財源の一部を後期高齢者医療制度から負担する仕組みも導入する。

4. 労働市場改革の論点案を提示(4/13)
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政府は12日の新しい資本主義実現会議で、労働市場改革の論点案を示した。
「転職の壁」を取り払い労働移動を円滑化するための内容も含まれていて、自己都合退職した人が失業給付を受け取るまでの期間の短縮化や、勤続20年超を優遇する退職所得控除の見直し等を盛り込んだ。具体案は、リスキリング(学び直し)など人への投資の促進策やジョブ型雇用の導入とともに、6月までにまとめる労働市場改革の指針に盛り込む。

5. 政府が専門人材の採用日程ルール決定(4/11)
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政府は10日、2025~26年春卒業者の採用日程ルールを決定し、経済・業界団体に要請した。26年春卒業者から専門性の高い人材に限り、選考開始を大学3年終了前の春休みに前倒しする。昨年4月に産学協議会が示したタイプ3のインターンシップを2週間以上実施等が前倒しの要件。企業が内々定を出した学生に対し就活を終わらせるよう迫る「オワハラ」禁止や、辞退者に内定期間中の研修費用返還を求める行為の禁止、学生のハラスメントに関する苦情・相談を受け付ける窓口の設置も求めた。

6. 技能実習制度の廃止を提言(4/10)
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政府は10日、外国人技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成の双方を目的とした新制度を創設する案を有識者会議に示した。新制度では、現行制度で原則認められていない転籍についても制限を緩和する方向。
月内に中間報告書を作成、今秋に最終報告をまとめる予定。

出典:(株)日本法令 SJS Express

いつもお世話になっております。プロセスコアの山下です。

今回は4月に入り、新入社員の方を新たに迎い入れた方も多いと思いますので、新人社員採用の際、説明が重要な「キャリアパス」について触れたいと思います。

キャリアパスという言葉は聞き慣れない方もいるかもしれませんが、一般的には、

といった内容を表したものです。
(人事評価制度を導入されている企業様では職能要件書や評価制度の資料をキャリアパスの説明に使われている企業も多いと思います。)

なぜ、採用時に説明が重要かというと、理由は大きく2点あります。

1つ目は、「教育効果を高める効果にあります。入社して半年で○○の仕事をこのレベルでできるようになってほしいといった期待値を入社間もない時点で伝えるのと伝えないのでは、学ぶ側の姿勢が変わってきます。また、企業が期待する基準で仕事が出来るようになっていかないのであれば、給与が上がらない可能性を示唆しておくことは緊張感を持たせることに繋がります。

2つ目は、リクルート対策と在籍社員への信頼関係構築です。
社員自身、仕事を続けることでどのようなキャリア習得の機会があるのか、習得に応じてどのくらいの年収が見込めるのか具体的なイメージを持たせることは新卒者や中途採用社員に限らず、リクルートを行う上で求職者へ応募動機を促す大きな材料になります。また、在籍社員へも企業への信頼度を高める効果があります。なぜなら、雇用される多くの人が現在の、終身雇用制度の崩壊の流れやIT化の加速、多様な社会変化が起こる状況下において自身のキャリアや将来の生活の安定について不安を感じているからです。

では、運用上の注意点ですが、一つ目は出来るだけ早く伝えることです。
採用前や入社間もないタイミングで伝えることで、求職者又は新人社員は、入社後に成長して活躍する自分自身のイメージが持ちやすくなります。
二つ目は、定期的な見直しです。
企業を取り巻く様々な要因から変化が早くなっており、企業もそれに合わせて商品やサービス、提供体制、求められる能力も変わってきます。また、様々な働き方も求められています。
一般職から管理職といった一つのキャリアコースだけでなく、様々な分野でのプロフェッショナルな人材の育成や在宅での業務や育児に専念できる多様な雇用環境の提供機会が求職者から求められています。最初に作成したキャリアパスに固執してしまうと、そのような外的・内的環境の変化に対応できず、人材の成長が業績の向上に繋がらなかったり、せっかく採用して育てた優秀な人材を手放してしまう危険性もあります。そのため、キャリアパスは適宜見直す必要があります。

今回のコラムは以上です。
自社のキャリアパス制度の運用が適宜行われているか是非ご検討頂ければと思います。

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========
1. 日本商工会議所調査 中小の58%が賃上げ(3/29)
2. 2022年の平均所定内給与が過去最高に(3/18)
3. 新基準でのインターンシップ実施予定 企業の6割(3/24)
4. 子育て支援・女性活躍推進企業に優遇措置 補助金受けやすく(3/24)
5. 「産後パパ育休」給付金支給水準の引上げを検討(3/17) 
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1. 日本商工会議所調査 中小の58%が賃上げ(3/29)
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日本商工会議所が28日に公表した中小企業の賃金引上げに関する調査の最終集計によれば、「賃上げを実施予定」と回答した企業は58.2%(前年比12.4ポイント増)に上った(調査は全国約6,000社の中小企業を対象に2月に実施(回答率55%))。うち6割強が業績改善を伴わない賃上げ実施で、賃上げ率は「2%以上」が58.6%、「4%以上」が18.7%だった。

2. 2022年の平均所定内給与が過去最高に(3/18)
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厚生労働省が17日に公表した2022年の賃金構造基本統計調査結果で、フルタイムで働く一般労働者の所定内給与が前年比1.4%増で31万1,800円と、過去最高だった。
男女別では、男性が前年比1.4%増の34万2,000円、女性が同2.1%増の25万8,900円。男性給与を100とした場合の男女間賃金格差は75.7で、前年より0.5ポイント縮まった。
雇用形態別では、正社員が1.4%増の32万8,000円、非正規社員が同2.1%増の22万1,300円で、賃金格差は4年連続で縮小した。企業規模別の賃金伸び率では、大企業が2.5%で月34万8,300円、中企業は1.1%で月30万3,000円、小企業は1.6%で月28万4,500円と、差がみられた。

3. 新基準でのインターンシップ実施予定 企業の6割(3/24)
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経団連の調査で、2023年度からの新基準でインターンシップを実施予定の企業が約6割に上ることがわかった。昨年、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意によりインターンシップの定義(就業体験必須等)等が新たにまとめられ、また一定の基準を満たすインターンシップにより企業が得た学生情報について、広報活動や採用選考活動に使用できることと見直しがされた。

4. 子育て支援・女性活躍推進企業に優遇措置 補助金受けやすく(3/24)
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経済産業省は、子育て支援や女性活躍の取組みに積極的な中小企業に対し、「事業再構築補助金」や「ものづくり補助金」などの補助金を受けやすくする優遇措置を設ける方針。「くるみん認定」(子育て支援)や「えるぼし認定」(女性活躍推進)を得た企業などを優遇措置の対象とする。

5. 「産後パパ育休」給付金支給水準の引上げを検討(3/17)
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政府は、産後パパ育休の育児休業給付金の支給水準について、休業前賃金の80%程度(現行67%)への引上げを検討する。休業中の社会保険料の免除と合わせて、一定期間(1カ月)実質的に休業前賃金を100%保障する案となっている。加えて、女性の育休中の支給水準も一定期間引き上げ、実質全額保障期間を設けることも検討する。
17日に首相が会見で表明し、3月中にも取りまとめる少子化対策のたたき台に盛り込まれる見通し。

出典:(株)日本法令 SJS Express

今回のコラムでは、前回のテーマ「年収〇〇円の壁」に差し掛かっているスタッフがいた場合の人事担当者の対応について触れたいと思います。

前回のコラムで、「年収〇〇円の壁」の説明を行いました(前回のコラムはこちら)。
「年収〇〇円の壁」とは、税法や社会保険の扶養内で働いていた方が時給が上がることで扶養から外れてしまい、税金や社会保険料の支出が増える可能性があって年収が増えても手取り額が増えない、逆に減ってしまうような状況を生んでしまうことをいい、扶養内に抑えたい場合には、勤務時間を減らす必要が出てくるとお伝えしました。

では、「年収〇〇円の壁」に差し掛かっているスタッフがいる場合の考え方のポイントに触れていきます。主に以下の3つのポイントです。

1.会社の方針を決定する
2.シュミレーションを行い、提示する
3.本人だけでなく、配偶者等家族とも協議してもらう  

事例として、現在の年収が社会保険の扶養範囲内である130万円ギリギリで収まっている従業員を昇給させる、若しくは勤務時間を増やすと年収が130万円を超えてしまうことが想定されるケースで考えていきます。

では、1.「会社の方針を決定する」について
年収130万円以上になると社会保険に加入義務が発生するので、社会保険料が発生し、おおよそ年収で150万円から160万円以上アップしないと、本人の手取り額が増えないことになります。
本人が社会保険に加入しても、今まで通りの手取り額を希望する場合、大幅に勤務時間数を増やすか時給単価をアップをさせる必要がありますが、それ以前に会社として、それだけ実際に仕事をお願いするだけの仕事量や内容があるのかをまず判断する必要もあります。要員計画として、別の人を採用して年収130万円未満の勤務を希望する従業員を増やしていった方がいいのか?コストやリクルートのしやすさ、安定した人員体制といった側面からも考えて、該当者の収入アップを図っていくか?現状維持でいくのか?方針を考えておく必要があります。

次に、2.「シュミレーションを行い、提示する」について
時給や労働時間数をいくらずつ上げたり、増やしていくと手取り額はいくら増えるのか?社会保険料や税金の金額はどのくらいずつ増えてどんなメリットがあるのか早見表をつくるなどして、一目でわかるような資料を提示しておくと便利です。
理由は、対象の従業員が具体的なイメージを明確に持っていないまま、現状と違う働き方を選択すると、条件変更後に思ったような働き方ではなかったという申し出を受ける可能性が高くなるからです。

3.の「本人だけでなく、配偶者等家族とも協議してもらう」について
年収130万円未満で働いている従業員の方の多くが、生計を同じくする配偶者がフルタイムで働き、まだ子供が小さく、育児に多くの時間を取られています。家族の協力をしっかり得ているかどうかが、働き方を変更した後、継続できるかの大きなカギとなるからです。

今回は、社会保険の扶養範囲内の年収130万円のケースでお伝えしましたが、実際様々なケースが想定されます。
企業側も働いている従業員の方も「将来像」をしっかり見据えて選択できるかがポイントとなります。
対応方法で悩まれているお客様がもしいらっしゃれば担当スタッフへ是非ご相談ください。

今回のコラムは以上です。
お読み頂き、ありがとうございました。

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========
1. 自己都合退職の失業給付開始期間を短縮へ(2/16)
2. マイナ保険証の代用「資格確認書」発行は無料(2/15)
3. マイナ保険証システム導入義務化は「違法」 医師らが提訴(2/23)
4. 高度外国人材の獲得に新制度導入(2/18)
5. 「特定技能」前年比2.6倍増(2/18)
6. 雇調金のコロナ特例が終了 新年度より通常運用(2/27)
7. 介護保険証もマイナンバーカードと一体化 厚労省方針(2/27)
8. フリーランス保護法案を国会に提出 違反事業者には罰金も(2/24)
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1. 自己都合退職の失業給付開始期間を短縮へ(2/16)
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政府は15日、「新しい資本主義実現会議」で失業給付のあり方の見直しなどの議論を始めた。自己都合退職の場合の給付制限期間の必要性について「慎重に検討すべきではないか」とし、資料では住民税の減免措置の対象外となること等も会社都合退職の場合との違いとして挙げられている。
6月末までに策定する指針に盛り込むかを検討する。

2. マイナ保険証の代用「資格確認書」発行は無料(2/15)
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マイナ保険証への一本化に伴い、マイナンバーカード未取得者に発行する「資格確認書」について、政府は無料で発行する方針を固めた。有効期間は最大1年間とする。
健康保険法などの関連法改正案を今国会に提出する予定。

3. マイナ保険証システム導入義務化は「違法」 医師らが提訴(2/23)
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医師や歯科医師274人は22日、マイナ保険証の資格確認を医療機関に義務付けたのは憲法や健康保険法に違反するとして、国に対し義務がないことの確認などを求める訴訟を東京地裁に起こした。資格確認のためのシステム導入にかかる経済的負担や、個人情報の漏洩リスクを余儀なく負わされていると主張し、1人あたり10万円の慰謝料も求めている。

4. 高度外国人材の獲得に新制度導入(2/18)
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政府は17日、高度外国人材を呼び込むための新制度の導入を決定した。在留資格「高度専門職」の取得要件を緩和して優遇措置を設け、資格要件を満たす経営者や研究者、技術者などは滞在1年で永住権の申請可能等とする。また、在留資格「特定活動」に「未来創造人材」を創設し、世界の上位大学を卒業後5年以内の外国人を対象に日本で最長2年間の就職活動等を認める。4月中の運用開始を目指す。

5. 「特定技能」前年比2.6倍増(2/18)
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出入国在留管理庁は17日、在留資格「特定技能」で働く外国人が13万923人(昨年12月末時点)で、前年同期の約2.6倍に増えたと発表した。新型コロナウイルスによる出入国の水際対策緩和により増加した。業種別では飲食料品製造業が最も多く4万2,505人で、国籍別ではベトナム人が7万7,137人で最多だった。

6. 雇調金のコロナ特例が終了 新年度より通常運用(2/27)
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厚生労働省は27日、雇用調整助成金の新型コロナウイルス対策特例措置について、3月末で終了することを正式に決定した。同日の労働政策審議会職業安定分科会にて了承された。1月末の支給上限額を引き上げる特例措置の終了後も経過措置として残っている支給要件の一部緩和を終了し、新年度より、前年との比較で判断する通常の運用に戻す。

7. 介護保険証もマイナンバーカードと一体化 厚労省方針(2/27)
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厚生労働省は27日、社会保障審議会介護保険部会にマイナンバーカードを活用し介護保険被保険者証を電子化する方針を示した。事務の効率化やデータ連携基盤の強化等につなげることがねらい。2023年度中に議論をまとめて法改正のうえ、25年度には一部自治体での先行導入、26年度から全国の自治体での本格運用開始を目指す。

8. フリーランス保護法案を国会に提出 違反事業者には罰金も(2/24)
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政府は24日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。個人で事業を営み企業などから業務委託を受けるフリーランス「特定受託事業者」との取引適正化に関する義務(契約時の業務内容・報酬額等の書面明示/60日以内の報酬支払い/買いたたき等の禁止など)等を定め、違反した事業者には罰則を科す。今国会で成立すれば、2024年中に施行される見通し。

出典:(株)日本法令 SJS Express