社会保険労務士@山下謙治

はじめに

「先日まで元気に働いていたはずの社員が、ある日突然、退職届を出してきた…」

多くの中小企業の経営者や人事担当者の皆様から、このような悲痛な声をお聞きします。

本日は、数々の労務相談を通じて見えてきた、「社員が突然辞める会社」に共通して現れる5つの危険なサインと、その処方箋について、詳しく解説してまいります。

皆様の企業が、社員から「選ばれ続ける」職場になるための一助となれば幸いです。

目次 [閉じる]

1.はじめに:「突然の退職」は、本当に突然か?

中小企業にとって、社員一人の退職が与えるダメージは計り知れません。

採用や育成にかかったコストが無駄になるだけでなく、残された社員への業務負担の増加、ノウハウの流出、そして何より職場の士気の低下など、経営に与える影響は深刻です。

経営者や人事担当者の目には「突然の退職」と映るかもしれませんが、断言します。

社員の退職は、決して突然起こるものではありません。

多くの場合、社員は水面下で長い時間をかけて悩み、不満を募らせ、転職活動を進めた上で、最終手段として退職を決意します。その過程では、必ず何らかの予兆、つまり会社に対する「サイン」を発しています。

問題は、経営層や管理職がそのサインに気づけているか、あるいは気づいていても「個人の問題」として見過ごしていないか、という点にあります。このサインを早期に発見し、適切に対処することこそが、突然の離職を防ぎ、強い組織を作るための鍵となるのです。

2.サイン1:コミュニケーションの断絶と「静かな職場」

あなたの会社は、このような「静かな職場」になっていませんか?

🧡 深層心理


一見、静かで仕事に集中しているように見える職場も、その裏側では社員の心が離れている危険な兆候かもしれません。

この静けさの背景には、「こんなことを言っても否定されるだけだ」「どうせ意見を言っても無駄だ」という諦めや、心理的安全性の欠如が隠れています。社員が孤立感を深め、会社への帰属意識を失っていく過程の第一歩です。

⚠️ 放置するリスク


コミュニケーションの欠如は、エンゲージメントの低下に直結します。業務上のミスやトラブルの発見が遅れるだけでなく、社員同士の不信感が募り、ハラスメントの温床になるケースも少なくありません。

社員は、自分の存在が認められていないと感じ、より良い人間関係を求めて静かに会社を去る準備を始めます。

💊 処方箋


まずは、コミュニケーションの「量」と「質」を意図的に増やす仕組みが必要です。

週に一度、あるいは月に一度でも構いません、上司と部下が1対1で対話する「1on1ミーティング」を定例化することをお勧めします。ここでは業務の進捗確認だけでなく、キャリアの悩みやプライベートな雑談も交え、信頼関係を築くことが目的です。また、経営層が率先して現場に足を運び、社員一人ひとりに積極的に声をかける姿勢も、職場の空気を変える大きな力になります。

「1on1ミーティング」のコラムはこちら

3.サイン2:不公平な評価と「承認されない」職場

社員のモチベーションを最も削ぐものの一つが、評価に対する不満です。

🧡 深層心理


人は誰しも「認められたい」「正当に評価されたい」という承認欲求を持っています。その欲求が満たされない時、社員は会社に対する強い不信感を抱きます。

「こんなに頑張っているのに、誰も見てくれない」
「この会社では正当に評価されない」
という思いは、仕事への情熱を急速に失わせ、自分の将来に対する不安を掻き立てます。

⚠️ 放置するリスク


不公平な評価制度を放置すると、皮肉にも、最も優秀で市場価値の高い社員から先に見切りをつけて辞めていきます。

彼らは、自分の能力が正当に評価される場所を求めて、より良い条件の会社へと移っていくのです。結果として、社内には不満を抱えた社員や、変化を望まない社員ばかりが残り、組織全体の活力が失われていきます

💊 処方箋


評価制度の透明性・公平性・納得性を高めることが急務です。誰が読んでも理解できる具体的な評価基準を作成し、全社に公開しましょう。

そして、評価結果をフィードバックする際には、結果だけを伝えるのではなく、「どの行動がどう評価に繋がったのか」「今後何を期待しているのか」を時間をかけて丁寧に説明することが不可欠です。

部下の働きを日頃からよく観察し、感謝や称賛の言葉を具体的に伝える「承認の文化」を根付かせることも重要です。

4.サイン3:常態化する長時間労働と「疲弊した」職場

「社員の頑張り」と「心身の疲弊」は紙一重です。

🧡 深層心理


恒常的な長時間労働は、社員の肉体を蝕むだけでなく、精神をも追い詰めます。プライベートの時間を犠牲にし、心身をすり減らしながら働く中で、「会社は自分のことを大切にしてくれない」「自分は使い捨ての駒なのではないか」という感覚が強まります。

ワークライフバランスが崩壊し、この会社で働き続ける未来を描けなくなってしまうのです。

⚠️ 放置するリスク


社員の疲弊は、生産性の著しい低下を招きます。

また、メンタルヘルス不調者の増加は、会社の安全配慮義務違反を問われる労務トラブルに発展するリスクを飛躍的に高めます。最悪の場合、過労死や過労自殺といった事態に至れば、企業の存続そのものが危ぶまれることになります。

💊 処方箋


まずは、タイムカードやPCのログなどで、全社員の労働時間を正確に把握することから始めましょう。その上で、特定の部署や個人に業務が偏っていないかを確認し、業務プロセスの見直しや人員の再配置を行います。

「早く帰れ」と号令をかけるだけでは問題は解決しません。

経営層や管理職が率先して定時退社や休暇取得を実践し、「休むことも仕事のうち」という文化を組織全体で作り上げることが何よりも重要です。

5.サイン4:成長機会の欠如と「未来が見えない」職場

特に若手・中堅社員にとって、「この会社で成長できるか」は非常に重要な問題です。

🧡 深層心理


「このままこの会社にいても、専門的なスキルが身につかず、市場価値が下がってしまうのではないか」という焦りや恐怖は、社員にとって大きな退職動機となります。

自分のキャリアが停滞していると感じた時、社員は社内ではなく、社外に成長の機会を求め始めます。

⚠️ 放置するリスク


成長意欲の高い社員が次々と流出すれば、組織は新陳代謝を失い、硬直化していきます。

常に同じメンバーで同じ仕事をしているため、新たなイノベーションも生まれにくくなるでしょう。結果として、採用コストばかりが増大し、企業の競争力は少しずつ削がれていきます。

💊 処方箋


社員の成長を会社の責任として捉え、積極的に投資する姿勢が求められます。外部研修への参加支援や資格取得奨励制度の導入、定期的なジョブローテーションによる多角的な業務経験の付与などが有効です。

また、評価面談などの場で、本人のキャリアプランについて話し合い、会社としてどのような成長を期待しているのか、どのようなキャリアステップが用意されているのかを具体的に示すことで、社員は安心して働き続けることができます。

6.サイン5:経営層のネガティブな言動と「ビジョンなき」職場

社員は、あなたが思う以上に、経営者の言動をよく見ています。

🧡 深層心理


船長である経営者が船の未来を信じていなければ、乗組員である社員が安心して航海を続けられるはずがありません。

経営者のネガティブな言動は、社員の心に「この会社はもう長くないかもしれない」「この人についていって大丈夫だろうか」という深刻な不安を植え付けます。働く意義や目的を見失い、会社への忠誠心は急速に薄れていきます。

⚠️ 放置するリスク


経営層への不信感は、組織全体の士気を決定的に低下させます。

一人が退職すると、「やはりこの会社は危ないのかもしれない」という不安が伝播し、まるでドミノ倒しのように連鎖退職を引き起こす最も危険なサインと言えるでしょう。

💊 処方箋


経営者自身の言葉で、会社のビジョン、ミッション、そして未来への展望を、情熱を持って語り続けることが不可欠です。

たとえ困難な状況にあっても、常にポジティブで一貫したメッセージを発信し続けるリーダーの姿は、社員に安心感と希望を与えます。会社の未来を信じ、社員一人ひとりの存在を尊重する経営者の姿勢こそが、組織の一体感を醸成するのです。

7.まとめ:サインを「予防」に変え、選ばれる会社になるために

ご紹介した5つのサインは、それぞれが独立しているわけではなく、互いに複雑に絡み合っています。

例えば、長時間労働がコミュニケーション不足を招き、それが不公平な評価や成長機会の欠如に繋がっていく、という負のスパイラルに陥るケースは非常に多いのです。

重要なのは、問題が起きてから慌てて対応する「対症療法」ではなく、これらのサインを早期に察知し、問題が起きない組織風土を日頃から作っておく「予防」の視点です。

健全なコミュニケーション、公正な評価制度、適切な労働環境、そして成長できる機会と明確なビジョン。これらが揃った職場環境こそが、最大の離職防止策であり、社員のエンゲージメントを高め、企業の成長を加速させる最強のエンジンとなります。

もし、今回の診断で一つでも多くのサインに心当たりがあったとしても、悲観する必要はありません。それは、あなたの会社がより良く変わるための重要な「気づき」です。

何から手をつければ良いか分からない、自社の課題を客観的に分析したい、という場合は、プロセスコアにご相談ください。

皆様の会社が、社員から心から「選ばれる会社」になるためのお手伝いをさせていただきます。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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はじめに

ご存知のとおり日本は地震や台風、豪雨などの自然災害が多い国であり、毎年各地で大きな被害が発生しています。最近でも地元熊本で大規模な地震が発生し大きな被害がでております。

企業には、今後高い確率で災害が発生することを見据えた事前の備えと適切な労務管理がこれまで以上に求められると思います。

災害発生時には従業員の安全確保が最優先となりますが、休業手当や賃金の取扱い、労災保険、安全配慮義務など、企業として適切に対応しなければならない事項が数多くあります。

今回は、自然災害への事前準備と災害発生時の労務管理について解説します。

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まずは平時からの備えが重要

会社には、従業員が安全に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります。そのため、災害が発生した際の対応方法をあらかじめ定めたマニュアルの作成や、緊急時の連絡体制の整備、防災用品の備蓄などを平常時から準備しておくことが重要です。

また、自社の防災対策が十分であるかを定期的に確認し、防災チェックシートなどを活用して改善を進めることも有効です。

防災対策チェックシート.pdf

「事業継続計画(BCP)と体制の整備」「オフィス・事業所の安全対策」「防災備蓄品」の3つのチェックシートを掲載しております。是非自社の整備チェックにお役立てください。

災害時の休業手当の考え方

災害発生時には、企業活動を継続することも大切ですが、それ以上に従業員の安全確保を最優先に考えなければなりません。災害の状況によっては、出社を見合わせて自宅待機や休業とする判断が必要になることもあります。その際に混乱しないためにも、休業手当の考え方をあらかじめ理解しておくことが重要です。

自然災害によって事業を休止せざるを得ない場合、休業手当を支払う必要があるかどうかは、「不可抗力」による休業かどうかで判断されます。

不可抗力と認められるためには、次の2つの条件を満たす必要があります。

例えば、地震や台風などにより事業所が被災し営業できない場合や、大規模停電などが原因で操業できない場合は、休業手当の支払い義務が発生しない可能性があります。

休業手当の計算は平均賃金の60%以上を支払う必要がございます。計算方法は下記の資料をご確認下さい。

 参考|厚生労働省『休業手当(平均賃金の60%以上)の計算方法』

一方で、企業が休業を命じておらず、従業員自身の判断で出勤を見合わせた場合は、原則として「ノーワーク・ノーペイ」の考え方が適用され、勤務がなかった日、時間に対しての給与は控除することが認められています。

ケース別に見る賃金の取扱い

ケース① 会社が被災し営業できない場合

会社の建物が被災し営業ができなくなった場合、不可抗力による休業であれば賃金や休業手当の支払いは不要となる場合があります。

ただし、会社の経営判断による休業である場合は、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。

また、従業員自身も被災して就労できない場合は、従業員側の事情によるため、賃金や休業手当の支払い義務はありません。有給休暇を取得するかどうかによって取扱いは異なります。

ケース② 悪天候で現場作業が中止になった場合

悪天候が事前に予測できるケースでは、「不可抗力」ではなく会社側の経営管理上の理由と判断される場合が多く、休業手当の支払いが必要となる可能性があります。

このような場合は、あらかじめ振替休日や代休を設定するなどの対応を検討するとよいでしょう。

ケース③ 安全のため早めに帰宅させた場合

台風接近などにより会社が安全確保を目的として早めの帰宅を指示した場合は、「会社都合」と判断され、休業手当の支払が必要になります。

ケース④ 従業員が公共交通機関や自宅災害など止む得ない理由のため出勤しないケース

この場合、従業員本人に責任はありません。

法律上必ず有給扱いにしなければならないとは書かれていませんが、安易な欠勤控除は従業員との信頼関係を損ねます。有給休暇を消化してもらうか、災害休暇や特別休暇※で通常の賃金を支払うことも可能です。

※ただし、お休みが長期化すると、出勤している従業員の立場からすると不公平感を感じることがあるため、取り扱いに注意しなければいけません。

また、災害時にほとんどの従業員を安全確保の為、休ませるが一部の管理職や職種の従業員だけ出勤させた場合、危険手当や特別手当を支給して出勤してくれたことに報酬で応える配慮が必要なケースもあります。

実際には業種や職種、職場の人員体制、長期化するかしないかなどケースバイケースで対応を検討する必要があります。

また、就業規則に始業・終業時間の繰上げ・繰下げの規定がある場合は、それを活用することも可能です。さらに、在宅勤務への切り替えなども有効な対応策となります。

自然災害と労災保険

自然災害によるケガであっても、業務との関連性が認められれば業務災害として労災保険の対象となります。

例えば、勤務中に地震が発生し建物倒壊などにより負傷した場合は、通常は業務災害として認められる可能性があります。

また、通常の通勤経路で自然災害に遭った場合には通勤災害となる可能性があります。

ただし、会社が出勤停止を命じていたにもかかわらず、自ら出勤して被災した場合には、通勤災害と認められない可能性もあるため注意が必要です。

会社の安全配慮義務

労災保険から給付が受けられる場合でも、会社の責任がなくなるわけではありません。

会社に安全配慮義務違反が認められると、不足する損害について民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。

安全配慮義務違反が問われる内容として、

などが判断されます。 近年では自然災害の予測精度も向上しているため、「予見できなかった」という主張が認められにくいケースもあります。災害が予想される際には、安全を最優先とした対応が求められます。

非常時払い制度

労働基準法では、災害などの非常時に従業員から請求があった場合には、給与支払日前であっても、すでに働いた分の給与を支払わなければならない「非常時払い」が定められています。

対象となるのは、

などの場合です。

なお、将来働く予定分の給与を前借りさせる義務まではありません。

災害時の時間外・休日労働

災害発生後であっても、原則として36協定で定めた時間外・休日労働の上限を守る必要があります。

ただし、ライフラインの復旧や人命救助など、災害対応のために臨時の必要がある場合には、労働基準監督署長の許可(緊急時は事後届出)により上限を超えた時間外労働が認められることがあります。

一方で、「単に業務が忙しい」という理由だけでは認められません。

参考|厚生労働省『災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等について』

保険料の納付猶予制度

自然災害によって経営が大きな影響を受け、社会保険料や労働保険料の納付が困難になった場合には、一定の要件を満たすことで納付猶予制度を利用できる場合があります。

利用するためには企業からの申請が必要となるため、被災時には早めに年金事務所や労働局などへ相談することが大切です。

【社会保険料】
 参考|日本年金機構『厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)』

【労働保険料】
 参考|厚生労働省『労働保険料等を一時に納付できない方のための猶予制度について』

助成金紹介

企業側は、自然災害などの影響で事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員に支払う休業手当の一部を国から助成してもらう「雇用調整助成金」という制度を利用できる可能性があります。 この制度は、会社が休業手当を支払う際の負担を軽減し、雇用維持を支援するものです。

今回の令和8年熊本地震でも政府の方針発表で、「雇用調整助成金」による「雇用維持支援」の強化が示されていますので今後、厚生労働省より制度が公表される可能性が高いといえます。情報公開され次第、お知らせしてまいりますので被災された事業所様はぜひご確認いただきご検討下さい。

※令和8年8月24日時点最新情報は以下となります。
 参照|令和8年熊本地震に伴う雇用調整助成金の特例を実施します

まとめ

自然災害はいつ発生するかわかりません。そのため、企業に求められるのは「災害が起きてから対応する」ことではなく、「災害が起きる前から備えておく」ことが肝要です。

緊急時の対応マニュアルの整備や連絡体制の構築、就業規則の見直しなど、日頃から準備を進めておくことで、従業員の安全を守るだけでなく、企業としてのリスクを最小限に抑えることができます。

万一の事態にも冷静かつ適切に対応できるよう、この機会に自社の防災対策や労務管理体制を改めて確認し、安心して働ける職場づくりを進めていきましょう。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

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直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい。

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1.補助金上限を引上げ 規模拡大をめざす中小企業を支援(7/10)


中小企業庁は2027年度より、「新規事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の上限を、現行の9,000万円から1億円程度に引き上げる方針。売上高1億円以上10億円未満の企業が対象で、経営者は売上高10億円を目標に掲げる「10億宣言」をする必要がある。今冬にも要綱を公表し、27年度から受付を開始する。

2.2025年度の個人情報漏洩が過去2番目の多さに(7/8)


個人情報委員会が7日に公表したところによると、2025年度における民間での個人情報の漏洩事案は1万7,139件(前年比8%減)となり、社労士向けシステムの大規模な漏洩事案があった2024年度の1万9,056件に次いで多かったことがわかった。このうち22%(3,822件)は、従業員による情報の持出しやサイバー攻撃など不正目的の情報漏洩だった可能性がある事案だった。

3.保険業界で募集人の「社保逃れ」 社労士も関与か(7/16)


生保・損保を扱う販売代理店で「社保逃れ」が横行している疑いが浮上した。
報道によれば、中堅販売代理店「オールワンエージェント」では保険募集人の報酬を固定給と歩合給に分け、歩合給を社会保険料の算定額に含めていなかった疑いがあり、8月以降、方式を改める。業界団体はこれを潜脱行為と認め、会員各社に12月を期限に自主点検を要請した。一部の社労士がスキーム考案に関与したという証言があるほか、別の代理店でも社保逃れの疑いがある。

4.最低賃金の目安 55円引き上げ1,176円で決着(7/29)


厚生労働省の中央最低賃金審議会は28日、2026年度の最低賃金(時給)の引上げ額の目安を、全国加重平均で55円(4.9%)増の1,176円と決めた。増加額は過去最高だった25年度の63円(6.0%)を下回ったが、上げ幅は過去2番目に大きかった。今後は、都道府県ごとの地方審議会が目安を参考に最終的な金額を決定し、10月以降に順次適用される。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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はじめに

「求人を出しても、以前ほど応募が来ない」

「やっと採用できても、数ヶ月で辞めてしまう」

――こうした声を、お仕事を通じて日々熊本県内の中小企業の経営者の方々からお聞きします。

多くの経営者・人事担当者の方は、そのうち「どうにかなるだろう」と楽観的に捉えられていて、そこまで危機感を持たれていない方が多いように感じています。しかし、データを見ていくと、これは一時的な現象ではなく、今後20年、30年と続いていく構造的な変化の入り口に過ぎないことが分かります。

本コラムでは、熊本県の人口動態と有効求人倍率の推移というデータをもとに、これから予想される2040年に向けた企業環境の変化のシナリオと、今から着手すべき人材戦略について解説します。

将来を楽観的にみるのではなく、現実を見据えて一早くアクションを起こすことが有効策と考えます。

ぜひお読みください。

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1データで見る熊本の未来 ― 労働力人口はこれだけ減る

ご存知の方も多いと思いますが、熊本県から発表された、「県内人口ヴィジョン」によれば、生産年齢人口(15〜64歳)は2020年の96.0万人から2040年には77.4万人まで、約19%減少すると推計されています。

総人口も同期間で約13%減少する見込みです。

グラフ:平成27年熊本県 人口ヴィジョンより

また、注意しないといけないデータは、熊本県が全国よりも約10年早く人口減少局面に入っているという事実です。

熊本県の有効求人倍率をみると、2016年の熊本地震後は復興需要により急上昇し、2018年前後には1.6倍台まで達しました。その後、2020年のコロナ禍で一時1.2倍前後まで急落しましたが、コロナ後の回復とTSMC(JASM)進出に伴う建設・製造需要により、2022年には再び1.4倍台まで上昇しています。

全国レベルで「働き手が足りない」という危機感が広がる頃には、熊本ではすでにその状況が常態化している――そう考えるべきでしょう。

実際、2024年には熊本県の総人口が48年ぶりに170万人を割り込み、統計上の推計とほぼ同じペースで減少が進行していることが確認されています。

2040年に向けた未来予測 選ばれる企業と淘汰される企業

従来の「求人票・求人広告誌を出しておけば人が応募にくる」状況は物理的に二度と訪れないと考えていた方が良いと思います。

今後は長期トレンドとして「働き手の絶対数が減り続ける市場」を前提に採用戦略を組み立てる必要があります。

絶対数が減り続ける市場を前提とした場合、従来の「待ち」の採用活動から「攻め」の採用活動へシフトチェンジしていく必要があります。

そして、今後の予想シナリオですが、おそらく2030年には、「給与」だけでなく、自社の「理念」、「ヴィジョン」、「教育環境」、「職場の仲間」、「キャリア形成の支援制度や福利厚生制度」を発信できる企業に求職者が集中し、従来型の「待ち」の企業は応募ゼロが常態化すると予想します。

2035年には、採用した人材が定着するための職場での幸福度を高める施策への投資を積極的に行った企業が定着率と高収益を実現していくことでしょう。上辺だけでなく、本気で社員の満足度や幸福度を高めることに注力した企業とそうでない企業で業績に歴然とした差がでる時期に入っていきます。

2040年には、熊本県内については人口がついに150万人へ。
既存の社員の高年齢化も相まって投資を怠った企業は事業縮小や継続不可能となり、淘汰されると予想します。

今から着手すべき人材戦略 ― 多角的な視点での仕組みや制度づくりへの「投資」

厳しい予測をお伝えしましたが、時間が早いか遅いかの前後差がある程度で将来間違いなく起こりえる「現実」だと私は捉えています。

繰り返しになりますが、真剣に求職者・在職者から魅力ある長く働きたい企業と思わせる必要があります。

一昔前だったら、もしかしたら社員の満足度や幸福度を上げるといったことは「綺麗事」と捉えられた時代だったかもしれませんが、それが経済効果性に直結する時代です。企業が提供する商品・サービスの恩恵を受ける顧客や取引先、そして従業員の幸福をトータルで実現する高質な社会にシフトしていくといっても過言ではありません。

そのためにはまず「投資」が不可欠です。

投資といってもお金を出すだけでなく、時間も人も、かなりのリソースを中長期的に割いて、企業の魅力を発信し続けること、そして中小企業では給与面だけで差別化するのは現実的に難しい側面もあり、「育成」や「福利厚生制度」、「評価制度」、「処遇制度」、「配置」「人間関係づくり」といった多角的な視点での仕組みや制度づくりが必要になってきます。

弊所でも、今後クライアント企業様の組織や職場環境の魅力を高めるサービスコンテンツや情報発信にもより注力して、お客様にご提案できるよう努めてまいります。

今回のコラムは以上です。お読み頂き、ありがとうございます。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

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1.2025年の職場での熱中症死傷者数 過去最多(6/7)


厚生労働省は、7日までに2025年の職場での熱中症死傷者数(推定値)が過去最多の1,803人(前年比546人増)に上ったことを公表した。うち死亡者数は19人(同12人減)だった。業種別の死傷者数は、製造業が365人で最も多く、建設業292人、商業237人と続いた。

2.マイナ保険証 4月の利用率68%(6/19)


厚生労働省は18日、マイナ保険証を使い医療機関を受診した人が4月時点で68.15%だったと発表した。マイナ保険証への切替え後、従来の保険証でも保険診療が受けられる暫定措置は7月末で終了するため、マイナ保険証か資格確認書への切替えが必要となる。
総務省によればマイナンバーカードの保有率は82.7%(4月末時点)。

3.最低賃金新方針 発効遅れに理由明示要求(6/24)


厚生労働省は、最低賃金の発効日について新たな方針を23日の中央最低賃金審議会で示した。
現行法は各都道府県での金額決定の官報公示から30日後の適用を定めるほか、30日を超えて別途日付を指定することもできる。新方針は、この30日を超えて日付を定める場合に、各県の審議会に理由を明らかにするよう求める。昨年度は6県で発効日が年をまたぎ、同省は、早期の賃上げを促進する必要があると判断した。また、引上げ額に関しても法定3要素のデータを総合的に考慮して地域別最低賃金額を決定すべきで、目安額に大幅な上乗せをするのであれば、理由を明らかにすべきとの見解を示した。

4.現役世代の社保負担率引下げへ 目標設定を検討(6/25)


政府の経済財政諮問会議にて、25日、現役世代が負担する社会保険料を引き下げる方針を実現するための、財政制度等審議会の建議の方向が示された。社会保障改革を着実に実行し、社会保障負担率を着実に引き下げていくことが必要として、具体的な数値目標と年限を明確に掲げるとともに、その達成に向けた具体的な改革項目について、工程表を改めて作成すべき、とされた。7月中に決める骨太の方針に盛り込む。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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はじめに

今回のコラムは、令和8年10月1日に施行が予定されている同一労働同一賃金の新ガイドラインについて解説します。

賞与や退職金など、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の待遇差について、これまで以上に明確な説明義務(支給の目的・職務内容や配置転換の範囲等)が求められます。

待遇差が「不合理」であると判断された場合には、労働者から損害賠償請求を受けるリスクもあります。

実際に企業が賠償責任を負うケースもあり、企業のブランドイメージや信頼性にも深刻な影響を及ぼしかねません。

知らないでは済まされない大きな改正ポイントです。

中小企業の経営者・人事担当者、ぜひご確認ください。

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1.同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金とは、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者、派遣労働者との間で、不合理な待遇差を設けることを禁止する考え方です。

2020年4月(中小企業は2021年4月)から本格施行されたパートタイム・有期雇用労働法により、「基本給」「賞与」「各種手当」「福利厚生」などについて、雇用形態のみを理由とした不合理な格差は禁止されています。

重要なのは「同じ賃金にしなければならない」という制度ではなく、「待遇差がある場合、その差について合理的な説明ができること」が求められる制度である点です。

企業には、パート・有期雇用労働者から説明を求められた際に、その待遇差の理由を説明する義務があります。

2.これまでの経緯

働き方改革関連法により、2020年から同一労働同一賃金制度がスタートしました。

その後、

などの最高裁判決が相次いで示され、企業の待遇差の考え方が整理されてきました。

しかし、現行ガイドラインでは裁判例で示された考え方が十分に反映されていない部分もありました。

そこで厚生労働省は、令和8年10月1日施行に向けてガイドラインを改正し、裁判例を踏まえた具体的な判断基準を追加しました。

3.2026年10月改正の主なポイント

今回の改正の特徴は、「均衡待遇」の考え方がより具体化されたことです。

特に注目すべき点は次の3つです。

4.裁判例を踏まえた記載の見直し

では、具体的にガイドラインの変更点と対策を解説していきます。

特に賞与退職金については、対策を取らなければいけない企業が多いことが予想されますので、改正ポイントと対策を詳しく解説します。

1)賞与【記載の充実】

賞与の性質(労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働意欲の向上等)がパート・有期雇用労働者にも妥当するにもかかわらず、

 従って、① 職務内容や責任の違い、配転範囲の違いに応じた均衡のとれた金額を支給する、または ② 基本給を高く設定するなどの代替措置のいずれかを講じることが、改正ガイドラインへの対策になります。

ただし、以下の表の通り、近年の同一労働同一賃金に関する裁判は、賞与不支給は不合理でないと判断する判決もあります。

裁判所は、賞与について会社の裁量を広く認め、支払うべき賞与額は企業が決めるべきと考えているようです。

事件名賞与の待遇差が不合理ではないと判断された主な理由
長澤運輸事件
(最高裁平成30年6月1日)
定年後再雇用者と正社員との待遇差が争われた事案。
最高裁は、定年退職により退職金を受領していることや、再雇用後の職務内容・責任が一定程度軽減されていることを考慮し、賞与を含む一部待遇差については不合理とまではいえないと判断した。
定年後再雇用という特殊事情が重視された事例である。
メトロコマース事件
(最高裁令和2年10月13日)
売店業務に従事する契約社員と正社員との待遇差が争われた。
賞与については直接争点ではなかったが、正社員には将来の配置転換や管理業務への期待があり、長期的人材活用を前提とした人事制度が存在することが考慮された。
そのため、雇用区分の違いに基づく一定の待遇差は直ちに不合理とはいえないとの考え方が示された。
大阪医科薬科大学事件
(最高裁令和2年10月13日)
アルバイト職員に賞与を支給しなかったことが争われた。
最高裁は、大学の賞与には業績貢献だけでなく、正職員としての継続的な勤務や将来への期待、人材確保・定着などの目的が含まれると認定。
そのうえで、アルバイト職員は職務内容や責任、配置転換の範囲などが大きく異なるため、不支給は不合理ではないと判断した。
日本郵便事件
(最高裁令和2年10月15日)
期間雇用社員と正社員との待遇差が争われた事件。
扶養手当や年末年始勤務手当などは不合理と判断された一方、賞与については最高裁の判断対象とならず差戻しとなった。
ただし下級審では、正社員の賞与には長期雇用を前提とした人材確保・定着の目的があることが考慮され、一定の待遇差を認める方向で検討されていた。

待遇差を設けた場合の説明例としては、

「正社員は、欠員がある時の緊急対応、時間外や休日のトラブル対応、クレーム対応・処理など、広範囲の職務、包括的な対応を行う義務を負っています。
パート・有期雇用者は、契約で定められた限定された業務を行い、トラブル対応やクレーム対応処理、時間外・休日や緊急呼び出しに対応する義務を負っていません。
貢献度の質が異なりますので、その対価である賞与に差があります。」

等が考えられます。

実務的には非正規社員に対しても、一定額(例:数万円など)を支給する制度を設けることが、リスクヘッジとなります。

2)退職金【新規追加】

退職金の項目が新設され、退職金の性質(労務の対価の後払い、功労報償等)が、パート・有期雇用者にも妥当するにもかかわらず、

従って、①職務内容や責任の違い、配転範囲の違いに応じた均衡のとれた金額を支給する、または②基本給を高く設定するなどの代替措置のいずれかを講じることが改正ガイドラインへの対策になります。

以下の表の判例から今後の考えられる対策を紹介すると、改正ガイドラインの根拠となったメトロコマース事件(最三小判・令2.10.13)では、「正社員」と「契約社員B」を比較して、「正社員」は欠勤者が出た時の代務業務や売上げ向上の指導、トラブル処理やエリアマネージャー業務に従事するのに対し、「契約社員B」は売店業務に専従し、代務業務を行わず、エリアマネージャー業務に従事することもなく、業務場所の変更命令はあっても、業務内容の変更はないこと、「契約社員B」に正社員登用制度があり、相当数の実績があったことなどが考慮され、賞与や退職金の不支給が不合理とされていません。

そのため、不支給の理由が適切に説明できれば、対策になり得るのではないかと考えます。

待遇差を設けた場合の説明の例として

「退職金制度は、長期雇用を前提に、広域の転勤や職種変更の人事異動に従い、多様な職務経験により能力向上を図り会社へ貢献した方への功労報償です。
パート・有期雇用の方は勤務地・職務内容が契約により限定されているため、このような人事異動は従う義務はありません。
このような「人財活用の仕組み」の違いにより、退職金は正社員に限定しています」

等が考えられます。

以上のような対策が考えられますが、昨今の人手不足の状況を鑑みると、パート・有期雇用者のうち、長期間勤務者には退職慰労金を支給するといった検討策も一つだと思います。

以下に退職金規定のサンプルを掲載します。

(退職金規程例)

「会社は、パート・契約社員で勤続期間が3年を超えるものに対して、退職時に功労報償としての退職慰労金を支給する。支給額は、勤続年数、職務の内容その他の事情を考慮し、個別に決定する。」

事件名退職金の待遇差が不合理ではないと判断された主な理由
メトロコマース事件
(最高裁令和2年10月13日)
地下鉄駅構内の売店で勤務する有期契約社員に退職金を支給しなかったことが争われた事案です。
最高裁は、退職金には単なる労務の対価の後払いだけでなく、長期間の勤続に対する功労報償や、将来にわたる継続勤務への期待、人材の確保・定着といった複合的な目的が含まれると判断しました。
その上で、契約社員は更新を繰り返していたものの、正社員とは人事制度上の位置付けが異なり、配置転換や職務変更の範囲が限定されていたこと、長期的人材活用の仕組みの中核を担う立場ではなかったことなどを考慮し、退職金を支給しないことは直ちに不合理とはいえないと結論付けました。

3)無事故手当【新規追加】

※通常の労働者と業務の内容が同一の非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給することが求められます。

安全運転や事故防止を目的とした手当であれば、雇用形態による差は認められにくくなります。

4)家族手当【新規追加】

労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給することが求められます。

扶養家族の生活補助という目的は雇用形態に左右されないためです。

5)住宅手当【新規追加】

住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給することが求められます。

転勤補償目的の住宅手当は、同様の転勤がある労働者には同様の支給が必要です。

6)病気休職・休暇【記載の充実】

労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、通常の労働者と同一の病気休職・休暇(療養への専念を目的とした休暇に限る)期間に係る給与を保障することが求められます。

長期勤務が見込まれる従業員については、療養支援の観点から同様の取扱いが求められます。

7)夏季冬季休暇【新規追加】

非正規雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与することが求められます。

正社員のみ夏季休暇を付与する制度は見直しが必要となる可能性があります。

8)褒賞【新規追加】

褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するものについて、通常の労働者と同一の期間勤続した非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与することが求められます。

永年勤続表彰などは、勤続年数が同じであれば同様の取扱いが求められます。

 9)雇い入れ時の労働条件明示事項の追加

令和8年10月以降は、採用時の労働条件通知書に、

「通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる」

旨の記載が必要になります。

5.中小企業の実務対応のステップ

では、具体的に中小企業が今回の同一労働同一賃金のガイドラインの改定に合わせてどのような対応を進めていくべきか?ステップを解説します。

STEP1 待遇一覧表を作成する

まずは正社員とパート・契約社員の待遇を一覧化します。

を整理しましょう。

STEP2 待遇の目的を明文化する

なぜ支給しているのかを整理します。

例えば、

などです。

STEP3 説明できるか確認する

なぜ正社員だけなのか

を第三者に説明できるか確認します。

正社員と非正規社員との職務内容や責任、配置転換の範囲などの違いについて説明が難しいものは見直し候補です。

STEP4 就業規則・賃金規程を整備する

待遇の目的と支給要件を明文化します。

裁判になった場合、規程の記載内容が重要な証拠になります。

STEP5 採用時の労働条件通知書を改訂・従業員への説明

令和8年10月までに新様式へ切り替えましょう。

そして制度改定が行われた場合は従業員に説明が必要になります。

まとめ

今回の改正は、「賃金格差是正」だけではなく、「待遇差を合理的に説明できる制度づくり」を企業に求める内容となっています。

特に中小企業では、長年の慣行で運用している手当や福利厚生制度が多く存在します。しかし、「昔からそうしている」という理由だけでは説明責任を果たすことはできません。

令和8年10月の施行までに、

を進めることが重要です。

今後は「正社員だから支給する」という発想から、「その待遇の目的に照らして誰に支給すべきか」という発想への転換が求められます。

中小企業でここまでの対応は難しい⋯とネガティブに捉えがちかもしれませんが、早めの点検と見直しが今後の労務トラブルの未然予防と人材採用や確保面でプラスの効果を生み出す「きっかけ」になると考えて頂ければと思います。

同一労働同一賃金の改定事項の詳細を確認されたい方は、厚生労働省の「同一労働同一賃金特集ページ」を確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

今回のコラムは以上です。お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

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直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい。

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1.4月の企業倒産 物価高倒産が過去3番目の高水準(5/13)


東京商工リサーチが13日に公表した4月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は、負債総額が1,118億9,600万円(前年同月比8.8%増)で件数が883件(同6.6%増)だった。負債総額は2カ月連続、倒産件数は5カ月連続で前年同月を上回った。
人件費や金利などの上昇によるコスト負担によって資金繰りが苦しくなる企業が増加し、物価高倒産は85件(前年同月56件)で過去3番目の高水準となった一方、人手不足関連の倒産は33件(前年同月36件)と減少した。

2.外国人雇用指針が改正(5/15)


厚生労働省は外国人雇用に関する企業向けの指針を改正する。15日の労働政策審議会の分科会で同省の改正案が了承された。外国人労働者の雇入れや離職の際に氏名や在留資格などを国に届け出なかった場合の罰則(30万円以下の罰金)適用などが盛り込まれ、在留カードの確認には読取り専用アプリの利用を推奨することも示された。6月14日から新指針を順次適用する。

3.物価高・賃上げ対応で初診料57円増に 診療報酬改定(6/1)


医療機関に対する診療報酬が1日、改定された。診療報酬は原則2年に1度改定され、今回は物価や人件費上昇による医療機関の経営悪化に対応するため、医師や看護師らの人件費に回る「本体」部分を3.09%引き上げた。3%超となるのは30年ぶり。また、物価高に対応するため、初診時、再診時は20円の物価対応料も新設された。患者の窓口負担は3割の場合、初診で計57円、再診で計21円の値上げとなる。

4.2027年春卒業予定の内定率すでに7割超(6/1)


2027年春卒業予定の大学生らを対象にした企業の採用選考が1日、解禁された。
就職情報会社の調査によれば、すでに就活生の76%が内々定を得るなど早期化が進んでいる。内閣府の調査では就活期間の長期化もうかがわれ、26年卒は「9カ月以上」が47%で最多だった。政府は昨年末、29年卒のルールについて大学や経済界との議論の上で見直しの検討を進めることを決定している。

5.人材派遣5社に公取委の立入り検査 カルテル疑い(6/2)


公正取引委員会は2日、労働者の派遣先企業との価格交渉前にカルテルを結んだ疑いがあるとして、人材派遣大手5社を独占禁止法違反の疑いで立入り検査した。
派遣会社が対象になるのは初めて。立ち入り検査を受けたのは、「パーソルテンプスタッフ」、「スタッフサービス」、「リクルートスタッフィング」、「マンパワーグループ」、「アデコ」の5社。2023年4月以降、一般事務の派遣料金を
協議の上引き上げ、一部は派遣社員の賃金に充てられたが、多くは会社のマージンとなったとみている。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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近年、気候変動の影響により猛暑日が増加し、職場における熱中症による労働災害が大きな社会課題となっています。

特に熱中症による死亡災害の多くは、初期症状の見逃しや対応の遅れが原因とされており、企業にはこれまで以上に適切な予防と対応が求められています。

こうした状況を受け、2025年6月に改正労働安全衛生規則が施行され、一定の高温環境下での熱中症対策が事業者の法的義務となりました。

今回は、熱中症対策の基本知識から、重要な予防策である「暑熱順化」、そして企業が取り組むべき具体的な対応について解説します。

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■ 熱中症とは

熱中症とは、高温多湿な環境下で体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をいいます。

主な症状として、

などが挙げられます。

症状が進行すると命に関わる危険もあるため、早期発見と迅速な対応が極めて重要です。

重症度分類の見直し

2026年からは、厚生労働省のガイドラインにおいて熱中症の重症度分類が見直されました。

これまでのⅠ度~Ⅲ度から、Ⅰ度~Ⅳ度へと変更されています。

Ⅰ度の段階で適切な処置を行えば回復が期待できますが、症状が改善しない場合やⅡ度以上の症状が見られる場合は、速やかに医療機関へ搬送する必要があります。

参考|厚生労働省『働く人の今すぐ使える熱中症ガイド』P7

■ WBGT(暑さ指数)について

熱中症対策というと気温ばかりに注目しがちですが、実際には湿度も非常に大きな影響を与えます。

湿度が高い環境では汗が蒸発しにくくなり、体温調節が難しくなるためです。

さらに、輻射熱(地面や建物、体から出る熱)や風(気流)も熱中症に関係してきます。

これらを総合的に評価する指標が「WBGT(暑さ指数)」です。

WBGTは熱中症予防のための重要な判断基準として活用されており、職場だけでなくスポーツや日常生活でも利用されています。

たとえば、運動については、暑さ指数31以上で「運動は原則中止」、28以上31未満で「厳重警戒(激しい運動は中止)」などの指針が設けられています。

暑さ指数の実況と予測は、環境省の「熱中症予防情報サイト」で確認することができます。

熱中症予防情報サイト(環境省)| http://www.wbgt.env.go.jp

暑さ指数が高いほど熱中症の危険性は高まるため、現場では気温だけでなくWBGT値を確認する習慣をつけることが大切です。

■ 真夏だけではない熱中症リスク

熱中症による労働災害は8月だけでなく、5月下旬から6月にかけても増加する傾向があります。

その理由として挙げられるのが「暑熱順化不足」です。

暑熱順化とは

暑熱順化とは、身体が暑さに慣れることを指します。
暑さに慣れていない状態では、

といった状態になり、比較的低いWBGT値でも熱中症を発症する危険があります。

そのため、本格的な夏を迎える前から暑熱順化に取り組むことが重要です。

■ 暑熱順化の進め方

① 7日以上かけて段階的に行う

暑熱順化は、最低でも7日間、できれば2週間程度かけて行うことが推奨されています。

特に新入社員や異動者などは、他の従業員と同じ作業量をいきなり与えるのではなく、段階的に負荷を高めることが必要です。

② 一度慣れても失われる

暑熱環境での作業を中断すると、暑熱順化は徐々に失われます

一般的には、

とされています。

ゴールデンウィークや夏季休暇など長期休暇明けは、ベテラン従業員であっても注意が必要です。

休憩時間を増やすなど、再順化を意識した対応が求められます。

③ 日常生活でできる暑熱順化

暑熱順化のポイントは「適切に汗をかくことです。

入浴や運動を継続することで、暑さに対応しやすい身体づくりにつながります。

近年は9月頃まで暑さが続くことも多いため、企業としても従業員へ継続的な声掛けを行うことが重要です。

参考|厚生労働省『働く人の今すぐ使える熱中症ガイド』P85 例

■ 義務化された熱中症対策

2025年6月1日から、以下の条件に該当する作業では熱中症対策が義務化されています。

対象となる作業

「熱中症を生ずるおそれのある作業(WBGT 28℃以上または気温31度以上の環境下で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業)」

■ 企業が整備すべき2つの体制

(出典)厚生労働省『職場における熱中症対策の強化について』P4(一部抜粋して掲載)

① 報告体制の整備

熱中症が疑われる従業員を発見した際に、誰へ、どのように報告するのかを明確にしておく必要があります。

また、その体制を作業開始前に整備し、関係者全員へ周知しなければなりません。

② 対応手順の作成

熱中症発生時の対応フローを定めておくことが必要です。

①同様に作業が行われる前に手順を作成し、関係者に周知しなければなりません。

企業が必要な措置を講じない場合、法令違反として罰則の対象となる可能性があります。

■ 熱中症リスク評価のポイント

厚生労働省が2026年に公表したガイドラインでは、単にWBGT値を測定するだけでなく、現場の実態を踏まえたリスク評価が求められています。

参考|厚生労働省『職場における熱中症防止のためのガイドライン』

熱放散を妨げる要因の確認

熱産生を高める要因の確認

■ 評価方法と着衣補正について

熱中症リスク評価では、WBGT値に「着衣補正値」を加えて判断します。

(出典)厚生労働省『職場における熱中症防止のためのガイドライン 表1-2衣類の組合せによりWBGT値に加えるべき着衣補正値(℃-WBGT)』P20(一部抜粋して掲載)

例えば、フードなしの不透湿性つなぎ服を着用している場合、実測WBGTが20℃であっても評価上は30℃となるケースがあります。

つまり、

「測定値だけでは安全に見えても、実際には高リスク状態」

ということが起こり得るのです。

現場では測定値だけでなく、作業服や保護具も含めた総合的な評価が必要になります。

■ 現場での具体的予防アクション

制度を自社で特定した熱中症リスク要因と評価に基づき、実施すべき具体的なアクションを決定します。

自社の状況や熱中症リスクの評価を踏まえ、下記リンクの対策案の中から、自社に適したものを選択して実施することが望まれています。

■ 継続的な取り組みが職場を守る

熱中症対策は、単に夏の間だけ実施するものではありません。

などを継続的に実施することで、より安全な職場づくりにつながります。

■ 熱中症予防策のチェックリスト

どんなに対策を施しても熱中症のリスクをゼロにはできませんが、社員個人が正しい予防方法・知識を身につけて、普段から注意することが大切です。

熱中症予防のために

参考|necchushoyobou.pdf

以下、主な予防策をチェックリストにしたので、参考にしてください。

■ おわりに

熱中症は、正しい知識と事前の備えによって防ぐことができる災害です。

法令対応のためだけではなく、従業員の命と健康を守るという視点からも、企業には主体的な取り組みが求められています。

今年の夏を安全に乗り切るためにも、自社の対策状況を今一度確認し、現場に合った熱中症予防体制を整えていきましょう。

従業員が安心して働ける環境づくりこそが、企業の持続的な成長を支える大きな力となります。

今回のコラムは以上となります。

お読み頂きありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
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はじめに

今回のコラムは、経営者の方からご相談の多い組織づくりに関するテーマです。

中間管理職や専門部署を飛ばしてトップに相談が集中してしまい、必要以上に時間を取られてしまうというご相談に対して、どのような要因が考えられ、どのような対策が有効かをまとめました。

経営上のリソース(資源)として「人・モノ・金」とよく言われますが、特に人の部分は一番リソースが少ない部分です。

時間をどれだけ有効活用できるかが企業の成長を大きく左右します。

同様の問題を抱えられている経営者や管理職の方は是非ご一読ください。

では、想定される要因ごとに解説していきます。

目次 [閉じる]

要因1.指示命令系統のセクションごとに何をすべきかが曖昧

相談案件のテーマ事に、

現場担当者が直属上司へ相談や報告を上げないといけない案件なのか?

相談を受けた上司・専門部署の窓口がどこまで対応する必要があるのか?

経営層は何をしなければいけないのか?

それぞれのセクションごとの職務が明確になっていないケースが考えられます。

対策として、

現場担当者が上司や専門部署に上げてほしい案件とは、具体的にどのようなケースを指すのか?

上がってきた案件に対して、直属上司や専門部署が何を具体的にしないといけないのか?

経営層は何をするのか?

明文化しておくことが有効です。

以下の図は、エスカレーションフローといい、現場担当、直属上司、経営層それぞれの階層の職務を図解して流れを示した図です。

このように、チャート化するとより分かりやすくなります。

対策の効果性を高めるPoint1.

もっとも大切なことは全体への周知徹底です。

周知ができていないと、上記の基準を経営層と管理職しか知らなかったり、新人のスタッフへの伝達が出来ておらず、ルールを知らない人と知っている人が混在するといった問題が起こりがちです。

定期的にエスカレーションフローや階層ごとの職務内容の見直しを行ったり、新人教育カリキュラムの項目に追加するなどの整備が必要です。

対策の効果性を高めるPoint2.

相談を受ける上司などの管理職教育も大切です。

なぜなら、基準やルールを作っても運用の実効性を担保するのは中間に入る上司層のパフォーマンスにかかっているからです。

現場担当者から相談や報告が上がった時に上司が、

このような態度の場合、現場担当は上司への相談を避けます。

すると結局「社長の方が話しやすい」ので、経営層への判断業務の集中という現象が続きます。

教育内容として特に必要なのは、

などが上げられると思います。

ヒューマンスキルから実務的な専門スキルなど横断的なキャリア形成が求められます。

特に判断基準や優先順位は、実際に様々な事例を経験し、修羅場といえる問題にぶつかって乗り越えた経験から身についていくものも多いため、育成に年数がかかります。

また、管理職として適性を備えた人材の採用も重要になってきますので、早めに取り掛かることも大切です。

要因2.トップが直接相談にのりすぎている

中小企業で管理職を担える人材が不足していたり、充分に育っていない状況下では致し方ない部分もあるかと思いますが、ついつい経営者自身が現場担当者からの相談に直接乗ったり、良かれと思って「何かあったら直接言って」と従業員に伝えてしまい、管理職の機能を形骸化させる動きを取ってしまっていることが上げられます。

長期間この状態のままにしておくと、中間管理職がいつまでも育たず、社長等の経営層依存組織から脱却できません。さらに、経営層の疲弊・時間が取れない、かつ、現場や管理職が育たないといった悪循環に陥っていきます。

対策として、経営者から、企業の長期的な事業展開のヴィジョンや、それを踏まえてどのような組織にしていく必要があるのか、そのために管理職にどのような仕事や役割を担ってほしいのか要望を示すことが有効です。

必要なスキルや能力を身に着けていくための教育の機会、ポジションの業務整理と伝達、遂行する上での不安要素の抽出、評価基準や成果に応じて待遇を提示するなどの制度設計も先駆けて行っていく必要があります。

まとめ

今回取り上げた経営層への業務集中という課題は、部署が多岐に分かれており経営層と現場が物理的に離れた場所で仕事をしている大企業の場合は、指示命令系統を明確に区別せざるをえない環境となるため、起きづらい問題かもしれません。

しかし、従業員規模30人以下の中小企業では、課題に感じられているところも多いのではないかと思います。

経営者の方が「経営」を行いながら従業員の業務に直接指示を出したり、相談を受けることも多く、課題になりやすいテーマかと思います。

自社で見直す必要がないかぜひご検討ください。

今回のコラムは以上です。お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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