社会保険労務士@山下謙治

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========

1.25年度 中小企業の半数が賃上げ予定 日本商工会議所調査(12/30)
2.イデコ拡充 加入可能年齢等引上げ(12/27)
3.東京都 カスハラ条例の指針を公表(12/26)
4.公益通報制度見直し 企業に刑事罰方針(12/25)
5.イデコ、企業型DCの一時金 受取時の課税強化(12/25)

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1.25年度 中小企業の半数が賃上げ予定 日本商工会議所調査(12/30)

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日本商工会議所の調査(12月12日~18日に実施、全国1,932社が回答)によれば、2025年度に賃上げを予定している企業は計48.5%だった。「現時点では未定」は26.1%で、「賃上げは行わない予定」は25.3%。業績の改善を伴わない「防衛的な賃上げ」は7割弱を占めた。また、賃上げ予定企業の25年度の賞与を含む給与総額の引上げ率は「3%以上」が計48.3%だった。

2.イデコ拡充 加入可能年齢等引上げ(12/27)

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厚労省は26日、私的年金の拡充策をまとめた。イデコについて、加入可能年齢の上限の引上げ(65歳未満から70歳未満へ)、拠出限度額(月額)の引上げに加え、加入要件も緩和し、以前からイデコ等に加入している場合、60歳以上で保険料納付期間を満了した場合でもイデコに加入できるようにする。2025年の通常国会に関連法案を提出する。

3.東京都 カスハラ条例の指針を公表(12/26)

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東京都は25日、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例に基づく新たな指針を公表した。カスハラ行為の具体例や企業側対応のポイント等を示し、2025年4月から施行される条例の実効性を高めるねらい。

4.公益通報制度見直し 企業に刑事罰方針(12/25)

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24日、消費者庁の有識者検討会が公益通報制度見直しに向けた報告書をまとめた。事業者が公益通報を理由に通報者に解雇や懲戒処分をした場合に刑事罰を科すこと、通報者が不利益取扱いについて民事裁判を起こした場合の立証責任を通報者から事業者側に転換すること、指針で禁止されている「通報者捜し」を新たに法律で禁止することなどが盛り込まれた。今後、罰則の程度を詰め、通常国会に改正案を提出する方針。配置転換や嫌がらせは罰則の対象外とされ、今後の検討課題とされた。

5.イデコ、企業型DCの一時金 受取時の課税強化(12/25)

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自民・公明両党が20日にまとめた2025年度の税制改正大綱に、イデコや企業型DCの一時金を退職金よりも先に受け取る場合の控除を縮小する期間を、5年未満から10年未満へと拡大することが盛り込まれた。受取り時期の違い等で生じる差を是正する。2026年1月の一時金受取りから適用される。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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中小企業の経営者や人事担当者の方にとって、採用は事業活動において大きな課題のひとつではないでしょうか。

人口減少による働き手不足で、求人広告を出しても反応が薄い、応募が来ても採用に至らない、良い人材が長続きしないなど、事業活動をするうえで採用活動が最重要課題になっている企業も少なくないと考えます。

しかし、これらの課題は視点を少し変えるだけで、解決の糸口が掴める可能性があります。

そのヒントが採用に「マーケティング」という考え方を取り入れることです。

今回のコラムは、中小企業でも実践できる採用マーケティングの基本的な手法を解説します。

採用マーケティングとは何か?

一般的に、マーケティングとは「顧客の欲求を満たすために企業が行うあらゆる活動の総称」と言われています。
具体的には、「顧客のニーズを探るための市場調査・分析、それらにもとづく商品企画・開発、開発した商品を知ってもらうための広告宣伝活動・プロモーション等」がそれにあたります。

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方や手法を採用活動に応用するものです。

単に求人情報を発信するだけではなく、ターゲットとなる求職者を「顧客」と捉え、自社が提供できる価値をしっかりと伝えることを目的としています。

「自分たちは認知度が低い中小企業だから、人気のない業態だから」と諦めてはいけません。

実際に、医療クリニックがこの手法を取り入れて、成果を上げた事例をご紹介します。

医療クリニックの事例

ある医療クリニックが受付スタッフを募集していました。しかし、半年間求人を出し続けても応募がなく、院長は困り果てていました。そこで採用マーケティングの視点を取り入れることにしました。

求人情報を見直し、ホームページに、院長のインタビュー動画を掲載しました。

動画の内容は、「医師になることを志した理由や仕事していて感じるやりがい、仕事内容、どのような医療サービスや職場作りを目指しているか」を掲載しました。

それからまったく反応がなかったのが、問い合わせが入るようになり、動画掲載から2ヶ月後には新しいスタッフを採用することができました。

採用した求職者に、採用選考時になぜ他のクリニックの求人もある中で当クリニックに応募頂けたのか?という質問をしたら、動画をみて先生の親しみやすい人柄や仕事を楽しんで取り組まれている雰囲気や仕事内容を丁寧に説明されていることが、他のクリニックの求人と大きく違い、好印象を持って応募を決めたという回答だったそうです。

この事例から学べるのは、採用活動においても「ターゲットを理解し、魅力を伝える」ことの重要性です。

採用マーケティングの3つのステップ

採用マーケティングを成功させるには、次の3つのステップを踏むことが重要です。

1.分析:求職者を深く理解する

まず、ターゲットとなる求職者がどのような人たちなのかを徹底的に分析します。この段階では、求職者の年齢や性別、職業だけでなく、彼らの価値観や目指す未来、抱える悩み、不安などを具体的に掘り下げていきます。

この分析に役立つのが「ペルソナ分析」です。ペルソナとは、ターゲットとなる求職者をイメージした架空の人物像のことです。例えば、以下のような情報をもとにペルソナを作成します。

ペルソナを作ることで、求人情報に反映すべき要素が見えてきます。

具体的なイメージがわかない場合は、企業内で活躍してくれているスタッフに就職前の状況や応募にあたって何が決め手になったのかなどヒアリングを行うことが有効です。

2.戦略:自社の魅力を整理する

分析の結果に基づいて、求職者に伝えるべき自社の強みを整理します。この段階では、自社の魅力を単に羅列するのではなく、求職者にとっての「得られる変化」を意識することが大切です。

例えば、「若いスタッフが多く明るい雰囲気の職場」や「入社後の研修制度が充実しており、半年で業務に必要なスキルを習得できる」など、求職者が入社後にどのような成長や安心感を得られるかを具体的に伝えるようにしましょう。

3.施策:適切な方法で発信する

最後に、分析と戦略を踏まえた上で、適切なメディアや手法を選んで情報を発信します。

「とりあえず有名な求人サイトに掲載する」というアプローチではなく、ターゲットに最も効果的にリーチできる媒体を選びましょう。

例えば、SNSを活用する場合には、20代前半から30代前半の年代層がターゲットならInstagram、30代後半以降ならFacebookといったようにターゲットに絞って掲載する媒体を選定しましょう。

また、写真や動画を効果的に使うことで自社の雰囲気を伝えることができます。採用ページの訪問者数や滞在時間、応募数などのデータを活用して、施策の効果を分析し、改善を繰り返すことも重要です。

採用マーケティングを成功に導くポイント

求職者の目線で考える

採用活動では、つい「企業が伝えたいこと」を重視しがちです。

しかし、求職者が本当に知りたいのは、「この会社に入ったら自分にどんなメリットがあるのか」です。

例えば、「最先端の設備があります」と伝えるだけではなく、「この設備を使うことでスキルを磨き、キャリアアップができる」といった具体的な変化を示すと、求職者にとって魅力的に映ります。

成果を数値で把握する

マーケティングの世界と同じく、採用でも数値による分析が成功の鍵を握ります。

例えば、求人ページの閲覧数、求人媒体ごとの応募数、面接の通過率など、採用プロセスを細分化してデータを収集し、ボトルネックを特定しましょう。
改善ポイントが明確になれば、限られたリソースを効率的に活用できます。

現実的な事例を活用する

商品・サービスを実際に利用した「お客様の声」が訴求力が高いように、「先輩社員のインタビュー」を求人ページに掲載することも有効です。

例えば、「入社1年目で企画のリーダーを任されるようになった」や「家庭と仕事を両立しながらキャリアを築いている」などの事例を共有すると、求職者はその会社での未来をイメージしやすくなります。

小さな工夫で大きな成果を

採用活動は企業の未来を左右する重要な取り組みです。大企業のような認知度やブランド力はなくとも、知恵を絞り、採用マーケティングの視点を取り入れるだけで、成果に繋げることができます。

まずは、小さな改善から始めてみてはいかがでしょうか。

たとえば、求人情報の写真やメッセージを見直すだけでも、求職者に与える印象は大きく変わります。

また、SNSや採用ページのデータを活用し、効果を分析しながら少しずつ施策を改善していくことで、確実に採用活動の質が向上します。

まとめ

採用マーケティングは、「ターゲットの理解」、「自社の魅力の整理」、そして「効果的な情報発信」という3つのステップで構成されています。

この手法を取り入れることで、中小企業でも他企業に負けない採用力を身につけることができます。すぐに結果に繋がらなくても諦めず、試行錯誤を繰り返し、成果に結びつけていきましょう。

今回のコラムが少しでも経営者や人事担当者の皆さまが抱える採用の悩みの解消に少しでもつながることを願っています。

お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
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直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
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== 最近の動き(Topics)===========

1.働く高齢者の年金控除見直しへ(12/6)
2.厚生年金保険料肩代わり 「156万円未満」までを対象へ(12/6)
3.公益通報者への不利益処分 企業に立証責任を検討(12/5)
4.8年ぶりに雇用保険料率が引下げへ(12/4)
5.学生アルバイト「103万円の壁」引上げへ(12/2)
6.公的年金支給額 3年連続引上げ改定 民間試算(12/1)

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1.働く高齢者の年金控除見直しへ(12/6)

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政府・与党は、年金と給与の両方を受け取る高齢者の税負担を見直す調整に入った。
給与所得控除と公的年金等控除の2つが収入から差し引かれていることから、両方を受け取っている場合の控除額に上限を設ける方向で検討を進める。働く高齢者と現役世代や年金収入のみの高齢者との間で生じている不公平の是正につながる。
また、見直しを進めている在職老齢年金制度の収入基準が引き上げられると、給与のみを受け取る人との税負担の差は広がることから、同制度とのバランスも考慮して是正の仕組みを取り入れる。

2.厚生年金保険料肩代わり 「156万円未満」までを対象へ(12/6)

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厚生労働省は、短時間労働者の厚生年金保険料を労使合意により会社が多く負担できる特例制度について、対象を月収8.8万円以上13万円未満(年収換算106万円以上156万円未満)とし、2026年4月から導入する検討に入った。年収要件は2026年10月に撤廃し、企業規模要件は2027年10月に撤廃する案となっている。企業への負担軽減措置の検討も含め、10日の社会保障審議会年金部会に案を提示する。

3.公益通報者への不利益処分 企業に立証責任を検討(12/5)

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消費者庁の有識者検討会は4日、公益通報者保護制度の見直しに関する論点を整理
した。
(1)解雇や懲戒処分といった不利益な取扱いを受けた内部通報者が訴訟を起こした際、通報と処分の因果関係についての立証責任を事業者側に負わせることや、
(2)不利益処分をした個人や事業者に対して刑事罰を導入する案などが示された。
年内にも報告書をとりまとめる方針。

4.8年ぶりに雇用保険料率が引下げへ(12/4)

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厚生労働省は、2025年度の雇用保険料率を、8年ぶりに引き下げる方針。失業等給付の料率を下げる。近く労働政策審議会雇用保険部会に具体的な下げ幅を示す。
既に試算結果は示されており、反対意見は出ていない。

5.学生アルバイト「103万円の壁」引上げへ(12/2)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

政府・与党は、19歳から22歳の子を扶養する親の税負担が軽くなる「特定扶養控除」について、子の年収を103万円までとする条件を緩和する方針。「配偶者特別控除」が満額適用される年収150万円を念頭に検討する見通し。

6.公的年金支給額 3年連続引上げ改定 民間試算(12/1)

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2025年度の公的年金は3年連続で引上げ改定となり、マクロ経済スライドが発動される結果、改定率は1.9%増になるとの民間の試算結果が示された。名目手取り賃金変動率を2.2%、マクロ経済スライドによる調整率を0.3%と設定した。厚生労働省は、2025年1月に25年度の年金改定額を発表する。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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今回は、「評価制度」と「報酬レンジ※」とその説明の重要性について触れたいと思います。

というのも先日、お客様企業から、ある新人スタッフを採用した際のやりとりを伺って改めて大切なことだと考えさせられる機会があったからです。

※「報酬レンジ」とは一般的に、その職務に見合った給与の上限から下限の幅のこと

ここで言う職務とは、職務の遂行能力に応じたレベル(等級)やグレードと言い換えると馴染みやすいかもしれません。

例えば、1等級の給与レンジは月給18万円~24万円、2等級は24万円~28万円といった形で設定します。
ここでは月給で表現しましたが、年収を基準とする考え方もあります。
この「レンジ」は業界・職種・会社によってさまざまに設定されています。

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その新人スタッフは中途採用で、前職の退職理由を聞くと給与関係が原因だったそうです。

4年ほど在籍していたが毎年の昇給額が少なく、他の同期のメンバーより頑張って成果を出していても昇給額はほぼ一緒で、わずかな金額しか上がらず、長くその企業に勤め続けるイメージが持てなかったことが主な退職の理由でした。

そんな話を採用選考時に聞いていたので、当然採用する側としては、頑張ったらその分給与(年収)が上がっていく仕組みがある企業だとアピールをして安心材料を提供する必要があると思い、採用1日目のオリエンテーションで評価制度の説明を丁寧にされたそうです。

それが良い方向に効果が出たのか、その新人スタッフは採用選考のプロセスを経て応募したいという意向が固まり、入社してからも自分から積極的に仕事を覚えようとする姿勢を見ることができたというお話を聞くことができました。

オリエンテーションでどのように評価制度の説明をしたかというと、以下のようなことを伝えられたそうです。

「勤続年数に関わらず、1等級で求める、職務の遂行能力を身に着けることが出来たら2等級のレンジにジャンプアップするよ!」
「逆に勤続年数が長いからといって、いつまでも1等級で求める職務遂行能力を身に付けることが出来なかったら、ずっと1等級のレンジの上限で頭打ちになるよ!(昇給が止まることになるよ)」

上記のお話を聞いて改めて採用時に報酬レンジや評価制度の説明は重要だと感じました。

報酬レンジや評価基準の説明を採用選考時に設けている企業様では当たり前のことのように感じるかもしれませんが、制度が定まっていなかったり、採用選考時や採用して間もないタイミングで評価基準がどのように給与や年収に反映されるか伝えられていないところは意外に多いように思います。

上記のように制度として理由を示したうえで給与の改定を行わなければ、従業員の方々に(企業の業績に限らず)毎年一定額の昇給が行われるという認識を持たせてしまうことになります。

業績が堅調で、そのような認識を持たせても特に問題ないという企業様もいらっしゃるかもしれませんが、人口減少が続き、右肩上がりの経済成長が約束されない時代で、仕事の内容や責任が変わらなかったり、能力に成長が見られなくても(一人ひとりの生産性が上がらなくても)、単純に勤続年数が増えれば昇給できると従業員の方々に思わせることは、職場の緊張感が損なわれていき、成長意欲が高まらず、企業の成長を阻害する要因になり得ます。

報酬レンジは中長期的に組織全体をみても企業の成長を大きく左右するものといえます。

ではどのように設計していくのか?以下に手順とポイントをまとめてみました。

報酬レンジを作る手順とポイント

1.目的を明確にする

報酬レンジは、評価と処遇を密接に結びつけるものです。
設計に入る前に以下のような目的を考えましょう。

2.現状を把握する

まず、現状の給与を一覧化します。
社員の役職、経験、スキル、そして現在の給与や年収を整理しましょう。
また、採用市場での相場も確認します。

3.等級(グレード)を設定する

社員を役割やスキルレベルに応じて等級分けします。
例えば:

4.最低額と最高額を決める

等級ごとに支払う最低額と最高額を設定します。
この幅が「レンジ」となります。

5.内部調整と社員への共有・運用

作成した報酬レンジを経営陣で確認し、最終調整を行います。
その後、社員に共有・運用します。

社員にとって報酬レンジは「超えるべき壁」であり、「成長するための課題」になるものです。

不明瞭な基準や曖昧な運用は、長期的な視点で見ると社員の意欲を失わせ、成長スピードを停滞させることにつながります。

6.定期的に見直す

報酬レンジは一度作れば終わりではありません。
市場の変化や業績、社員の成長に応じて定期的に見直すことが必要です。

7.まとめ

報酬レンジの作成は、企業の未来を形作る「設計図」といえます。

一見難しそうに思えるかもしれませんが、目的を明確にし、現状を把握し、適切な基準を設定することができます。

完璧なものができるまでは従業員になかなか共有できないと思われる方も多いですが、そういった場合は、4~5年かけて精度の高いものを作っていくので制度変更があり得ることを事前に周知して進めることをお勧めします。

制度を作り、従業員に伝えることで、言葉の表現や要件・基準が練られ、より良い制度になっていきます。
最初から完璧なものを求めず、運用しながら毎年少しずつ改良していくつもりで取り組むことが大切です。

雇用の流動化が進む今日、報酬レンジは人材の獲得・定着を考える上でもますます重要な制度です。

まだ制度がない企業様におかれましては、従業員個々人のやる気を高め、成長スピードを早める仕組みとして、ぜひ構築を進めて頂きたいと思います。

今回のコラムは以上です。

お読み頂き、ありがとうございました。

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〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
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== 最近の動き(Topics)===========

1.平均賃上げ率4.1%で過去最高(10/29)
2.技能実習生の来日が減少(10/19)
3.「就活セクハラ」防止へ法改正に大筋合意(10/22)
4.公取委フリーランス実態調査 「買いたたき」経験約7割(10/19)

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1.平均賃上げ率4.1%で過去最高(10/29)

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厚生労働省は28日、賃上げに関する実態調査(従業員100人以上企業1,783社が回答)
の結果を公表した。1人当たりの平均賃金引上げ率は4.1%で、引上げ額は11,961円だった。また、賃金を引き上げた・引き上げると回答した企業は91.2%と、比較可能な1999年以降で最高となった。一方、ベアを実施した企業は従業員5,000人以上の企業で78.5%、100人から299人の企業で47.2%と、企業規模による開きがみられた

2.技能実習生の来日が減少(10/19)

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出入国管理庁が18日に公表した2024年上半期の出入国者数等によると、6月末時点での在留外国人は359万人と、過去最高を記録した。このうち技能実習は7万7,000人で前年同期比12.7%減。一方、特定技能は2万9,000人(同52.8%増)、高度人材向け「技術・人文知識・国際業務」は2万5,000人(同20.1%増)増と、特定技能に移行する動きが見られた。また、技能実習生の最大の送り出し国であるベトナムからの入国者数が前年同期比2割減となったことも影響している。

3.「就活セクハラ」防止へ法改正に大筋合意(10/22)

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21日、厚労省の審議会において、企業の就職活動中の学生に対するセクハラ対策の義務化について労使が大筋合意した。年内に結論を出し、2025年通常国会への関連法案提出を目指す。案では、面接やインターンシップの際のルールを定めておくことや相談窓口の設置といった対策を課すなどが示された。

4.公取委フリーランス実態調査 「買いたたき」経験約7割(10/19)

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公正取引委員会が18日、フリーランスの取引トラブルに関する実態調査結果(5~6月に実施)を公表した。「買いたたき行為」を受けた割合は全体で67.1%、このうち教育、学習支援業、学術研究、専門・技術サービス業、情報通信業の回答に多かった。その他の問題行為では、「契約時の報酬からの減額」が28.1%、「60日以内の報酬の未払い」が28.1%だった。公取委はフリーランス保護法の11月施行を控え、問題のある業界に是正を働きかける。

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台風など天災時の従業員の出退勤と給与の取り扱いについて

台風や地震、豪雨などの天災が発生した際、企業は従業員の安全と事業の継続をどう両立させるかが重要な課題となります。

このコラムでは、地方の中小企業の経営者や人事担当者に向けて、天災時の従業員の出退勤や給与の取り扱いについての判断基準と対応策をご紹介します。

目次

  1. 1.休業か出勤か自宅待機にするかの判断基準
  2. 2.出勤扱いにした場合の従業員への配慮
  3. 3.給与の取り扱い
  4. 4.休業させる場合に休業手当の支払いが必要なケースとそうでないケース
  5. 5.まとめ

1. 休業か出勤か自宅待機にするかの判断基準

天災時に従業員を出勤(在宅勤務)させるべきか、休業させるべきか、または自宅待機とするかは、業務の内容と従業員の安全性のバランスを考慮しながら判断する必要があります。

例えば、医療や福祉、保育、食料品、農業等の1次産業、公共交通機関、行政機関など、社会生活を営む上で不可欠な事業においては、業務の継続が求められる場面も多いでしょう。

しかし、天災の影響が大きければ大きいほど、従業員を危険にさらすリスクが高まります。

例えば、台風の暴風雨や地震による交通障害などで従業員が安全に通勤できない場合は、無理に出勤を命じるのではなく、柔軟な対応が求められます。

最低限必要な人数に出勤を命じるなど、出勤の可否を慎重に判断し、安全を最優先にした対応を検討することも重要です。

2. 出勤扱いにした場合の従業員への配慮

天災時に出勤を命じられた従業員と、自宅待機や休業を命じられた従業員がいる場合、待遇の不平等が生じることがあります

出勤を命じられた従業員は、自身の安全を犠牲にして業務に当たっているため、その努力に報いる措置の検討も必要です。

具体的には、出勤した従業員には欠勤控除を行わず、特別手当や危険手当の支給を検討することで、不公平感を和らげることができます。

また、自宅待機となった従業員にも同様に欠勤控除を行わず、事態の収束を待つことができるような配慮を示す方法もあるでしょう。

天災時には、企業全体で一丸となって協力する姿勢を示すことが、従業員のモチベーション維持につながります。(例外として、小学校等へ通学する子どもを持つ従業員がいて学級閉鎖が行われるような場合は、無給休暇取得(本人が希望した場合は有給休暇取得)を認めるといった、従業員の家族構成に応じた柔軟な配慮も必要です。)

3. 給与の取り扱い

天災時の給与の取り扱いについては、出勤や自宅待機、休業の各ケースに応じた適切な対応が求められます。

出勤に限らず、自宅待機とした従業員も欠勤控除を行わず、通常の給与を支払うことで、経済的な不安を軽減させることも可能です。

また、休業を命じた場合には、平均賃金の60%以上の休業手当を支給することが法律で定められています。これにより、従業員は収入の大幅な減少を防ぐことができ、企業に対する信頼感も維持されます。

4. 休業させる場合に休業手当の支払いが必要なケースとそうでないケース

休業させた場合に、休業手当の支給が必要となるかどうかは、労働基準法26条に係る行政解釈基準によると「事業主の責めに帰すべき事由による休業であるかどうか」が判断基準となります

ただし、「不可抗力」にあたる休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません

不可抗力による休業と認められるためには、

①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができないケースであること

の2つの要件を満たす必要があります。

例えば、突然の大規模な自然災害によって工場が被災し、復旧に時間がかかる場合や、交通網が完全に遮断されて従業員が出勤できない状況がそれに該当します。

このような場合、休業手当の支給は不要となりますが、事前に従業員に説明を行い、理解を得ることが重要です。

また、休業手当支払の必要の可否は、休業を決定した時期にかかわらず、あくまでその日が天災事変によって休業が不可抗力であったかどうかで問われることになります。

不可抗力にあたるケースはかなり大きな災害の影響が出ているケースであることが想定されますので、事業主の判断で休業を決定した場合、休業手当の支給が必要となるケースが多いかと思います。

解釈が分かれやすい部分でもあると思いますので、従業員との信頼関係を損なわないためにも、休業手当を支払うケースはどのような場合か事前に明確にしておくと良いでしょう。

5. まとめ

天災時の対応については、企業の業務の必要性と天災の規模、そして何より従業員(人命)の安全性を第一に考えることが求められます。

台風や地震、積雪など、様々な天災の予報が発表された際には、対策検討の時期を定めるなど迅速かつ的確な判断を行うための対応マニュアルを整備しておくことが有効です。

また、出勤を命じた場合の配慮や、休業手当の支払いについても、従業員の視点に立った対応が重要です。

天災はいつ起こるかわかりませんが、日頃からの備えと、従業員への配慮が、企業の信頼性を高める大きな要素となります。

企業としての対応を一貫させることで、従業員へ安心感を与え、天災時の非常事態を協力して乗り越える基盤を築いていきましょう。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
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直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
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== 最近の動き(Topics)===========

1.最低賃金 全国平均1,055円に(8/30)
2.政府 「ジョブ型人事指針」公表(8/29)
3.24年版厚生労働白書 健康リスクに「ストレス」が20年で3倍(8/27)
4.教員の処遇改善 来年度予算概算要求に関連経費(8/23)
5.障害年金 未納者向け特例措置延長へ(8/16)
6.出産費用への保険適用 一時金の支給も一部存続する方向(8/7)
7.給与のデジタル払い 初の資金移動業者指定(8/10)

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1.最低賃金 全国平均1,055円に(8/30)

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29日、全都道府県の今年度の最低賃金が出そろった。全国平均は過去最高の1,055円で昨年度比51円増となった。10月以降順次適用される。最高額は東京の1,163円、最低額は秋田県の951円、引上げ額の最高額は徳島県の84円。国が示した引上げの目安額50円
を27県で上回り、1,000円超えの都道府県が16都道府県と倍増したが、人手不足を背景に市場の時給水準は最低賃金を上回って推移している。

2.政府 「ジョブ型人事指針」公表(8/29)

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政府は29日、「ジョブ型人事指針」を公表した。富士通や日立製作所など、すでにジョブ型人事を導入している20社の事例をまとめたもので、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024 年改訂版」(6月21日閣議決定)にて、策定する旨を定めていた。9月には首相や導入企業トップらが参加する「ジョブ型人事推進会議」が開催される予定。

3.24年版厚生労働白書 健康リスクに「ストレス」が20年で3倍(8/27)

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厚生労働省は27日、2024年版の厚生労働白書を公表した。初めて「こころの健康」を特集し、健康状態にとって最大のリスクを「ストレス」と答えた人の割合が15.6%と、20年間で3倍に増えたことが示された。こころの不調を学校や職場に相談すると「思う」との回答は8.0%にとどまった。精神障害による労災認定数は22年度に710件と過去最多となり、白書では「こころの不調」について対策の必要性を強調した。

4.教員の処遇改善 来年度予算概算要求に関連経費(8/23)

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文科省は21日、公立学校教員の処遇改善案を示した。教員の「残業代」に該当する「教職調整額」を引き上げる方針で、2025年度予算の概算要求に関連経費を盛り込み、来年通常国会に関連法案を提出する方針。あわせて私立学校を運営する学校法人への補助金を増額する方針で、2025年度予算の概算要求において、今年度予算額から3%増の868億円(2012年度以降最大の上げ幅)を盛り込む。

5.障害年金 未納者向け特例措置延長へ(8/16)

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厚労省は、1985年から導入されている障害年金の特例措置について、10年間の延長を2025年の年金制度改革に盛り込むする方針を固めた。同措置は、障害の原因となった病気等に係る初診の月の前々月までの1年間で年金保険料の未納がなければ、過去に長期滞納があった場合でも受給できるというもので、現行の期限は2026年3月末までとなっている。

6.出産費用への保険適用 一時金の支給も一部存続する方向(8/7)

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政府は、出産費用への公的医療保険の適用について、医療機関の診療報酬を原則「50万円以内」とし、妊婦の自己負担をゼロとしたうえで、50万円から出産費用を差し引いた額を、一時金として支給する方向で検討に入った。現行の出産一時金は50万円を下回れば妊婦の手元に差額が残る仕組みとなっており、制度変更の前後で不公平感が出ないようにする。2026年度の適用を念頭に、来春をめどにまとめる予定。

7.給与のデジタル払い 初の資金移動業者指定(8/10)

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厚生労働省は9日、給与の電子マネーでの支払いに係る資金移動業者としてPayPay(ペイペイ)を指定したことを公表した。昨年4月の解禁以降、初めての指定となる。厚生労働省では4社から指定申請を受けており、ほか3社の審査は継続する。
ペイペイはデジタル払いに関する新サービスを年内にも開始予定。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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== 最近の動き(Topics)===========

1.宿直中の休憩を労働時間と判断 未払い額最大86億円(8/9)
2.後期高齢者医療の現役世代負担 2年連続で過去最大(8/9)
3.実質賃金 27カ月ぶりのプラス(8/7)
4.最低賃金50円引上げ 全国平均1,054円に(7/25)
5.「えるぼし」 中小企業の認定が5年で6倍(7/25)
6.カスハラによる自殺 労災認定(7/23)
7.カスハラ対策の法制化を提言(7/20)
8.女性管理職比率の公表義務 非上場企業にも拡大(7/19)

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1.宿直中の休憩を労働時間と判断 未払い額最大86億円(8/9)

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8日、東京メトロを運営する東京地下鉄は、24時間拘束される全泊勤務の社員の休憩時間が労働時間に当たるとして割増賃金を支払うよう2日付けで是正勧告を受けた、と発表した。対象者は約1,800人、未払い分として3年間で最大で86億円を支払う見通し。
同社では全泊勤務中に全員が同じ時間帯に休憩を取っており、実際に緊急対応を行った社員に代わりの休憩時間を設けたり残業手当を支払ったりしていたが、管轄の足立労働基準監督署は、社員からの申告で1月頃から調査の上「労働から完全に解放されておらず労働時間に該当する」と判断した。

2.後期高齢者医療の現役世代負担 2年連続で過去最大(8/9)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
8日、厚生労働省は後期高齢者医療制度の2022年度の財政状況を公表した。全体の支出は前年度から3%増加し17兆724億円と過去最大となった。このうち、保険給付費は4%増の16兆4,749億円。全体の収入は2%増の17兆4,629億円で、このうち現役世代が支払う交付金は前年度から3%増の6兆6,989億円と、2年連続で過去最大を更新した。

3.実質賃金 27カ月ぶりのプラス(8/7)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
厚生労働省が6日に6月の毎月勤労統計調査(速報)を発表し、実質賃金が前年同月より1.1%増と27カ月ぶりのプラスとなった。現金給与総額のうち、所定内給与は2.3%増となった一方、賞与を含む「特別に支払われた給与」は7.6%増となったため、賞与を6月に支払った企業が多いことがプラス転換の主な要因で、増加は一時的との見方もある。

4.最低賃金50円引上げ 全国平均1,054円に(7/25)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は24日、2024年度の最低賃金の目安を全国平均で1,054円(現在は1,004円)とする決定をした。上げ幅は過去最大で、都道府県の経済実態に応じた3つのグループのいずれの目安も50円とされ、地域間格差は比率の面で縮小する。各都道府県の審議会は目安額を基に実額を最終決定する。適用は10月中となる見通し。

5.「えるぼし」 中小企業の認定が5年で6倍(7/25)

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女性活躍の推進に取り組む企業として、厚生労働省から認定を受ける「えるぼし」について、取得企業が増えている。特に認定段階3が顕著で、従業員数300人以下の中小企業で5年前の6倍に当たる945社となり、初めて301人以上の企業の915社を上回った(2024年3月末時点)。

6.カスハラによる自殺 労災認定(7/23)

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住宅メーカーで営業を担当していた男性の自殺について、柏労働基準監督署がカスハラによる精神疾患が原因だったとして昨年10月に労災認定をしていたことがわかった。昨年9月の労災認定基準改正で、カスハラは被害類型に加えられていた。
男性の両親の代理人弁護士は、顧客との通話の記録が認定の決め手の1つになったとする。会社は、再発防止のためカスハラ専用相談窓口を設置したとしている。

7.カスハラ対策の法制化を提言(7/20)

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厚生労働省の雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会は、7月19日にまとめた報告書案の中で、カスハラの定義を明確化し、企業に対策の実施を義務付ける法制化が必要と明記した。この秋以降に開催する労働政策審議会で議論し、2025年通常国会への関連法案提出を目指す。

8.女性管理職比率の公表義務 非上場企業にも拡大(7/19)

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厚生労働省が女性管理職の比率の公表義務を非上場企業にも拡大する方針であることが、女性活躍推進法の改正などを議論する同省の有識者検討会が19日にまとめた報告書案で明らかになった。対象企業の規模などは、さらに議論する。また、従業員全体の男女間の賃金差の報告義務を現在の301人以上から101人以上の企業にも広げるとしている。今後、労働政策審議会で議論のうえ、来年の通常国会にも改正案を提出する。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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はじめに:メンタルヘルスと企業責任

昨今、メンタルヘルスの問題は企業にとって避けては通れない課題となっています。

従業員のメンタルヘルスが悪化することで、生産性の低下や労働力の喪失といった直接的な影響に加え、企業の内外の評価にも大きな打撃を与える可能性があります。

本コラムでは、メンタルヘルスを理由に休職する従業員への対応方法を、最新の法令に基づいて解説します。

目次

  1. 1.メンタルヘルス休職者に対する基本的な対応方
     1.1 事前の規定整備の重要性
     1.2 休職者への事前説明とそのポイント
  2. 2.休職期間中の企業の対応
     2.1 継続的なフォローアップの方法
     2.2 復帰希望者へのサポート体制
     2.3 退職希望者への対応と手続き
  3. 3.休職者の復帰後の対応
     3.1 復職時の就業環境調整
     3.2 トラブル防止のための社内ルールと教育
  4. 4.トラブルを未然に防ぐための企業文化の形成
     4.1 メンタルヘルスに関する社内啓発
     4.2 人事担当者と上司の役割
  5. 5.まとめ:メンタルヘルス対応の適切な運用で企業価値を高める

1. メンタルヘルス休職者に対する基本的な対応方針

1.1 事前の規定整備の重要性

メンタルヘルス休職者への対応を適切に進めていくためには、企業の就業規則に前もって休職制度を整備しておくことが有効です。

労使間でトラブルにならないために、休職制度には主に以下の事項を整備すべきです。

自社の規定が問題ないか是非ご確認ください。

(休職期間)

  • ● 休職制度の適用対象者の明記・・・勤続1年以上の者を対象にする等
  • ● 勤続年数のカウント方法の明記・・・休職事由と同一事由である欠勤開始日を基準日とする等
  • ● 休職要件の明記・・・欠勤が連続、断続を問わず1ヶ月(歴月)に10日以上続いた場合
  • ● 復職の可能性が低い場合の休職の取扱いの明記・・・休職の否認、期間短縮となる場合がある等
  • ● 休職の開始日・・・要件に該当したと会社が決定した日が開始日となり、本人への通知の有無を問わない等
  • ● 休職期間の通算について明記・・・1年以内の同一事由の休職期間は通算する等 
  • ● 休職期間中の社会保険料や住民税の取扱いの明記・・・本人負担分は指定期日までに振り込むこと等
  • ● 復職時の配置替えの明記・・・従前の業務に従事することが困難な場合は配置換えを行う等
  • ● 復職希望時の取扱い手続きの明記・・・復職希望日を1週間前に通知する等
  • ● 復職時の判断基準の明記・・・治癒(健康時の通常の業務を遂行できる程度に回復)したと会社が認めた場合等
  • ● 復職判定の明記・・・復職希望時は会社指定医師の診断書を提出する必要がある等

1.2 休職者への事前説明とそのポイント

休職に関する説明は、トラブルを避けるための重要なステップです。

具体的には、休職の理由、休職期間中の処遇(給与を有給処理するか、欠勤控除するか)、健康保険制度や労災保険制度の休業中の給付内容や手続方法、復職の条件などを文書で明確に説明し、従業員から同意を得ることと、休職者が不安を感じることなく、適切な治療に専念できるよう、安心感を与えるコミュニケーションが求められます。

2. 休職期間中の企業の対応

2.1 継続的なフォローアップの方法

休職中の従業員に対しては、定期的なフォローアップが必要です。

メールや電話での連絡を通じて、状況確認や復職の意思を確認することが推奨されます。

ただし、過度な連絡は逆効果となるため、適切な頻度で行うことが求められます。

あらかじめ就業規則の休職規定にも、休職期間中は従業員側から1ヶ月に1回は会社に状況報告をする義務があるように規定に盛り込んでおくこともお勧めです。

2.2 復帰希望者へのサポート体制

休職中の従業員に対する継続的なフォローアップは、復職への意欲を高めるために欠かせません。

企業が従業員と適切な距離を保ちながら、心理的安全性を確保する方法を具体的に説明します。

また、心理的負担を軽減するための外部カウンセリングサービスの活用することもケースによっては有効です。

2.3 退職希望者への対応と手続き

退職を希望する従業員に対しては、適切な手続きを踏みつつ、円満退職を目指すことが重要です。

退職理由の確認、離職票の発行、退職後に受給できる健康保険制度や労災保険制度の給付金制度の有無、退職金の支払いの有無、退職後の支援策の提示などを行うことで、退職者との関係を良好に保つことができます。

3. 休職者の復帰後の対応

3.1 復職時の就業環境調整

復職後の従業員に対しては、元の業務にスムーズに戻れるよう、就業環境の調整を行うことが求められます。業務内容の再評価や、負荷の軽減、適切なサポート体制の確立がその一例です。

3.2 トラブル防止のための社内ルールと教育

復職後のトラブルを防ぐためには、従業員全体がメンタルヘルスに対する理解を深めることが重要です。

これには、社内での定期的な教育や研修が効果的です。

また、復職者に対する偏見や差別を防ぐためのルール作りも不可欠です。

4. トラブルを未然に防ぐための企業文化の形成

4.1 メンタルヘルスに関する社内啓発

企業として、メンタルヘルスに対する啓発活動を積極的に行うことで、従業員の理解を深め、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。

具体的には、メンタルヘルスに関する情報提供や、相談窓口の設置が有効です。

4.2 人事担当者と上司の役割

人事担当者や上司は、従業員のメンタルヘルス状態に気を配り、問題が発生した際には早期に対応することが求められます。

また、従業員との信頼関係を築き、問題を抱えた際に気軽に相談できる環境を整えることが重要です。

5. まとめ:メンタルヘルス対応の適切な運用で企業価値を高める

メンタルヘルスに関する休職者対応は、企業にとって大きな課題である一方、適切に運用することで対象の従業員及びそれ以外の在籍従業員からの信頼度を高めるチャンスでもあるといえます。

規定の整備、適切な対応、そして企業文化の形成を通じて、従業員の健康を守り、安心して働ける職場環境の向上に繋がります。是非、この機会に自社の就業規則の内容をご確認ください。

もし、就業規則や社内規定の整備改定が必要な場合は、弊所で承っておりますのでお気軽にご相談ください。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
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