社会保険労務士@山下謙治

直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい。

== 最近の動き(Topics)===========

1. 介護職員の月給4.3%増(3/19)
2.  就活の「オワハラ」防止を要請(3/21)
3.  75歳以上の全員に資格確認書を送付(4/4)
4.  春闘賃上げ率 大企業、中小企業とも5%台(4/4)
5.  給与の「デジタル払い」 飲食・運輸業界で増加(4/11)
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1.介護職員の月給4.3%増(3/19)

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厚生労働省は18日、常勤介護職員の平均月給(昨年9月時点、賞与や手当を含む)が33万8,200円だったと発表した。前年同月より1万3,960円(4.3%)増加した。賞与を除く基本給等は平均25万3,810円で、1万1,130円(4.6%)増だった。同省は「報酬引上げの結果が一定程度反映されている」とした。

2.就活の「オワハラ」防止を要請(3/21)

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政府は21日、2027年3月に卒業予定の学生などの就職に関し、「オワハラ」の防止を徹底するよう、経済団体などへ要請文を出した。文書では、内定の承諾に保護者の同意を確認する行為、いわゆる「オヤカク」も「オワハラに該当し得る」として注意を促した。

3.75歳以上の全員に資格確認書を送付(4/4)

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厚生労働省は3日、マイナ保険証を持っているかどうかにかかわらず、75歳以上の高齢者らに、従来の健康保険証と同じように利用できる資格確認書を自動的に配る方針を示し、了承された。後期高齢者医療制度では毎年7月末に保険証の期限を迎えるが、自治体の窓口に資格確認書の交付申請が殺到するおそれがあるため、すべての人に資格確認書を交付する。

4.春闘賃上げ率 大企業、中小企業とも5%台(4/4)

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連合の2025年春季労使交渉の第3回集計結果によると、定期昇給を含む正社員の賃上げ率は平均5.42%と、前年同期を0.18ポイント上回り、2年連続で5%台となった。組合員300人未満の中小企業の賃上げ率は、前年同期を0.31ポイント上回る平均5.0%となった。

5.給与の「デジタル払い」 飲食・運輸業界で増加(4/11)

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給与の「デジタル払い」に関して、スマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」が提供するサービスを導入する企業が100社を超えた。従業員への福利厚生の一環として、飲食や運輸業界などで導入する企業が増えているとのこと。
民間調査機関MMD研究所の「給与デジタル払いとポイント経済圏に関する調査」では、デジタル払いの認知度は61.9%に上った一方、現在利用していると回答した人は2.8%にとどまった。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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目次

  1. はじめに:引越しバイトが教えてくれたこと
  2. 引越しバイトが教えてくれた「リーダーの力」
  3. ABA(応用行動分析)とは?──「人の行動は“環境”がつくる」
  4. 行動の“前”と“後”を読み解く「ABC分析」
  5. 部下の行動を左右する「先行条件」と「結果」という環境づくり
  6. 「経験から学ばせる」とは、“環境を設計する”こと

はじめに:引越しバイトが教えてくれたこと

いつもお世話になっております。プロセスコアの山下です。

「人は座学や人からのアドバイスよりも経験から学ぶことが多い」

これは、先日ある企業で実施したOJT指導者研修の場で私がお伝えさせて頂いた言葉です。

座学だけでは人は育たず、実体験のなかで得られる“うまくいった成功体験”や“失敗から得た気づき”こそが、本人の血肉となる、忘れない一番の教訓になるという意味です。

その研修の最後に、受講されていた企業の社長が、自らの学生時代の引越しアルバイトの話をしてくださいました。

そのエピソードが、人材育成の一つの核心を突いていると思いました。

引越しバイトが教えてくれた「リーダーの力」

その社長は、大学生のころに引越しのアルバイトをしていたそうです。

毎回、社員1人と学生アルバイト数名で構成されるチームを組み、現場に向かう。

そこで気づいたのが、「リーダーの違いが、チームのパフォーマンスに如実に表れる」ということでした。

あるリーダーは、作業前から「ミスするなよ!」とピリピリした空気を作り、少しのミスでも感情的に怒鳴る。すると、周囲は萎縮し、緊張からくるミスが増え、作業も遅れる。

一方、別のリーダーは、普段の雑談や準備中の雰囲気づくりを大切にし、ミスがあっても冷静に対処。結果、チームはリラックスして働き、作業もスムーズに進んだといいます。

この体験が、その社長の「部下との接し方」や「人の育て方」の根っこにあるそうです。

実はこのような経験談には、人材育成において非常に大切なヒントが詰まっています。

それを”科学的な視点”で説明してくれるのが、「ABA(応用行動分析学)」という理論です。

ABA(応用行動分析)とは?
 ──「人の行動は“環境”がつくる」

ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析学)は、アメリカの心理学者B・F・スキナーによって体系化された「行動の科学」です。

人や動物の行動は、その行動の前後の環境によって変化する」という考え方に基づいています。

たとえば部下が報連相をしない、主体的に動かない、叱ると黙り込んでしまう...

こうした問題行動も、「本人の意識が低い」のではなく、その行動を引き起こす“環境”が影響しているというのがABAの基本的なスタンスです。

行動の“前”と“後”を読み解く「ABC分析」

ABAの中心的な考え方の一つに「ABC分析」というものがあります。

人は、「Aの条件下でBという行動を起こし、Cの結果を得る」ことで、その行動を「またやるか/やらないか」を無意識に判断しているのです。

ここで先ほどの引越しバイトの例を使ってABC分析をしてみましょう。

部下の行動を左右する「先行条件」と「結果」という環境づくり

ABC分析をより具体的に活かすために、育成を行う上司は、行動の前後に位置付けされる「先行条件」「行動の結果」を環境作りと思って、意識的に自身の振る舞いや行動を選択していくことが重要になります。

先行条件と結果については、以下の4つに分類するのがABAの考え方になります。

※「好子」とは、行動の前後にある刺激や結果が本人にとって良いもの、
  「嫌子」とは、行動の前後にある刺激や結果が本人にとって悪いものを指します。

※「強化」とは、その行動が繰り返されること。 
  「弱化」とはその行動が繰り返されなくなることを指します。

上記の分類を先程の例に当てはめて、どのような「先行条件」が良いか考えると

ということになるでしょうし、

行動の後の「結果」については、

という対応を上司が取ることで、リラックスした状態での作業が強化されます。

つまり、「行動の前と後に作り出される環境によって“どのような行動が増えどのような行動が減るのか”を左右している」のです。

これを理解した上で、上司がどんな声をかけ、どんなタイミングでフィードバックするかを設計するだけで、部下の行動はガラリと変わります。

「経験から学ばせる」とは、“環境を設計する”こと

冒頭のお話のように、「自分で体験し、気づき、行動が変わる」ことが育成の理想です。ただし、それを「放任する」ことと勘違いしてはいけません。

経験から学ばせるには、上司が「行動のきっかけ」と「結果」をデザインすることが大切です。

人材育成において、「育つ社員/育たない社員」の違いは、能力や意識の差だけではありません。

どんな上司に育てられたか”という環境的な要因も大きく影響します。

だからこそ、経営者やマネージャーに求められるのは、「どう伝えるか」や「どう叱るか」よりも、どう“環境”を整え、“行動の連鎖”を設計するかという視点です。

ABAという科学的アプローチは、経験と感覚に頼っていたOJTや人材育成を、再現可能なマネジメント手法へと進化させてくれます。

なぜ部下が動かないのか?」と悩んだときは、一度その行動の前後に目を向けてみてください。

解決のヒントは、必ず“環境”の中にあるずです。

プロセスコアでは、今回のコラムでお伝えした ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析学)を元にした研修も行っており、様々な事例やワークを用いて管理職を対象とした研修を実施しております。

人材育成に力を入れたいと思われている経営者・管理職の方はぜひお問い合わせください。

研修サービスのお問い合わせはこちらから

今回のコラムは以上です。

お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

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直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい。

== 最近の動き(Topics)===========

1.公共工事の労務単価 3月発注分から6%引上げに(2/15)
2.2026春大学卒業予定者の内定率が過去最高(2/22)
3.パート社会保険料の肩代わり 全額還付(2/28)
4.「男女の賃金・待遇差分析ツール」の公表(3/4)
5.最低賃金1,500円目標、中小「不可能・困難」が7割 日商調査(3/6)
6.育成就労の基本方針を閣議決定(3/12)
7.職場の熱中症対策 義務化へ(3/13)
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1.公共工事の労務単価 3月発注分から6%引上げに(2/15)

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国土交通省は14日、国や自治体が公共工事を発注する際に使う公共工事設計労務単価を、2025年度は前年度から平均6.0%引き上げることを発表した。13年連続の引上げで、3月以降に発注する工事から適用される。これにより、全51職種の全国平均(1日8時間)は過去最高額の2万4,852円となる。

2.2026春大学卒業予定者の内定率が過去最高(2/22)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

就職情報サービスの学情の調査で、1月末時点の2026年春卒業予定の大学生・大学院生の内定率が48.2%と過去最高となった(リクルートの2月1日時点調査も39.3%で過去最高)。内定を得た学生の半数以上がインターンシップに10社以上参加しており、「期間5日以上」などの条件を満たせばインターンでの評価を本選考で活用できるとの2023年のルール変更以降、インターン参加者を対象とした早期選考が定着している。

3.パート社会保険料の肩代わり 全額還付(2/28)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

厚労省は、従業員50人以下の中小企業が一定年収のパート従業員の社会保険料を肩代わりした場合の特例について、肩代わりした保険料を全額企業に還付する方向で調整する。今国会への提出を目指す年金制度改革法案に盛り込む。成立すれば、2026年10月をめどに3年間の時限措置として実施される予定。

4.「男女の賃金・待遇差分析ツール」の公表(3/4)

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政府は3日、企業が自社における男女の賃金や待遇差等を同業他社等の平均と比較できる分析ツールを発表した。厚労省ホームページからダウンロード可能で、従業員の性別や給与、年次等を入力することで利用できる。役職を持つ女性の割合なども比較できる。

5.最低賃金1,500円目標、中小「不可能・困難」が7割 日商調査(3/6)

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日本商工会議所は5日、「中小企業における最低賃金の影響に関する調査」の集計結果(全国3,958社が回答)を発表した。2020年代に全国加重平均1,500円にするとの政府目標に、対応が「不可能」19.7%、「困難」は54.5%で計74.2%に達した。対応可能な年率の引上げ水準については、「1%未満」から「3%程度」までの回答が67.9%を占め、政府目標を達成するための7.3%を満たす「7%程度」「8%以上」は計1.0%にとどまった。

6.育成就労の基本方針を閣議決定(3/12)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

政府は11日、「特定技能制度及び育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針」を閣議決定した。育成就労制度について、外国人の受入れ数は人手不足の状況を踏まえて、原則5年ごとに分野別に設定するとした。日本国内の人材確保が目的であることも明記し、原則3年で「特定技能」に移行しやすくする。また、技能実習では原則認められていなかった「転籍」を1~2年働けば認め、転籍を制限する期間は分野ごとに定める。

7.職場の熱中症対策 義務化へ(3/13)

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厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会は12日、熱中症対策を罰則付きで事業者に義務付ける改正省令案要綱を了承した。「暑さ指数」28以上または気温31度以上の環境で連続1時間以上か1日4時間を超える作業を行う際に、対策とその周知を義務付ける。
4月にも改正省令を公布し、6月の施行を目指す。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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目次

  1. はじめに:なぜ人事評価制度が必要なのか?
  2. 落とし穴①:評価制度導入の「目的」を見失う
  3. 落とし穴②:評価者のスキル不足がモチベーション低下を招く
  4. 落とし穴③:評価項目の誤解と偏りが意図しない行動を生む
  5. 落とし穴④:評価業務が通常業務を圧迫してしまう
  6. 人事評価制度の本質は“原資”と“協力”にある
  7. まとめ:制度は会社と社員の未来をつくるツール

はじめに:なぜ人事評価制度が必要なのか?


中小企業の経営者や人事担当者の皆さま、「人事評価制度は必要か?」と問われたらどうお答えになるでしょうか。

私の個人的な見解では、創業期や社員数が少ないうちは、必ずしも評価制度が必要ではないと考えています。

経営者と社員の距離が近く、日々のコミュニケーションの中で給与や役割の期待が伝わる場合、制度を形式的に整えなくても問題が起こりにくいからです。

しかし、組織が成長し、社員数が増え、勤続年数が長くなると、社員の頭にはこうした疑問が浮かび始めます。

「自分の給与はどう決まっているのだろう?」
「どれだけ頑張れば、どのくらい昇給するのだろう?」
「自分に何が期待されているのだろう?」

これらの疑問に明確に応えられなくなると、社員のモチベーションは徐々に低下し、離職リスクも高まります。加えて、企業が社員に求める行動や能力の期待値が伝わりづらくなります。

そんな時に必要になるのが 「人事評価制度」 です。

ですが、制度を導入さえすれば万事うまくいくわけではありません。

むしろ、よくある 「落とし穴」 に気づかないまま導入・運用してしまい、かえって現場の不満が増してしまうことも...

今回は、特に陥りやすい4つの落とし穴とその対策についてご紹介します。

落とし穴①:評価制度導入の「目的」を見失う

最初の落とし穴は、「制度を導入すること自体が目的化」してしまうことです。

よくあるケースとして、他社が導入しているから、社員に要望されたから、助成金を活用したいから...といった理由で形だけ評価制度を導入し、制度や運用にメリハリがないパターンです。

評価制度の本来の目的は、概ね以下のどれかに該当するかと思います。

  1. 1.企業が社員に求める行動や能力、成果の期待値を伝える
  2. 2.給与・賞与決定の透明性を高める
  3. 3.役職・ランク決定の基準を示す
  4. 4.社員の成長やモチベーション維持
  5. 5.企業理念や行動指針の浸透
  6. 6.部下育成のツールとする

制度導入の前に、経営者自身が「何のために評価制度を作るのか」、「目的の優先順位」を明確にし、それを意識した設計と運用ができているか、チェックしながら設計することが肝要です。

落とし穴②:評価者のスキル不足がモチベーション低下を招く

2つ目の落とし穴は、評価者(上司)が適切に評価面談を行えないことです。

たとえば、評価者が部下の成果や行動をしっかり観察できていなかったり、フィードバックの仕方が一方的だったり感情的なダメ出しだったりすると、社員は「どうせ見られていない」「何を頑張っても変わらない」「期待されていない」と感じ、モチベーションは下がってしまいます。

この問題を防ぐには、評価者研修の実施が欠かせません。

評価項目の意味や評価基準を理解するだけでなく、

といった「面談スキル」を磨くことが必要です。

また、評価者の属人化によるヒューマンエラーを防ぐために、評価面談を先輩評価者同席の上で実施したり、事前に査定内容や面談時の伝達内容を確認する評価者会議やロールプレイングを実施することも有効です。

落とし穴③:評価項目の誤解と偏りが意図しない行動を生む

評価項目は、社員にとって「何をすれば評価されるのか」を示す羅針盤です。

しかし、特定の項目ばかりが強調されすぎると、社員がそこにばかり意識を集中し、本来企業が期待している行動とズレてしまうことがあります。

例えば「売上目標達成」だけを重視しすぎると、日頃の勤務態度やルール、チームワークをおろそかにした態度や行動が生まれかねません。

項目や評価項目ウェイトは多角的かつバランス良く設定し、どんな評価要素が加点採点され、減点採点されるのか、評価面談の際には各項目の背景や重要性を丁寧に説明することが大切です。

落とし穴④:評価業務が通常業務を圧迫してしまう

評価制度のもう一つの「現場泣かせポイント」は、評価・面談・査定に時間を取られすぎることです。

特に中小企業では、一人の管理職がプレイングマネージャーとして現場業務と評価業務の両方を抱えている場合が多く、評価シーズンになると業務過多で疲弊しがちです。

この問題を防ぐには、

といった「無理なく回せる運用設計」が求められます。

また、評価採点をするクラウドシステムやGoogleフォームなどを活用して、できるだけ採点入力、集計、記録の保存の手間を減らす方法を考えていきましょう。

人事評価制度の本質は“原資”と“協力”にある

強調しておきたいのは、評価制度が機能することで得たい成果は「社員同士、会社と社員が協力し、生産性を上げて人件費(給与原資)を増やす」ことだと考えます。

社員は、自分の評価や給与だけでなく、

を知ることで、会社と一緒に目標を達成しようという気持ちになります。

経営者が「評価制度=給与決定の仕組み」だけに終始せず、事業の成長と社員の幸せを両輪で考えることが、評価制度を成功させるカギです。


まとめ:制度は会社と社員の未来をつくるツール

人事評価制度は、「導入すれば終わり」ではなく、「導入してからがスタート」です。

これら4つの落とし穴を避けながら、社員との対話を重ね、制度の改善を続けることが大切です。

評価制度は、社員が安心して働き、成長し、企業とともに未来を描くための「道具」です。

最初から完璧なものをつくることは難しいので、少しずつ改良を重ね、より良い制度を作り上げていきましょう。

活用次第で、会社と社員、双方の未来が大きく変わります。

最後に、評価制度の導入にあたっては、経験がないとどこから取り組めばよいか分からず、時間ばかりが経過して先送りになりがちです。

評価制度の設計を専門にしたコンサルタントや弊所(社会保険労務士事務所)を上手に活用して頂き、制度構築していく方法もありかと思います。

制度設計のサポートを検討される方は、ぜひこちらの人事制度導入支援サービスページをご覧ください。
👉 プロセスコア人事制度導入支援

今回のコラムは以上です。

お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
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求人広告を出してもなかなか応募がなく困っている。

、、、何から取りかかればいいのか?

、、、何を変えたらいいのか?

このように手を拱いている企業様も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

今回のコラムが、何から手を付ければよいか解決の糸口につながりましたら幸いです。

企業の人材採用の充足率に関するデータ

まずは、企業の人材採用の充足率に関するデータをご覧ください。

中途採用計画をたてている企業約11,000社にとったアンケートによると、充足率100%に到達しない企業が79.4%以上

リクルート「2022年度下半期 中途採用動向調査(2023/5/15)

といった厳しい雇用環境状況にあります。(以下グラフ参照)

現時点でもかなり厳しい状況にあるにも関わらず、少子化に伴う労働力人口不足は加速し、地方の中小企業の人材採用はこれからますます困難な状況へ進むことが予想されます。

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ビジネスモデルにもよるので一概にいえませんが、企業の経営上の最重要課題が人材採用活動と捉えなければいけない時代環境下にあると言えます。

そこで、「企業の人材採用力をあげるための条件」というテーマで、御社の採用力をあげるために必要な取り組みについてのチェックリストを作成してみました。

チェック項目の内容は、現在の雇用環境においても採用活動を比較的順調に行っている企業様が行っている取り組み事例をもとにしています。

業種によって合わない内容もあるかと思いますが、一つでも参考になる項目があれば幸いです。

企業の人材採用力を高めるための前提条件

チェック項目は8つ!

御社では、何個チェックが入るでしょうか?

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では、一つずつ解説していきましょう。

1.経営会議のアジェンダの一番最初に「採用」を掲げているか?

経営上で考えなければいけない課題は多岐にわたりますが、緊急性が低くて重要な仕事はとかく後回しになりがちです。

アジェンダの冒頭に採用を掲げることで、社内の人材戦略が後回しにならず、常に経営陣の関心の中心に据えられます。

これにより、迅速な意思決定やリソースの適切な配分が可能となり、自社の採用力向上の施策実現に直結します。

また、採用を経営会議の最優先事項とすることで、企業幹部をはじめとして全体の意識も変わります。

2.経営者の時間の 20 ~ 30% を採用に充てているか?

経営者自身が採用に積極的に関与することは、企業の成長において極めて重要です。

中小企業においてリファラル(縁故)採用や SNS の広報活動をするにしても、経営者が一番人脈(ネットワーク)を持っており、かつ対外的な影響力・信用力を持っていることが一般的です。

自らが積極的にアクションを起こすことが面接時の成約率をあげ、企業のPRにも直結します。

また、経営者自身が企業説明会や採用面接に参画することで、求職者に企業のビジョンや文化がダイレクトに伝わり、企業理解を深め、成約率や雇用後のミスマッチを防ぐことが出来ます。

3.経営者がもっとも信頼する幹部を採用責任者においているか?

採用活動は単なる人事部の業務ではなく、企業の未来を左右する戦略的な取り組みです。

そのため、経営者が最も信頼する幹部を採用責任者に任命することで、より実効性の高い採用戦略を実現できます。

信頼できる幹部が関与することで、企業のPR活動の効果性も高まり、候補者に対する説得力が増し、人材獲得に繋がりやすくなります。

他の部門との連携もスムーズになり、組織全体での採用力が向上します。

4.組織内・外を含めて採用チームを作っているか?

採用活動は、競合企業分析や採用候補の人材の潜在的欲求や行動傾向を読み解いて募集や広報活動を行うマーケティング要素の高い業務でもあり、ホームページやSNS広告、様々な広告媒体の運用といった技術的な業務、そして人材を見極めるための面接や適性検査といった人を見極める目が必要で多岐にわたり、総合的にみて高難易度の業務といえます。

自社内で運用を行うための人材を適材適所揃えることができれば一番良いのですが、難しい場合もあります。

そういった場合、社外からも専門家を巻き込んだ採用チームを形成することが解決の早道です。

外部のリクルーターや専門家と連携することは、社内にはない知見や経験を活用することにも繋がり、より優れた人材の獲得や多くの人材にリーチすることも可能になります。

5.採用に関する勉強会に定期的に参加し、情報収集しているか?

採用市場は常に変化しており、最新のトレンドや手法をキャッチアップすることが不可欠です。

定期的に勉強会に参加することで、採用戦略のアップデートが可能になり、競争力を維持できます。

また、他社の成功事例や失敗事例を学ぶことで、自社の採用プロセスの改善点を見出しやすくなります。

うまくいっている経営者や採用担当者ほど、ベンチマークしている競合企業や手本とする採用や広報活動の企業があり、定期的に広報活動等を観察して情報収集するようにしています。

6.経営陣はどこに行っても誰とても、いい人材がいないか目を光らせ、いい人材がいたら声をかけているか?

優秀な人材は必ずしも転職市場にいるわけではありません。

経営陣が常にアンテナを張り、どんな場面でも有望な人材に声をかけることが重要です。

例えば、業界のイベントや勉強会、交流会、飲み会の場で出会った人材に対し、適切なタイミングでアプローチすることで、通常の求人活動では得られない優秀な人材を獲得できる可能性があります。

こうした姿勢が企業の採用力競争力を向上させます。

7.仕事内容やどんな人が働いてるか?わかるようなSNS発信を会社でしているか?

現代の求職者は企業の公式サイトだけでなく、SNSを通じて企業の雰囲気や文化を確認します。

SNSで積極的に発信することで、企業の魅力をより広く伝えることが可能になります。

特に、社員のリアルな働き方や職場の雰囲気を可視化することで、求職者の興味を引きやすくなります。

また、採用マーケティングの観点からも、SNSを活用することで応募者の母集団を広げる効果(求人サイトへの導線)が期待できます。

8.経営陣は退職した社員とも関係性が途切れないよう定期的に接触する機会を設けているか?

退職した社員との良好な関係を維持することは、企業の評判向上や将来的な採用機会につながります。

退職者が再び戻ってくる「アルムナイ採用」の可能性も高まりますし、元社員が転職先で優秀な人材を紹介してくれるケースもあります。

定期的な交流会やSNSグループの活用などを通じて関係を維持することで、企業の人的ネットワークが強化され、採用力の向上につながるでしょう。

以上が8つのチェック項目となります。

御社は採用力向上のための条件をいくつクリアされていたでしょうか?

実際には上記以外にも沢山の施策があるかと思いますが、ご紹介した中で一つでも参考になる施策があれば幸いです。

今回のコラムは以上です。

お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
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== 最近の動き(Topics)===========

1.介護休業取得 2025年度から補助金を増額(2/13)
2.24年の実質賃金前年比0.2%減(2/5)
3.2024年の就業者数が過去最多に(2/1)
4.厚生年金加入の企業規模要件撤廃、2035年に先送り(1/29)
5.労働安全衛生法の改正要綱 答申(1/27)
6.公益通報者保護法改正案 通報者処分で刑事罰(1/26)
7.2025年度の公的年金支給額 1.9%引上げ(1/24)

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1.介護休業取得 2025年度から補助金を増額(2/13)

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厚生労働省は、2025年度に中小企業の介護休業取得による業務代替支援の補助金を増額する。15日以上取得した従業員1人につき、同僚への手当に最大10万円、新規雇用に最大30万円を補助する。利用日数に応じて増額する仕組みとし、取得者5人分まで申請可とする。また、新たに短時間勤務(15日以上利用)の場合も同僚への手当の補助として3万円を支給する。

2.24年の実質賃金前年比0.2%減(2/5)

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厚生労働省は5日、2024年の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。実質賃金は前年比0.2%減で、3年連続のマイナスとなった。名目賃金は賃金や賞与の引上げにより、月平均で前年比2.9%増となったが、消費者物価指数は同3.2%の上昇で追いつかなかった。マイナス幅でみると、23年の2.5%から改善した。

3.2024年の就業者数が過去最多に(2/1)

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総務省の31日の発表によると、2024年の就業者数が6,781万人(前年比34万人増)で、過去最大だった。女性就業者の伸びが過去最多の31万人増となったことが大きな要因。
また、2024年平均の完全失業率は2.5%(前年比0.1ポイント減)だった。一方、厚生労働省の発表した2024年の平均有効求人倍率は1.25倍(前年比0.06ポイント減)だった。

4.厚生年金加入の企業規模要件撤廃、2035年に先送り(1/29)

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厚生労働省は29日、自民党の会合に、パート労働者の厚生年金加入要件のうち、企業規模要件の撤廃時期を2035年とする案を示した。24日の会合で示した2029年からとする案に、自民党内から中小企業の負担増に懸念の声が出て、先送りした。
また、対象拡大は2段階ではなく4段階で進め、「27年10月から36人以上」、「29年10月から21人以上」、「32年10月から11人以上」、35年10月に完全撤廃とすることで時期を遅らせる案とした。今通常国会に提出予定の年金改革法案に盛り込む方針。

5.労働安全衛生法の改正要綱 答申(1/27)

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厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会は27日、労働安全衛生法の改正要綱を決定し、答申した。保護の対象にフリーランスを含む個人事業者を追加することや、ストレスチェックの実施義務を従業員50人未満事業所にも拡大すること、高齢者の労災対策の実施を努力義務とすることなどを盛り込んだ。今通常国会に法案を提出する方針。

6.公益通報者保護法改正案 通報者処分で刑事罰(1/26)

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公益通報者保護法改正案の概要が明らかになった。通報者を解雇や懲罰処分とした事業者に3,000万円以下の罰金、個人に6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金を科す刑事罰の導入を盛り込むほか、通報に対処する従事者の指定義務を怠った事業者への立入り検査を行う規定も新設。通報者を特定する行為を原則禁止とする。今通常国会への法案提出を目指す。

7.2025年度の公的年金支給額 1.9%引上げ(1/24)

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厚生労働省は24日、2025年度の公的年金支給額を発表した。物価や賃金の伸び率を反映し、24年度から1.9%引き上げられる。増額は3年連続。「マクロ経済スライド」も3年連続で適用されるため、引上げ率は賃金の伸びを0.4ポイント下回る。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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業務時間効率化の必要性

近年、企業において業務時間の効率化が重要な課題として注目されています。

特に日本では、長時間労働が慣習化している企業が多く、さまざまな課題が生じています。

ワークライフバランスが損なわれ、従業員が健康障害を抱えるリスクが高まる一方で、雇用の定着率が低下し、リクルート活動にも悪影響がでる可能性があります。

また、企業の将来の成長・発展の為の投資の時間が十分に確保出来ない危険性もあります。

業務時間の効率化は、従業員だけでなく、企業全体の持続可能な成長のためにも欠かせない要素です。

今回のコラムでは、業務時間の効率化を図る上での一般的な取り組みの手順についてご紹介致します。ぜひご一読ください。

まずはデータ分析から

業務時間の効率化を実現するためには、まず現状を正確に把握することが重要です。

具体的には、次のような視点でデータを分析します。

・特定の人に業務が集中していないか

「仕事のできる人」に業務が集中しやすい傾向があります。この状態が続くと、「できる人」の負担が増し、他の従業員の成長機会を奪う可能性があります。

逆に、「仕事が苦手な人」が一定以上の割合を占めている場合、全体の効率が低下する可能性があります。

・特定の部門や仕事に注目

どの部門、どのような仕事がとりわけ多くの時間を消費しているのか把握することが大切です。

分析の方法としては、単月でも構わないので、1日の中でどの仕事に何時間を費やしているかを全従業員に書き出してもらいます。

これによりどの業務に時間を多く割いているか?定量化することができます。

・日常的な作業の分析

毎日繰り返し行っている作業ほど、効率化による業務時間削減効果は大きいといえます。

例えば、デスクワークが多い仕事の場合、パソコンの入力作業、Chatやメールでの入力作業などを定量化し、1ヶ月の総労働時間数における割合が多いようであれば、社内や取引先への指示や連絡によく使用する定形文章や用語を短縮入力できるようにすると、業務時間の削減が期待できます。

1つの作業にかかる時間を平均で 20 ~ 30 %削減するだけでも、大幅な業務時間の短縮に繋がります。

取り組み方として、業務時間の中で、例えば、「話す」時間が多いのか?「書く」時間が多いのか?といったふうに、特定の「〇〇(動詞)する」、といった行為の中で、繰り返し行うことが多い作業に注目することで削減効果の大きい作業を特定できます。

上記のような視点でデータを分析することで、どの領域に注力して改善のメスをいれるのか明確になります。

分析を行い、早く対策を実行することが早い成果に直結しますので、改善効果が高いものから着手することも有効ですが、すぐに着手して成果が出やすいものから始めるのも有効です。

主な対策

現状を分析したら、次のような具体的な対策を講じます。

1. 業務プロセスの見直しとITツールの活用

業務の工程を見直し、思い切って工程の全体もしくは一部を無くせないか?短縮出来ないか?検討します。

そのためのITツールやマニュアルの整備、システムによる自動化によって時間短縮が可能かを検証します。

2. 情報やツールの整理整頓

業務の取り掛かりをスムーズに行うためのスケジュールや業務管理ツールの使用。書類や業務に使用する機材・材料・設備機器類の保管には、分かりやすくネーミングしたインデックスや色分けした収納ケースを使用するなど、整理整頓を徹底して、誰でも必要な情報・ツールをすぐに取り出せ、共有出来るような教育と環境整備も重要です。

3. 適材適所の配置

人員の配置は生産性を高める上でとても重要です。

近代のマジメント手法の研究者ドラッカーの言葉に、「努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わないことである。強みに集中すべきである。無能を並の水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーを必要とする。」という言葉があります。

上記の言葉に倣えば、適宜、それぞれの従業員が最も得意とする分野で能力を発揮できるよう、配置の見直しをすることも必要です。

4. 業務時間の短縮会議や残業削減手当

管理職が従業員個々の業務時間短縮のミクロマネジメントを行い、返って労働時間が増えるといったことにならないよう、個人、チーム単位で自主的に業務時間の短縮について考えてもらう環境作りも大切です。

部や課で業務時間の効率化を図るためのテーマを従業員自身に考えてもらったり、会議で考えてもらう時間を設けたり、全体の平均残業時間の削減目標を達成した月にインセンティブとして一定額の「残業削減手当」を支給するなどしてチーム全体で効率化を図る動機づけを行うことも有効です。

これにより、生活給欲しさの残業や、残業が恒常化してしまっている従業員がいた場合、意識変化のきっかけをつくることが出来ます。

まとめ

業務時間の見直しを適宜行うことは、生産性を上げるだけでなく、安心して長期的に働ける職場づくりにつながります。

これにより、従業員の満足度が向上し、企業のサステナブルな成長も可能となります。

今回ご紹介させて頂いた分析・取組手法は一例ではありますが、考え方を応用すれば、改善の切り口を見つけるきっかけになるかと思います。

今回のコラムが業務時間効率化の一助になれば幸いです。

お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
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「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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直近1ヶ月から2ヶ月の労働行政の動きや新聞記事をまとめたものです。
今後の人事・労務関連の次の一手を打つための情報として、是非ご一読下さい

== 最近の動き(Topics)===========

1.25年度 中小企業の半数が賃上げ予定 日本商工会議所調査(12/30)
2.イデコ拡充 加入可能年齢等引上げ(12/27)
3.東京都 カスハラ条例の指針を公表(12/26)
4.公益通報制度見直し 企業に刑事罰方針(12/25)
5.イデコ、企業型DCの一時金 受取時の課税強化(12/25)

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1.25年度 中小企業の半数が賃上げ予定 日本商工会議所調査(12/30)

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日本商工会議所の調査(12月12日~18日に実施、全国1,932社が回答)によれば、2025年度に賃上げを予定している企業は計48.5%だった。「現時点では未定」は26.1%で、「賃上げは行わない予定」は25.3%。業績の改善を伴わない「防衛的な賃上げ」は7割弱を占めた。また、賃上げ予定企業の25年度の賞与を含む給与総額の引上げ率は「3%以上」が計48.3%だった。

2.イデコ拡充 加入可能年齢等引上げ(12/27)

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厚労省は26日、私的年金の拡充策をまとめた。イデコについて、加入可能年齢の上限の引上げ(65歳未満から70歳未満へ)、拠出限度額(月額)の引上げに加え、加入要件も緩和し、以前からイデコ等に加入している場合、60歳以上で保険料納付期間を満了した場合でもイデコに加入できるようにする。2025年の通常国会に関連法案を提出する。

3.東京都 カスハラ条例の指針を公表(12/26)

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東京都は25日、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例に基づく新たな指針を公表した。カスハラ行為の具体例や企業側対応のポイント等を示し、2025年4月から施行される条例の実効性を高めるねらい。

4.公益通報制度見直し 企業に刑事罰方針(12/25)

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24日、消費者庁の有識者検討会が公益通報制度見直しに向けた報告書をまとめた。事業者が公益通報を理由に通報者に解雇や懲戒処分をした場合に刑事罰を科すこと、通報者が不利益取扱いについて民事裁判を起こした場合の立証責任を通報者から事業者側に転換すること、指針で禁止されている「通報者捜し」を新たに法律で禁止することなどが盛り込まれた。今後、罰則の程度を詰め、通常国会に改正案を提出する方針。配置転換や嫌がらせは罰則の対象外とされ、今後の検討課題とされた。

5.イデコ、企業型DCの一時金 受取時の課税強化(12/25)

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自民・公明両党が20日にまとめた2025年度の税制改正大綱に、イデコや企業型DCの一時金を退職金よりも先に受け取る場合の控除を縮小する期間を、5年未満から10年未満へと拡大することが盛り込まれた。受取り時期の違い等で生じる差を是正する。2026年1月の一時金受取りから適用される。

出典:(株)日本法令 SJS Express

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中小企業の経営者や人事担当者の方にとって、採用は事業活動において大きな課題のひとつではないでしょうか。

人口減少による働き手不足で、求人広告を出しても反応が薄い、応募が来ても採用に至らない、良い人材が長続きしないなど、事業活動をするうえで採用活動が最重要課題になっている企業も少なくないと考えます。

しかし、これらの課題は視点を少し変えるだけで、解決の糸口が掴める可能性があります。

そのヒントが採用に「マーケティング」という考え方を取り入れることです。

今回のコラムは、中小企業でも実践できる採用マーケティングの基本的な手法を解説します。

採用マーケティングとは何か?

一般的に、マーケティングとは「顧客の欲求を満たすために企業が行うあらゆる活動の総称」と言われています。
具体的には、「顧客のニーズを探るための市場調査・分析、それらにもとづく商品企画・開発、開発した商品を知ってもらうための広告宣伝活動・プロモーション等」がそれにあたります。

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方や手法を採用活動に応用するものです。

単に求人情報を発信するだけではなく、ターゲットとなる求職者を「顧客」と捉え、自社が提供できる価値をしっかりと伝えることを目的としています。

「自分たちは認知度が低い中小企業だから、人気のない業態だから」と諦めてはいけません。

実際に、医療クリニックがこの手法を取り入れて、成果を上げた事例をご紹介します。

医療クリニックの事例

ある医療クリニックが受付スタッフを募集していました。しかし、半年間求人を出し続けても応募がなく、院長は困り果てていました。そこで採用マーケティングの視点を取り入れることにしました。

求人情報を見直し、ホームページに、院長のインタビュー動画を掲載しました。

動画の内容は、「医師になることを志した理由や仕事していて感じるやりがい、仕事内容、どのような医療サービスや職場作りを目指しているか」を掲載しました。

それからまったく反応がなかったのが、問い合わせが入るようになり、動画掲載から2ヶ月後には新しいスタッフを採用することができました。

採用した求職者に、採用選考時になぜ他のクリニックの求人もある中で当クリニックに応募頂けたのか?という質問をしたら、動画をみて先生の親しみやすい人柄や仕事を楽しんで取り組まれている雰囲気や仕事内容を丁寧に説明されていることが、他のクリニックの求人と大きく違い、好印象を持って応募を決めたという回答だったそうです。

この事例から学べるのは、採用活動においても「ターゲットを理解し、魅力を伝える」ことの重要性です。

採用マーケティングの3つのステップ

採用マーケティングを成功させるには、次の3つのステップを踏むことが重要です。

1.分析:求職者を深く理解する

まず、ターゲットとなる求職者がどのような人たちなのかを徹底的に分析します。この段階では、求職者の年齢や性別、職業だけでなく、彼らの価値観や目指す未来、抱える悩み、不安などを具体的に掘り下げていきます。

この分析に役立つのが「ペルソナ分析」です。ペルソナとは、ターゲットとなる求職者をイメージした架空の人物像のことです。例えば、以下のような情報をもとにペルソナを作成します。

ペルソナを作ることで、求人情報に反映すべき要素が見えてきます。

具体的なイメージがわかない場合は、企業内で活躍してくれているスタッフに就職前の状況や応募にあたって何が決め手になったのかなどヒアリングを行うことが有効です。

2.戦略:自社の魅力を整理する

分析の結果に基づいて、求職者に伝えるべき自社の強みを整理します。この段階では、自社の魅力を単に羅列するのではなく、求職者にとっての「得られる変化」を意識することが大切です。

例えば、「若いスタッフが多く明るい雰囲気の職場」や「入社後の研修制度が充実しており、半年で業務に必要なスキルを習得できる」など、求職者が入社後にどのような成長や安心感を得られるかを具体的に伝えるようにしましょう。

3.施策:適切な方法で発信する

最後に、分析と戦略を踏まえた上で、適切なメディアや手法を選んで情報を発信します。

「とりあえず有名な求人サイトに掲載する」というアプローチではなく、ターゲットに最も効果的にリーチできる媒体を選びましょう。

例えば、SNSを活用する場合には、20代前半から30代前半の年代層がターゲットならInstagram、30代後半以降ならFacebookといったようにターゲットに絞って掲載する媒体を選定しましょう。

また、写真や動画を効果的に使うことで自社の雰囲気を伝えることができます。採用ページの訪問者数や滞在時間、応募数などのデータを活用して、施策の効果を分析し、改善を繰り返すことも重要です。

採用マーケティングを成功に導くポイント

求職者の目線で考える

採用活動では、つい「企業が伝えたいこと」を重視しがちです。

しかし、求職者が本当に知りたいのは、「この会社に入ったら自分にどんなメリットがあるのか」です。

例えば、「最先端の設備があります」と伝えるだけではなく、「この設備を使うことでスキルを磨き、キャリアアップができる」といった具体的な変化を示すと、求職者にとって魅力的に映ります。

成果を数値で把握する

マーケティングの世界と同じく、採用でも数値による分析が成功の鍵を握ります。

例えば、求人ページの閲覧数、求人媒体ごとの応募数、面接の通過率など、採用プロセスを細分化してデータを収集し、ボトルネックを特定しましょう。
改善ポイントが明確になれば、限られたリソースを効率的に活用できます。

現実的な事例を活用する

商品・サービスを実際に利用した「お客様の声」が訴求力が高いように、「先輩社員のインタビュー」を求人ページに掲載することも有効です。

例えば、「入社1年目で企画のリーダーを任されるようになった」や「家庭と仕事を両立しながらキャリアを築いている」などの事例を共有すると、求職者はその会社での未来をイメージしやすくなります。

小さな工夫で大きな成果を

採用活動は企業の未来を左右する重要な取り組みです。大企業のような認知度やブランド力はなくとも、知恵を絞り、採用マーケティングの視点を取り入れるだけで、成果に繋げることができます。

まずは、小さな改善から始めてみてはいかがでしょうか。

たとえば、求人情報の写真やメッセージを見直すだけでも、求職者に与える印象は大きく変わります。

また、SNSや採用ページのデータを活用し、効果を分析しながら少しずつ施策を改善していくことで、確実に採用活動の質が向上します。

まとめ

採用マーケティングは、「ターゲットの理解」、「自社の魅力の整理」、そして「効果的な情報発信」という3つのステップで構成されています。

この手法を取り入れることで、中小企業でも他企業に負けない採用力を身につけることができます。すぐに結果に繋がらなくても諦めず、試行錯誤を繰り返し、成果に結びつけていきましょう。

今回のコラムが少しでも経営者や人事担当者の皆さまが抱える採用の悩みの解消に少しでもつながることを願っています。

お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

最近の講演内容
「社員の評価制度と賃金制度のあり方」 肥銀ビジネス教育株式会社主催
「欲しい人材を引き寄せる!求人募集と採用選考の見極め方セミナー」株式会社TKUヒューマン主催

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