2025.07.15
組織づくり

熱中症対策の義務化と企業が取るべき具体的な対応

熱中症対策の義務化と企業が取るべき具体的な対応

いつもお世話になっております。プロセスコアの山下です。

暑い日が続きますね。

今回は2025年6月1日施行された「改正労働安全衛生規則」に基づく熱中症対策の義務化企業が取るべき具体的な対応についてご紹介します。

2025年6月1日より、職場における熱中症対策を強化するため、「改正労働安全衛生規則」が施行されました。

これにより、企業にはこれまで以上に適切な熱中症対策が求められ、対策を怠った場合には「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」(労働安全衛生法第119条)が科せられる可能性があります。

重い罰則ではありますが、近年の気温の高さを考えると企業として求められる当然の対策ではないかと思います。

本コラムでは、今回の法改正の背景と、企業が具体的にどのような熱中症対策を講じるべきかについて詳しく解説いたします。

 1.熱中症対策が求められる背景

厚生労働省が公表した『令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』によると、2024年の職場における熱中症の死傷者数は1,257人に上り、そのうち死亡者数は31人でした。

こうした職場での熱中症による死亡災害を防ぐため、今回の労働安全衛生規則の改正に至りました。

※厚生労働省『令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』より掲載

過去の熱中症死亡災害の分析では、「初期症状の発見・対応の遅れ」が重要な要因であることが示されており、重症化した状態で発見されたケースが78件、異常時に医療機関へ搬送しないなど適切な対応が取られなかったケースが41件に上ることが報告されています。

これらの状況を踏まえ、事業場においては、熱中症の重症化を防ぐための適切な措置が早急に求められています。

※厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」より掲載

熱中症は、高温多湿な環境下で発汗による体温調整がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。

一般的には、めまい、吐き気、意識障害などの症状が現れます。

特に暑さ指数(WBGT値)が28度を超えると、熱中症患者が著しく増加するため注意が必要です。

暑さ指数(WBGT値)
熱中症の危険度を評価するための指標で、気温、湿度、輻射熱(日射や地面からの照り返しなど)を考慮して算出される数値

2.熱中症対策が求められる職場の要件

今回の義務化の対象となる作業は、暑さ指数(WBGT値)が28度以上、または気温31度以上の環境で、連続して1時間以上、または1日に4時間を超えて実施が見込まれる作業です。

この義務化は、従業員だけでなく、同一の場所で作業する人(例:協力会社の作業員など)に対しても同様の措置が必要となりますので、ご注意ください。

暑さ指数(WBGT値)28℃以上の職場環境の例としては、建設業、製造業、運送業などが挙げられます。

これらの業種では、屋外での作業や高温の機械・炉の近くでの作業、トラックの荷下ろしなど、熱中症のリスクが高い環境での作業が発生しやすいため、WBGT値が28℃を超える状況になりやすいです。

3.熱中症対策の具体的な内容

2025年6月1日から企業に義務付けられる熱中症対策は、以下の3つの項目です。

1.報告体制の整備

● 企業は、熱中症の自覚症状がある従業員や、熱中症のおそれがある従業員を発見した人が、その旨を報告するための体制を整備しなければなりません。

● 整備した体制は、従業員に周知する必要があります。

● 具体的には、責任者の氏名、連絡先、連絡方法を明確に定め、明示することが求められます。

● 報告先として定められた責任者は、従業員から随時報告を受けられる状態を保つ必要があります。

● さらに、熱中症のおそれがある従業員を積極的に把握するための仕組みづくりも推奨されています。これには以下の方法が挙げられます。

  • 職場巡視
  • ・バディ制度
     (2人以上の従業員がお互いの健康状態を確認できる体制)
  • ・ウェアラブルデバイスの活用
     (ただし、他の方法と組み合わせることが望ましい)
  • ・責任者と従業員双方からの定期連絡

2.手順作成

● 企業は、熱中症のおそれがある従業員を発見した際の措置手順を作成することが義務付けられています。

● 作成する手順には、緊急連絡網や、搬送先となる医療機関の連絡先(所在地を含む)を含めることが望ましいとされています。

● 手順の作成にあたっては、作業場所や作業内容の実態を踏まえ、事業場独自の具体的な手順を定めることができます。

3. 関係者への周知

● 整備した報告体制と作成した手順は、関係する従業員に確実に周知しなければなりません。

● 周知する際は、定められた報告先や作成した手順などを確実に伝える必要があります。

● 具体的な周知方法としては、以下の方法を単独または複数組み合わせて実施することが推奨されています。

  • 事業所の見やすい場所への掲示
  • メールでの通知
  • 文書の配布
  • 朝礼での伝達

● 緊急連絡先を定め、従業員が見やすい場所に掲示することも推奨されています。

これらの義務化された対策に加えて、一般的な熱中症予防対策も継続して重要です。

例えば、作業時間の短縮や休憩所の設置通気性の良い衣服の着用汗で不足しがちな塩分と水分の補給従業員の異変に気づく観察健康状態自己チェックリストの活用高齢の従業員の体調管理などが挙げられます。

4.まとめ

2025年6月1日からの法改正により、企業にはより具体的な熱中症対策の実施が義務付けられます。

これは、従業員の安全と健康を守り、職場の熱中症による痛ましい事故を防ぐための重要な一歩です。

今回の義務化された3項目、すなわち「報告体制の整備」「手順作成」「関係者への周知」を確実に行い、従業員が安心して働ける職場環境を整備しましょう。

また、従業員自身も日頃から体調管理を意識し、異常を感じたらすぐに報告できるような意識を持つことが重要です。

この機会に、貴社の熱中症対策を見直し、万全の体制を整えることを強くお勧めいたします。

今回のコラムは以上です。
お読み頂き、ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

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