業務時間効率化の取り組み、まずはここから実践!


業務時間効率化の必要性
近年、企業において業務時間の効率化が重要な課題として注目されています。
特に日本では、長時間労働が慣習化している企業が多く、さまざまな課題が生じています。
ワークライフバランスが損なわれ、従業員が健康障害を抱えるリスクが高まる一方で、雇用の定着率が低下し、リクルート活動にも悪影響がでる可能性があります。
また、企業の将来の成長・発展の為の投資の時間が十分に確保出来ない危険性もあります。
業務時間の効率化は、従業員だけでなく、企業全体の持続可能な成長のためにも欠かせない要素です。
今回のコラムでは、業務時間の効率化を図る上での一般的な取り組みの手順についてご紹介致します。ぜひご一読ください。
まずはデータ分析から
業務時間の効率化を実現するためには、まず現状を正確に把握することが重要です。
具体的には、次のような視点でデータを分析します。
・特定の人に業務が集中していないか
「仕事のできる人」に業務が集中しやすい傾向があります。この状態が続くと、「できる人」の負担が増し、他の従業員の成長機会を奪う可能性があります。
逆に、「仕事が苦手な人」が一定以上の割合を占めている場合、全体の効率が低下する可能性があります。
・特定の部門や仕事に注目
どの部門、どのような仕事がとりわけ多くの時間を消費しているのか把握することが大切です。
分析の方法としては、単月でも構わないので、1日の中でどの仕事に何時間を費やしているかを全従業員に書き出してもらいます。
これによりどの業務に時間を多く割いているか?定量化することができます。
・日常的な作業の分析
毎日繰り返し行っている作業ほど、効率化による業務時間削減効果は大きいといえます。
例えば、デスクワークが多い仕事の場合、パソコンの入力作業、Chatやメールでの入力作業などを定量化し、1ヶ月の総労働時間数における割合が多いようであれば、社内や取引先への指示や連絡によく使用する定形文章や用語を短縮入力できるようにすると、業務時間の削減が期待できます。
1つの作業にかかる時間を平均で 20 ~ 30 %削減するだけでも、大幅な業務時間の短縮に繋がります。
取り組み方として、業務時間の中で、例えば、「話す」時間が多いのか?「書く」時間が多いのか?といったふうに、特定の「〇〇(動詞)する」、といった行為の中で、繰り返し行うことが多い作業に注目することで削減効果の大きい作業を特定できます。
上記のような視点でデータを分析することで、どの領域に注力して改善のメスをいれるのか明確になります。
分析を行い、早く対策を実行することが早い成果に直結しますので、改善効果が高いものから着手することも有効ですが、すぐに着手して成果が出やすいものから始めるのも有効です。
主な対策
現状を分析したら、次のような具体的な対策を講じます。
1. 業務プロセスの見直しとITツールの活用
業務の工程を見直し、思い切って工程の全体もしくは一部を無くせないか?短縮出来ないか?検討します。
そのためのITツールやマニュアルの整備、システムによる自動化によって時間短縮が可能かを検証します。
2. 情報やツールの整理整頓
業務の取り掛かりをスムーズに行うためのスケジュールや業務管理ツールの使用。書類や業務に使用する機材・材料・設備機器類の保管には、分かりやすくネーミングしたインデックスや色分けした収納ケースを使用するなど、整理整頓を徹底して、誰でも必要な情報・ツールをすぐに取り出せ、共有出来るような教育と環境整備も重要です。
3. 適材適所の配置
人員の配置は生産性を高める上でとても重要です。
近代のマジメント手法の研究者ドラッカーの言葉に、「努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わないことである。強みに集中すべきである。無能を並の水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーを必要とする。」という言葉があります。
上記の言葉に倣えば、適宜、それぞれの従業員が最も得意とする分野で能力を発揮できるよう、配置の見直しをすることも必要です。
4. 業務時間の短縮会議や残業削減手当
管理職が従業員個々の業務時間短縮のミクロマネジメントを行い、返って労働時間が増えるといったことにならないよう、個人、チーム単位で自主的に業務時間の短縮について考えてもらう環境作りも大切です。
部や課で業務時間の効率化を図るためのテーマを従業員自身に考えてもらったり、会議で考えてもらう時間を設けたり、全体の平均残業時間の削減目標を達成した月にインセンティブとして一定額の「残業削減手当」を支給するなどしてチーム全体で効率化を図る動機づけを行うことも有効です。
これにより、生活給欲しさの残業や、残業が恒常化してしまっている従業員がいた場合、意識変化のきっかけをつくることが出来ます。
まとめ
業務時間の見直しを適宜行うことは、生産性を上げるだけでなく、安心して長期的に働ける職場づくりにつながります。
これにより、従業員の満足度が向上し、企業のサステナブルな成長も可能となります。
今回ご紹介させて頂いた分析・取組手法は一例ではありますが、考え方を応用すれば、改善の切り口を見つけるきっかけになるかと思います。
今回のコラムが業務時間効率化の一助になれば幸いです。
お読み頂き、ありがとうございました。
〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長
社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。
最近の講演内容
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