2023.11.20
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副業は会社の許可が必要?企業の実務対応について

副業は会社の許可が必要?企業の実務対応について

副業をしたいと申し出てくる社員がいるが、どう対応した方がいいのか?
会社に黙って社員が副業をしていることが分かったが、どう対応すればよいか?

最近、お客様企業からのこのような相談が増えてきています。

そこで今回は副業」について、企業経営者や人事担当者に労務管理上知っておいて頂きたい法律知識と対応策について紹介致します。

まず、副業の定義について触れておきます。
特に法律で定められているわけではないのですが、一般的に、正社員やアルバイト問わず社員が本業以外の仕事に従事することを指します。

そして、私が知る範囲ではありますが、現状、ほとんどの中小企業の就業規則には「会社が認めた場合を除き、副業は認めない。」という原則禁止の規定が盛り込まれているところが多いようです。

ただ、昨今では、国も産業構造の転換や労働力人口不足に対応すべく、キャリア形成を図る労働者を支援するために、2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、「モデル就業規則」から副業を禁止する規定が削除されました。

また、企業としても、社内ではなかなか得難い技術開発や新規事業の立ち上げ経験など、会社に活かせるキャリア形成の獲得手段として、副業を推進するところが増えてきています。

副業は、社員の方の立場からすると、収入アップとキャリア形成が促進されるというメリットがある一方、企業側としては労働時間が長くなることで健康障害や本業の業務に支障が出る可能性があり、デメリットとして捉えてしまいがちです。

また、労働時間管理の問題発生します。

労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されています。

つまり、本業と副業の労働時間は通算されます。

そして、労働時間を通算した結果、1日8時間、週40時間の法定労働時間超を超えて労働させる場合は、時間外労働として割増賃金を支払わなければなりません。

また、この割増賃金を支払う義務があるのは、雇用契約を後からした事業主ということになります。

つまり企業は、自社が後から雇用契約していないか確認し、している場合は従業員が副業先でどのような勤務シフトで、どのくらいの時間数の労働を実際に行っていたか把握する必要が出てきます。

企業側のこのようなデメリットになり得る点を防ぐには、従来どおり副業は認めないルール運用で良いのでしょうか?
関連する法律をご紹介します。
まず、憲法で職業選択の自由は保証されており、副業は禁止されておりません。

日本国憲法22条 
・何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
・何人も、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない 。

では、副業は憲法で保証されている以上、全て認めないといけないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。
会社は労働契約条発生する権利義務関係の以下の観点から副業に制限を設けたり、禁止することは可能です。

競業避止義務・・・競業する他社に雇用されるなど会社の利益を不当に侵害してはならない
秘密保持義務・・・職務上知った秘密を守らなくてはならない
職務専念義務・・・勤務中は与えられた職務に専念しなければならない  

仮に、就業規則に副業に対する制限規定を設けた場合、法的拘束力を持つので、その規定に違反した場合、就業規則の懲戒処分の対象とすることも可能です。

ただ注意しなければいけない点として、厚生労働省が出しているガイドラインを見ると、実際に業務に支障が出ていない副業に対しての懲戒処分は合理的な理由がないため、その処分は無効になることが示されています。

「副業・兼業に関する裁判例においては、就業規則において労働者が副業・兼業を行う際に許可等の手続を求め、これへの違反を懲戒事由としている場合において、形式的に就業規則の規定に抵触したとしても、職場秩序に影響せず、使用者に対する労務提供に支障を生ぜしめない程度・態様のものは、禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を認めていない。 このため、労働者の副業・兼業が形式的に就業規則の規定に抵触する場合であっても、懲戒処分を行うか否かについては、職場秩序に影響が及んだか否か等の実質的な要素を考慮した上で、あくまでも慎重に判断することが考えられる。」

副業・兼業の促進に関するガイドラインより抜粋

では、副業について実務上、企業側はどのような対策を取った方がよいのでしょうか?

この問いに対しては、事前にどういった場合は副業を認め、認めないことがあるのか基準を明確に示すことが大切になります。

サンプルとして、以下の基準をご参考にされてください。

下記項目全て○で副業を認める。
1. 副業・兼業が就業時間中に行われない
2. 副業・兼業の内容が、会社(グループ会社含む)の業務と競業しない
3. 副業・兼業により社内の機密や個人情報の保護が損なわれない
4. 副業・兼業時間と会社における残業時間との合計が月◯時間以内である
5. 主副を合わせて4週間で4日以上の休日を確保できる
6. 副業・兼業先での労働時間について割増賃金が支給される(雇用の場合のみ)
7. 副業・兼業の内容が会社の名誉や信用を損なわない
8. その他、副業・兼業により社内秩序への悪影響がない

※その他の注意点として、下記の項目を判断資料として確認されることをお勧めします。

・業務委託か労働契約か?
・副業先での労働時間は◯時間くらいか?

このような基準を定め、事前に社員に周知しておくことで、副業に関するトラブルを予防することができるかと思います。

今回のコラムでは、副業に関係する主な法律と企業の対応についてご紹介させて頂きました。

今後の社会全体の流れを考えると、労働者のキャリア形成や収入アップの観点から、副業を解禁している企業が魅力的な職場として評価される傾向が高まってくるのではないでしょうか。

ただ、何から何まで認めるのではなく、企業にとって許容できる範囲のものなのか確認し、会社で活かせて、社員も活きるようなルール設定と、慎重な判断が求められると思います。

今回のコラムが、御社の副業に対してのルール作りにお役に立てば幸いです。

ご一読ありがとうございました。

〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長

社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。

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