2026年に予想される労働基準法改正と予想される中小企業の実務対応

〜法改正の方向性を読み解き、今から備えるための実務視点〜
今回のコラムは、2026年に予想されている労働基準法改正の内容と想定される中小企業対応についてです。
労働基準法が約40年ぶりに大きく改正される可能性が高まっています。
労働基準関係法制研究会が2024年1月に公表した報告書では、長時間労働の規制強化を中心に「早期に取り組むべき事項」が示され、今後は労働政策審議会での審議を経て、2026年国会で改正が議論される見込みです。
コラムでは、報告書の要点を整理するとともに、中小企業が今後どのような対応を迫られる可能性があるのか、実務的視点から考察しております。
※以下にご紹介する変更案の内容はあくまで検討案で決定事項ではございませんのでご注意ください。
目次 [閉じる]
1.長時間労働の規制強化
報告書で最も重視されているのは、長時間労働の是正です。
特に以下の6点が「早期に取り組むべき事項」とされています。
(1)フレックスタイム制の見直し
現行制度では「フレックスか、通常勤務(始業・終業時刻の固定設定)」を期間単位で選択する必要があり、テレワーク日と通常勤務日が混在するという運用が導入しづらいという課題がありました。
今後は以下のような柔軟化が検討されています。
- ・コアタイムに加え「コアデイ」を設定し、特定日は始業終業時刻を固定できる
- ・フレックスの日と通常勤務日が混在していてもフレックスタイム制を導入することができる
<中小企業の影響と対応>
- 企業では、フレックスとフレックス以外という勤務形態の選択肢だけでなく、フレックスと通常勤務の選択肢が増える可能性がある。
- 一方で、フレックス適用日の管理方法や勤怠システム改修が必要になる場合がある。
(2)時間外・休日労働の情報開示
企業の労働時間実態を、労働者・求職者がより分かりやすく閲覧できる仕組みの整備が検討されています。
社外への義務化は未定ですが、以下の点が焦点です。
- ・衛生委員会、管理職、従業員個人への開示
- ・36協定を締結する際の「過半数代表への情報開示」を義務化
- ・求職者向け情報として可視化される可能性
<中小企業の影響と対応>
- ・「隠せない時代」を前提とし、労働時間削減そのものの取り組みが避けられない
- ・36協定締結に従業員代表への時間外労働数の開示が求められ、手続きがより厳格化する可能性あり
(3)週44時間の特例措置の廃止
一部業種に認められている「週44時間の法定労働時間」は、約87%の事業場が活用していないため、廃止の方向とされています。
ただし、零細事業者への影響は大きいため移行措置が検討されます。
<中小企業の影響と対応>
- ・対象業種(商業・理美容・旅館等)は、シフトの抜本的な見直しが必要
(4)定期的休日の確保(4週4休 → 2週2休へ)
現在は原則、週1回の休日の確保。
例外規定として「4週間を通じて4日の休日を確保すること」が求められています。
現行であれば連続勤務が長くても違法ではありませんが、長期間の連続勤務を生じさせる可能性があり、労働者の健康確保の為の法定休日の趣旨を踏まえ、
- ・2週に2回以上の法定休日を義務化
- ・13日を超える連続勤務は禁止(休労災基準に準拠)
といった方向で強化される見込みです。
<中小企業の影響と対応>
- ・「連勤が常態化」している企業は影響を受ける
- ・改正が行われると、就業規則の休日の規定の変更が必要
(5)法定休日の特定義務化
現行では、法定休日の特定については定めがありません。
休日は労働者の健康を確保する観点から、労働者の指摘生活を尊重し、リズムを保つ必要があるという観点から、今後は以下の内容への変更が検討されています。
- ・就業規則で「法定休日」を特定
- ・休日の振替の具体的事由や手続を明記
- ・振替日は「できるだけ近接した日」を要求
<中小企業の影響と対応>
- ・改正されれば、就業規則の規定変更が必要
- ・法定休日労働の割増賃金の計算方法の厳格化や振替休日制度の厳格化
(6)勤務間インターバル制度の義務化
現行では終業時刻が一定の時間を過ぎた場合、翌日の始業時刻まで一定の時間数を空けることを求める勤務間インターバル制度は努力義務ですが、労働者の健康確保の観点から義務化が検討されています。
<中小企業の影響と対応>
- ・義務化されれば、就業規則の規定変更が必要
- ・業種によってはシフト組みが困難になり、労働時間数削減や追加採用や外注など検討が必要になる可能性あり
2.年休取得時の賃金計算方式の変更
年休取得時の賃金は選択肢が、労働基準法で定める平均賃金①、所定労働時間働いた場合の通常の賃金②、標準報酬月額の30日分の1に相当する額③の3つありますが、日給や時給制の人だと、①と③が減額されてしまう可能性を踏まえ、報告書では次の②を原則とする方向で検討されています。
- ・所定労働時間働いた場合の通常の賃金(②)
<中小企業の影響と対応>
- ・年休付与のコストが増える可能性あり
3.副業・兼業時の割増賃金の通算見直し
現行では「事業主が異なっても」労働時間を通算して割増賃金を計算しますが、実務上他社での労働の実態や労働時間の把握が難しいため、今後は割増賃金の通算は不要とする方向が検討されています。
ただし、健康管理の観点から以下は引き続き求められます。
- ・労働時間情報の相互共有
- ・長時間労働時の本業・副業の事業主双方による責任の関係に対する考え方や健康確保措置の整理
- ・同一事業主である企業間異動(グループ会社間での兼業)では通算を継続
<中小企業の影響と対応>
- 割増賃金の管理負担が軽減され得る。
- 一方で、労働者の健康配慮義務は強化されるため、「副業申告制+労働時間把握」が必須となる。
4.まとめ
上記の改正案を2026年の国会で法律改正の議論されることになると思われます。
法律の施行は改正された法律が制定された日から1年から1年6ヶ月後頃になることが多いです。
今後の法改正が行われるポイントを視野に入れつつ、労務関係の規定整備や運用の見直しを考えておくことが大切です。
今後、労働環境に影響が高い法改正点については、情報を入手次第お伝えしたいと思います。
今回のコラムは以上となります。
お読み頂き、ありがとうございました。
〈この記事を書いた人〉
山下 謙治
Kenji Yamashita
社会保険労務士法人 プロセスコア 代表
日越協同組合 監事
社会保険労務士・行政書士・マイケルボルダック認定コーチ
日産鮎川義塾 師範代 九州本校 塾長
社会保険労務士として人事・労務の課題解決を通じて地元熊本を中心に中小企業の経営支援20年のキャリアを持つ。従来の社会保険労務士の業務だけでなく、管理職育成を中心とした教育研修事業や評価制度導入支援を行い、経営者が抱える、組織上の悩みや課題解決の支援を行っている。得意とする業務は、起業から5年目以降の発展期における組織強化・拡大期の採用・教育・評価・処遇といった人事制度づくりの支援。
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