採用時の健康情報等の調査を行っても良いのでしょうか?
いつもお世話になっております。 山下です。
今回のメールマガジンは、ここ最近、お客様からご相談頂いた案件、
「採用時の健康情報等の調査を行っても良いのか?」について書きたいと思います。
結論から申し上げると、採用選考時の健康情報の調査を行うこと自体は、問題はありません。過去の判例をみても健康診断を容認した判旨が出ております。
◯「予定される労務の提供の内容に応じて入社前に実施することができる。」
(B金融公庫事件・東京地判平15.6.20)
概要・・B金融公庫に雇用されるため採用選考に応募した原告が、B金融公庫に対し、B型肝炎ウイルスに感染していることのみを理由として原告を不採用としたこと、ならびに、原告に無断でウイルス感染を判定する検査及び精密検査を受けさせたことがいずれも不法行為であるとして損害賠償を求めた事案
◯「使用者が使用にあたって労働者に求める労務を実現し得るだけの一定の身体的条件を具備することを確認することを目的で健康診断を行うことも、また職種及び労働者が従事する具体的業務の内容の如何によっては許容され得る。」
(東京都(警察学校・警察病院HIV検査)事件・東京地判平15.5.28)
概要・・警視庁警察官採用試験に合格し、警視庁警察学校への入校手続を終了して警視庁警察官に任用された原告が、(被告)東京都に対し、同警察学校が任用後原告に無断でHIV抗体検査を行い、検査結果が陽性であった原告に事実上辞職を強要した等の行為が違法であるとして、損害賠償を求めるとともに、警察学校から依頼を受けてHIV抗体検査を実施した東京警察病院を運営する財団法人(被告2)に対し、検査が本人の意思に基づくことを確認せず、本人の同意を得ずに検査結果を警察学校に通知した等の行為が違法であるとして損害賠償を求めた事案
ただし、注意すべき点があり、健康調査の項目は必要最低限に留める必要があります。
上記B金融公庫事件の判例で、採用選考時にB型感染ウィルス感染の有無を調べた企業に対して、B型肝炎ウィルスキャリアがあっても日常生活に制限を加える必要がなく、肝炎が安定していれば労働制限の必要はないことを根拠として「応募者の能力や適性を判断する目的でB型肝炎ウィルス感染を調査する必要は認められない、かつ人の同意を得ないで行われたものはプライバシー権を侵害する違法行為」という判決がでております。
近年、企業内で精神疾患を患う労働者の対応相談が増えてきております。
精神疾患の状態によっては遅刻、欠勤、長期の休職に至る場合が多くあります。正社員として長期雇用を考えるなら、精神疾患の有無や通院歴を調査することも可能であるといえます。
採用選考時には必ず精神疾患の有無(もしある場合は、ここ1~2年の状態や通院歴の有無)を確認するようにしましょう。。